被災した方々から、『移動』に困っている声が出てきたら… | 特定非営利活動法人移動支援Rera

熊本地震に寄せて

この度の震災で被災された方々へ、心よりのお見舞いを申し上げるとともに、一日も早く心安らげる日を取り戻せますよう、心より願っております。

 

私たちは、津波で数千台の車両が流失した宮城県石巻市で、避難所や自宅からの移動手段を失った方々のボランティア送迎をきっかけに立ち上がった団体です。
災害も、移動困難な方の状況も、同じものはありませんが、ほんの少しだけでも参考にできるものがあるかもしれないと思い、メモを載せたいと思います。

 

※団体の経験をもとに書いているので、おもに、支援に入っている人の視点になっています。状況はその場所や人により千差万別です。全く参考にならないケースも多いと思いますので、あくまで私たちの個別なご意見としてお読み下さい。
※詳細なご相談には対応しかねます。申し訳ございません。

 

①【「外出できない」にもさまざまな“度合い”がある】

「車を無くして、出かけられなくて困っている」という声を聞くと、一刻も早く何とかしてあげたい気持ちになりますが、もう少しだけ状況を聞いてみましょう。
◆もともとの「ご近所さん」が一緒に避難している時は、ご近所同士や親族の“助け合い”が機能していることもあります。
もちろん、「今まで通り、自家用車で思うままの外出ができなくてつらい」「送ってくれる人に気を遣ってしまう」という悩みもあります。けれど、「助け合い」がうまくいっている場合は、実は外部による送迎がそれほど切実に必要とされていなかったり、地域の関係性を大切にした方が良い場合もあります。
◆公共交通機関が利用できる場合もあります。
よほどの大都会でない限り、今の日本は「マイカー社会」となっています。
普段マイカーだけで移動している方は「車を失ったから移動できない」と思ってしまいがちですが、実はバスなどの公共交通機関が利用できることもあります。
地元の市町村や地域、交通事業者などが、被災者の移動問題への対策を取っている場合もあるかもしれません。とりあえず自治体に問い合わせてみるのも一つです。

 

②【他人を車に乗せて、「もしも」のことが起きるのが怖い】

「自分の車ではリスクを負いたくない」という理由で、他の誰かのボランティア送迎を頼ろうとするのは、都合の良い話です。
自動車を使わなくても、あらゆる場面にリスクと責任は存在します。
もちろん、「もしも」にはしっかりと事前に向き合い、備えておくことは大切です。
◆車輌の保険やボランティア保険などにはしっかりと入っておくのは大前提です。
◆事前に、事故時の対応についての覚書などを作っておき、メンバーと送迎利用者で互いに意思確認をしておくことも有効かもしれません。「もしも」というのが何なのかが具体的にならないと、いっそう恐ろしく感じてしまいます。
◆事故などが起きた場合は、人として誠意のある対応を。
「人として当たり前の対応をしていれば、後でそれほどおかしなことにはならない。」と、リスク管理の相談をした際の弁護士さんが仰っていました。

◆ボランティア送迎にも責任があります。

報告・連絡・相談、確認をしっかり取り合い、思いやりのある丁寧な送迎をしましょう。約束を守る、傷つける話題や失礼な態度を取らないなど、当たり前なことを忘れないようにしましょう。

 

③【被災の大きさ、地理的な不便さと移動困難はイコールではないことも】

「もともと、とても不便な地域だから、移動の問題は深刻」という考え方が、当たっている場合もあるし、そうでない場合もあります。
◆もともと不便な地域だと、住民の結束力が強く、外部による移動支援がそれほど必要でないこともあります。
◆逆に、何かと便利に見える街なかで移動に深刻な悩みを持つ人が多くいることもあります。
石巻の場合、市街地域では、被災者が多すぎたために抽選で仮設や復興住宅の入居が決まるなど、人とのつながりが希薄になってしまい、沿岸部の集落などよりもはるかに多くの住民が孤立し、深刻な移動困難状況になってしまいました。

 

 

④【さまざまな移動支援のあり方】

「地域の交通ありき」というのが大前提です。フォーマルな交通がカバーしきれない部分を補うのが、助け合い送迎の役割です。
◆人の多い地区などでは、何名かまとめて同じ目的地へ定期的に送迎する、という方法が有効かもしれません。
◆「被災した自宅の片づけに通いたい」「かかりつけの診療所へ行きたい」など、個別のニーズに一つずつ対応していく方が良い場合もあるかもしれません。
用事が終わるまで待機せずに「終わったら電話してもらう」という形が良い場合もあります。
◆有償、無償の考え方として、復興庁のサイトに国土交通省からの通達が載っています。
http://www.reconstruction.go.jp/topics/000797.html
ガソリン代等の送迎にかかる実費のみを払ってもらった場合や、相手から任意の謝礼をいただいた場合は、「白タク」行為にはなりませんが、明らかに営利となるような「料金」設定を勝手にすることはできません。
◆さまざまな「困りごと」の一つに、移動の問題があるという場合がほとんどです。医療や福祉、炊き出しやローラー、瓦礫撤去、すべて関係してくる可能性があります。多くの支援機関と幅広くつながりを持ち情報共有することは、非常に大切なことです。
◆移動困難の理由はさまざまです。車いす利用者などの身体的な状況の他にも多くの移動困難者が、特に被災地には発生します。
普段、障がいのある方などのための送迎を行っている方々も、もう少し対象を広げて眺めてみて下さい。

 

とりとめもなく書き連ねましたが、まずはここまでとします。
小さなモヤモヤが一つでもひらめきに変わるお手伝いになったなら、本当に嬉しく思います。