最近『ナンバー・ワン』より『オンリー・ワン』という言葉を、あまり聞かないようになりましたね。
コーチングによく使われた言葉なんですが…。
もっとも、これってちょっと聞くといい言葉ですが(特にSMAPが歌っていたから余計良く思えたけど)、よくよく考えてみるとオンリー・ワンって言っても、何でもいいワケじゃないんですよね。
例えば、「オレはショートケーキに納豆をかけて食べる」とか言うのは、一般的には良く思われない場合が多いんじゃないですか?
オンリー・ワンって言ったって、世間的には優れていないと褒められないことが多いし、つまらない事だったら軽蔑されちゃうときもある。
それに、いくら自分で自分を褒めればいいったって、褒める人が自分しかいなけりゃやっぱり空しいでしょ。
況や、劣っている面において、『ナンバー・ワン』より『オンリー・ワン』なんて言われても、慰めにもなんにもなりゃしない…(発達障碍の子を持つ親御さんが「世間からは『個性だと考えなさい』と言われるけど、こんな個性なら要りません!」と言われることがあるんだけど、正にこの問題なんですよね)。
じゃあ、オンリー・ワンっていっても、結局は優れていないといけないのなら、競争に疲れた人や劣等感を持っている人は、いったいどうすりゃいいんだ って事になっちゃいます。
そう言えば、コーチングと言えば、『答えは貴方の中にある』という言い方も流行りましたね。
確かに問題を解決する方法や、HAPPYになれる道筋は、その人の中に存在するかもしれません。
でも、それを発見して実現するには、花が開くかどうかもわからないことに対して、【辛いことに向きあう勇気】や【自分を変化させていく努力や根性】や【辛抱】が要ることが多いんです(成功を約束された努力は【努力】じゃないんですよね)。
ところが我々は、その【勇気】や【努力や根性】がそんなに無かったり、【辛抱】が出来ないから悩んでいるワケでしょ?
だから我々は、『きれい事』ということについて考えなければいけないんですよね。
ぶっちゃけた話、心理に関してはいろいろなセミナーを聞く機会もあるのですが、なんか『きれい事』の話をされる方が多いような気がするんです。
でも、人間って『きれい事』では片付かない【深い何か】ってあると思うんですよ。
それについてちょっとお話しますね。
僕はカウンセラー講座では認知療法やシステムズ・アプローチだけじゃなく、交流分析の話もするわけですが、その時によく「自分の【C(チャイルド)】の、本当の気持ちに気付くことが大事」と言っています。
だから、【良い・悪い】を離れて自由に自分の気持ちを話せるようなワークを、結構しているんですね。
講座に長く参加されている人は、もう慣れてしまって自分の気持ちを冗談交じりに気楽に話します。
でも、参加されて間もない人は、やっぱり『きれい事』に聞こえちゃう発言をされる場合が多いんです。
別にその人が、『いいカッコ』をしているワケではないんですよ。
自然にそういう感じになっているのでしょう。
まぁ、世間ではそれが一般的なんだし。
でも、何ヶ月か経つと、それが段々と気付いていなかった自分の本音を、気楽に出せるようになっていくんですね。
(もっとも、『抵抗』が生じて参加をやめられる人も、中にはおられますが。)
ところでそれに関するお話なのですが、先日ちょっと時間がある時に仏教に関しての本を読んでいたら、ある対談の本で、世界的な仏教学者の中村元先生が、『自分の欲望は欲望としてまたあるがままに見て、それに対してどうしたらいいかということを、またあるがままに見たところによって考える、そういう道筋が必要』と仰っていました。
やっぱりそこなんだよなぁ、とちょっとうれしくなりました。
人間の心の深くには、制御しにくい欲望があるのは確かです。
でも、それを『いけない事』として、バシャッと蓋をしてしまうと、どこか『きれい事』ばかりになっちゃうんじゃないでしょうか。
親からインストールされた【命令・禁止】、またきれい事への【憧れ】、これらの陰にある欲求や願望を、『あるがままに見る』とまでは言わないものの、やはりチラッと気付くぐらいの方が、意味のある人生に近づけると僕は思うのですが如何でしょうか。
講座に参加された当初は「人の視線が気になって」と暗い顔をしていた人が、いつの間にか「おもしろい事を言って、人にウケるのが大好き!」と講師になって活躍しちゃうことも珍しくはありません。
「要は自分のためなんだけどね!」と言いながらも、なぜか人に好かれるタイプに変化した人もいます。
こういう方々の言葉には、もはや『きれい事』と聞こえる部分が本当に少ないんですよね。
まずは【良い・悪い】を離れて自分の欲求に気付き、それを出来るだけ【矛盾の少ない】言動や行動に表していく。
もちろん、かなえられないことも沢山あるでしょうが、ややこしいコミュニケーションなどを駆使したりせずに、できればユーモアのある素直な表現をできるのが大事じゃないかなぁ、と思っています。
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