日本で暮らしていると気がつかないが、日本の食文化は素晴らしいとあらためて感じた。

 

 海外生活が長い知人のジャーナリストと話す機会があり、日本の食文化に話題がうつった。

 彼がいわく、「日本人は誰でも同じものを食べている。そこに貧富の差は存在しない。」

 これはいっつたい、どういうことだろうか。


 日本以外の世界では(欧米でも、イスラムでも、アジアでも)、貧富の差が食生活に表れるという。つまり金持ちと貧乏人では、食べるのもが異なる。

 それに対して、日本では金持ちも貧乏人も同じものを食べている。


 そうかな?

 これでは分かりにくいので、詳しく解説したい。


 日本人が同じものを食べているというのは、日本人なら誰でもトンカツを食べるし、寿司を食べるし、カレーを食べるし、そばを食べるという意味だ。そこには貧富の差はない。

 確かに、金持ちと貧乏人では、その細かい内容の差はあるだろう。

 駅前の回転寿司か高級寿司店のカウンターかの差はあるだろう。コンビに弁当か料亭の仕出幕の内弁当かの差はあるだろう。大衆食堂のチャーハンか高級中華料理店のチャーハンかの差はあるだろう。

 しかし、このような差は認めても、多くの日本人は同じものを食べている。どんなに大金持ちでもB級グルメやジャンクフードはたまには食べるし、生活に困窮している人でも生まれてこのかたウナギを食べたことがないという人は珍しいと思う。

 

 しかし世界では、その経済的、社会的な階級やレベルによって、食べるものもまったく異なるのだ。

 私たち日本人からすれば、まず信じられないことなのだが。


 趣味や教養、身につける持ち物、文化的な素養においては、貧富の差による格差が厳然と存在するだろう。

 しかし格差社会だのと言われている日本の社会も、こと食文化に関しては限りなく平等なのだ。


 そして現代の日本が世界に誇る代表的な食文化である「おにぎり」も「ラーメン」も、けっして高価な食事ではない。

 そう考えると、食文化については、日本の国は世界の中の楽園なのかもしれない。