有名な相場格言に、「もうはまだなり、まだはもうなり」という言葉がある。

 株式相場などで、「もうこれ以上値段は上がらない、ここが天井だ」と多くの人々が思っている時には、まだ値段は上昇していくものであり、逆に「まだまだ値段は上がるだろう」と多くの人々が高をくくっている時こそ、まさに値段のピークであることが多い。


 これは何も相場や経済活動だけではなく、政治的な政策決定や私たちの日常生活における諸判断でも、正しく当てはまる心理でしょう。

 たとえば「少子高齢化社会」、現代の日本が抱える深刻な問題として、多くの政治関係者はこのテーマに関して様々なことをしきりに提言しています。

 しかし将来に我が国が深刻な少子高齢化社会を迎えるだろう事実は、人口統計などから、もう何十年も前からわかっていたことです。

 それにもかかわらず、「まだ」大丈夫と問題を先送りしたわけです。数十年前の時点で、「まだ」ではなく「もう」対策を真剣に検討すべきだったのです。

 また「もう」景気刺激策は必要ない大丈夫だと軽々に判断して、経済の引き締めを早まった結果、せっかく立ち直りかけた景気の腰を折ってしまうという過ちもあります。


 勝手な思い込みやこだわりにとらわれることなく、何事も客観的にタイミングやレベル(程度)を判断して行動することが大切です。