前回、なぜ一般的な要因に反して円高が進行していることの不思議について書いたが、一夜明けてみると、さらに円高は進んでいた。特にユーロに対しては11年ぶりともなる1ユーロ97円を割ってしまった。


 日本は金利も低い、貿易でも稼げなくなっている、総合的な国力でもイマイチ、それなのに円は強い。なぜであろう。

 そもそも通貨の強弱などは、相対的な評価で決定するわけだから、日本がひどい以上に、アメリカや欧州は最悪なのか。ある意味では、そうとも言えるのだ。

 欧州における金融不安から、この円高はきているとも言えるのだから。確かに欧州の経済は現在最悪だ。

 一時はギリシャの問題がクローズアップされていたが、今度はスペインにおける金融危機が取り上げられている。スペインはギリシャとは比較にならないほどの経済規模を持つ。(ちなみにギリシャ一国の経済規模は日本でいうと埼玉県一県くらい)

 そうこうしているうちに、次はさらに大きなイタリアにまで危機は波及しかなない。

 欧州の銀行の不良債権も莫大であるし、失業率も高い。前述のスペインなどでは失業率は24.1%、若者に限定するならば51.1%と、驚くべき数字が表れている。

 こう考えると、日本もダメだが、他の国々はもっとダメ。ダメ、ダメの競争で、日本はいくらかましな程度ということで、円高は進行しているとも考えられる。


 ある意味では、この解釈は正しいのだが、それにしても、そんなにも日本はましな方なのか?

 バブル崩壊以降、失われた20年というように長期に経済は停滞しているし、生活保護の受給世帯数も増加の一途であるし、最近ではNECやソニーといった日本を代表する大企業でさえ数千人規模のリストラ計画を打ち出している。けっしてほめられた状況ではない。


 それならば、どの部分が「まだまし」と思われているのだろうか。私は「通貨の信用」であると思う。

 確かに日本の国の国債発行残高は世界でも群を抜いて莫大であるが、その利払い額はイタリアと同程度と言われる。つまり調達金利が低いので、額が大きくても利払いは少なくなるのである。

 さらに通貨の希薄化という点からすれば、日本の円は他の通貨に比較してもまだましな状態である。それだけ他国では通貨の価値が棄損している。リーマンショック以降の経済対策で通貨をバンバン発行しまくったわけだ。それが各国の財政赤字とあいまって、現在「ソブリンリスク」と称されるものに発展している。

 この辺のところから、次回さらに掘り下げて書いていきたい。」