Jan. 22, 2024
【コルソン・ホワイトヘッド/ハヤカワ文庫】
19世紀前半のアメリカ南部を舞台に、奴隷制度に翻弄され続けた
黒人の悲哀を生々しく描いている。
南部の黒人奴隷を北部自由州に逃がす組織、活動を「地下鉄道」と
読んでいたことが本作のタイトルに使われている。
小説では実際に地下のトンネルが象徴的に描かれていて、暗黒から
自由という光のさす地点への道筋が印象強く想起される。
逃亡を試みた奴隷に対する農園主の報復は目を背けたくなるほどに
残酷・苛烈で、他の奴隷たちを屈服させるためのあらゆる仕打ちは、
頭脳の進化した人類だけによって生み出されたと思うと恐ろしくも
なる。
わずか200年前にこのようなことが当たり前とされていた事実にも
あらためて愕然とする。
長い小説ではあったが、一語一句が重苦しくて相当な時間がかかり、
読後感も重かった。
作者は本作でピュリッツァー賞他多数受賞。
次作の「ニッケル・ボーイズ」(既読)でも同賞を受賞している。