8/20㈯、第15回かながわ乳がん市民フォーラムを聴講しました。
フォーラム内容を私のブログに遊びに来てくださった皆さまとshareできたらと思います。
長文の記事になりますので前後編にさせていただきます。(いつも通りの安定感( ̄_ ̄ i))
興味のない方はまたのお越しをお待ちしておりますm(_ _ )m
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第15回かながわ乳がん市民フォーラム
高めよう患者力!~情報に流されないために~
1.乳がん治療の最新トピック…勝俣範之先生(日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科教授)
☆乳がん術前術後抗がん剤治療は、再発をさせないためにとても重要であり、標準治療が原則である。(むやみに抗がん剤の投与量を減らさない)
抗がん剤治療は、初回から通院治療が可能である。
(現在でも患者を入院させて抗がん剤治療を施行する医療機関があるが、初回から外来でやりましょう。)
☆乳がん術後化学療法は進歩しており、現在よく使われているのは6種類くらい。
その中でも新しい化学療法としてDose-dense AC→PTX療法が登場。
これはアドリアマイシン・エンドキサン(シクロホスファミド)を14日ごと4クール。
その後パクリタキセル(タキソール)を14日ごと4クール投与するもの。
他の化学療法(ウィークリーPTX除く)は21日ごとに投与するのに対して、この療法は治療強度を高めるため14日ごとになっている。ちょうど骨髄抑制で白血球数が低下する14日ごとに投与することになるため、白血球を増やす薬(Peg G-CSF)を投与してリスクを軽減させながら行う化学療法となっている。
※通常の抗がん剤治療後に白血球数が低下してから投与されるG-CSFとは違うもの。
☆2015年Lancetに掲載された論文では、FEC(5-FU+エピルビシン+エンドキサン)とEC(エピルビシン+エンドキサン)の長期的予後を比較する臨床試験が行われ、どちらも予後は変わらないとの結果だった。これによりFECは要らなくなるのではないか。(ECで良いという流れに…)
☆2016年のひとつの論文に術後アロマターゼ阻害剤(レトロゾール)は10年内服の方が良いという臨床試験結果が出た。一つの論文なので、このような論文が2,3本出れば標準治療になるかもしれない。ただ10年のアロマターゼ阻害剤を内服すると骨粗鬆症や骨折の副作用が出る臨床試験結果も出ているので注意が必要である。
☆高度悪心・嘔吐に対するオランザピン(統合失調症治療薬)が抗がん剤の制吐効果を増強する臨床試験(RCT)結果が出た。現在は保険適用外だが数年後には保険適用になるのではないか。
☆進行・再発がんの抗がん剤治療のポイントは生活の質を保つこと、抗がん剤をやりすぎないこと、がんと上手く付き合っていく(共存)こと。
自分の大切にしたいことを医療者と話し合いましょう。
生活の質を高めることは生存率を上げることにつながる。
☆抗がん剤が全ての人に効果がない、ということはない。抗がん剤の効果は、がんの種類・ステージ・全身状態・個々の患者さんの生活の状況によってもメリット、デメリットは大きく異なってくるので主治医とよく相談すること。
☆抗がん剤投与後、白血球が下がりそのたびに2~3日G-CSF(白血球数を上げる薬)を打つ医療機関があるが、白血球が下がってきてからのG-CSFは感染予防効果は認められておらず、ガイドラインでも推奨されていない。(白血球が低下してからではあまり効果がないそう。)
☆ドセタキセルの爪・皮膚障害の予防にフローズングローブが有効。しびれの予防にも効果があるようです。(抹消への抗がん剤到達を予防)。
このフローズングローブは皮膚表面は冷たくならず皮膚の内部を冷やす構造になっているので、アイスノンなどでの代用は効果がない。
医療機関で常備しているところも少ない。→患者の副作用予防になるのだが、患者に使用しても保険点数が取れない(医療機関の利益にならない)から普及しないのでは?とのこと。
☆免疫細胞療法(一回200万など)で抗がん剤の副作用が減り効果も高まるなど、そのような効果が証明された治療は存在しない。効果のある治療なら保険適応になるのが当然。弱みにつけこんだ詐欺的な治療もあるので注意!!
※免疫チェックポイント阻害剤とは違います。
☆再発がんの治療目標は、がんとより良く共存していくこと。抗がん剤をやりすぎると体がボロボロになることもある。抗がん剤の減量、場合によっては休止など主治医とよく相談することも大切。
☆血液がん以外での抗がん剤治療中は、生ものを食べても影響はない。またマスクもしなくて大丈夫。
(アメリカの臨床試験では生ものを食べても感染症にはならない結果が出ている。またマスク着用が感染症予防効果になるエビデンスはない。)
2.正確な情報の見分け方~補完代替療法は効果あるの?~
…大野 智先生(大阪大学大学院医学系研究科統合医療学寄附講座 准教授
⑴情報を見分ける
☆情報を科学的に見極めるためには、科学的根拠(エビデンス)のランキングを知ること。
科学的根拠(エビデンス)には経験談・権威者の意見(エビデンス低い)からランダム化比較家試験(エビデンス高い)までランク付けされている。
一番信頼性が高いのはランダム化比較試験。
その治療法(補完代替療法)がある症状・疾病に対して有効であると証明するためには臨床試験を実施する。(日本・海外ともに)
臨床試験→ヒトで使えるかどうか。
☆ランダム化比較試験(RCT)→新しい治療法が「医薬品」として認められるまでの重要なステップ。
それぞれの一次研究(RCT)を取りまとめて再び評価する(システマティックレビュー)
☆治療効果の解釈について☆
臨床試験の結果が正確な情報であることは間違いない。
治療効果の解釈として、これまでの治療がまったく効かないというわけではなく治る患者や症状が軽減する患者もいる。また新しい治療でも効果が100%のものはない。
治療効果が100%に近く副作用が0%に近い数字を示す→ほとんどの医療行為はグレーゾーンでこれが医療の不確実性(医療の限界)と言われるものである。
裏を返せば副作用が0%で効果が100%などという治療法はないということ。
医療の不確実性とエビデンスがないというのは似て非なるものなので注意!
⑵補完代替療法について
一部のものは保険承認されているが、ほとんどは保険適用外である。
-保険適用外-
健康食品・サプリメント、ヨガ、瞑想、アーユルベーダ、アロマセラピー、温泉療法、音楽療法、断食療法、カイロプラクティックなど
-保険適用-
漢方、鍼灸、按摩・指圧、柔道整復、ビタミン、ミネラルなど
☆補完代替療法に関する正確な情報(臨床試験の結果)を入手するには厚生労働省の「統合医療」情報発信サイト(eJIM)が良い。
※「統合医療」情報発信サイト…http//www.ejim.hcgg.go.jp/
例:がん、アガリクスの検索ワードをこのサイト検索すると19件HIT。ここではヒトでの臨床試験結果、安全性などを知ることができる。
一方、Googleで同じく検索すると約38万件HIT。検索結果のTOPには怪しげな広告があったりするので注意。
(ちなみに38万件の検索結果を全て見ようと思うと、1日8時間365日で2年間かかる。しかもほとんど商品の広告や経験談。)
また日本緩和医療学会から「がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス」が出版されている。
☆補完代替療法は残念ながら予後の改善に繋がるとのエビデンスはない。
がんが治るかどうかの検証もできていない。
しかしヨガは倦怠感を軽減したり、睡眠の質を高める臨床試験結果も出ている。
運動は乳がん患者の再発予防になるエビデンスもある。
心や体の健康を保つ目的でも補完代替療法の活用方法はある。
☆補完代替療法に関する情報には、あやふやなものが多い。
情報の取捨選択、そのための知恵(情報リテラシー)が必要。
臨床試験結果は判断の物差しになる。
情報はグレーのものが多い。しかし情報を受けての決断や行動は白黒(する・しない)はっきりしている。
同じ情報を持っていても、価値観や好みによって選び方は異なる。
大切なのは自分で下した決断に責任を持つこと=インフォームド・チョイスである。
※後編へ続きます。