ダイアローグ・ドキュメント

寄せては返すさざなみのような毎日の、対話の断片を拾っておこう。

Amebaでブログを始めよう!
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>

事件! 激闘の末の、羽生二冠前代未聞の投了

夕食前には既に羽生二冠の圧倒的優位、ほどなく終了と思われた激闘は、挑戦者中村六段の驚異的な粘りの中二転三転し、深夜にもつれ込んだのでした。
日経新聞主催によるタイトル戦・王座戦五番勝負の開幕戦第1局。
先週1勝4敗で王位のタイトルを失冠したばかりの羽生二冠には、実に気の毒な過密スケジュールの中の戦いでした。
もちろん相手は現在絶好調の、新鋭中村六段。
イケメンで人柄も良いのに、将棋もものすごく強いという憎めない若手です。
その憎めない中村六段の、深夜に入ってからの鬼気迫る形相と、盤面に没入する集中力は、凄まじいものがありました。
 
 
図が投了の局面ですが、見た目には投了もやむを得ないと思えるこのシーン、驚くべきことに、ソフト評価値ではなんと「±ゼロ」なんですね
つまり、全く対等で、羽生さんは投げる必要がなかったのです。
具体的には23桂打という受けの妙手があり、それを指していれば、悪くても千日手に持ち込めたようです。
ただ、中継での解説陣のコメントでも、この局面前後の検証結果は実にあやふやでしたので、自玉の安全性を完全に確認した上で指し続けるのは、秒読みの中の人間技ではほぼ不可能だったでしょう。
ただ、中継を見ていて思ったのは、局面が二転三転する中でミスを犯して勝ち筋を再三逃した羽生二冠は、「これはトータルとして自分の負けである」との判断をしたように思えました。
蓄積した疲労の影響もあったでしょう。
朝九時に対局が開始されて深夜11時に終了し、その直後に大盤解説会場のファンの前に姿を見せた羽生さんの表情は、まさに精魂尽き果てた疲労困憊の様子が見て取れました。
本局は、以上のように、まさにファンにとっては手に汗握る稀有な激闘の名局だったのですが、改めて感じたことは、人間同士の戦いは、ソフトの機能や評価とは全く別のところで決まるものなのだな、ということです。
棋界のトップ同士でさえこれなのですから、我々アマチュアが指すヘボ将棋等、ソフトは学習の参考にする程度のもので、それがどんなに進化しようとも、我々が将棋というゲームを楽しむ上では、何の影響もないということです。
その人間同士の戦いの醍醐味を存分に提供してくれるプロ将棋は、ソフトの進化に比例する形でその魅力が一層鮮明になり、今後益々盛り上がっていきそうです。

豊島八段の強さ

先日、全く付け入る隙を与えないまま藤井四段を撃破した豊島将之八段(27歳)。
名人含めて11人しかいないA級棋士の一人ですが、最近その強さに益々磨きが掛かっています。
 
棋士には、その棋風(将棋のスタイル)を表す「キャッチフレーズ」のようなものが仲間内、もしくはファンの間で付けられています。
有名なところでは、丸山九段の「激辛流」、森内元名人の「鉄板流」、深浦九段の「鳥餅流」、屋敷九段の「忍者流」と言ったように、その将棋の特徴をよく表しています。
ちなみに屋敷九段は、一旦その術中に嵌ると、まるで忍者屋敷のように手裏剣や手榴弾等の罠が次々に繰り出されてくるので、そう呼ばれています。
おおむねこのように、「〇〇流」という言い方をするのが普通ですね。
 
ところが、なぜかこの豊島八段だけは、「豊島? あ、強いよね」なんですね(笑。
しかも、この微妙な言い回しが、豊島八段の将棋のイメージにぴったりと当てはまってしまうのですから、彼の将棋界における信用が相当なものであることが分かります。
つまり、「あっ」と気づいた時には既にやられてしまっている、という感じですね。
 
その豊島八段の対局が、昨日午前午後連続で行われました。
新規タイトル戦である叡王戦の予選(八段戦)です。
八段戦なので、相手も当然八段なのですが、2対局共に、まさに激勝。粉微塵に相手を粉砕してしまう勝ちっぷりでした。
 
 
図は、その2局目、富岡八段との対局の投了図です。
まず目につくのが、51手という手数の少なさ。
それ以上に驚愕なのが、投了時の互いの持ち時間です。
相手の富岡八段がほとんど使いきっているのに対して、豊島八段の方は、1時間の持ち時間をなんと54分も残しています。つまり、ほとんど考えないで最後まで指し手いるのです。
そう、この投了図を含めて、彼の研究範囲だったということですね。
富岡八段は、まんまと彼の「研究」に嵌められてしまったわけです。
 
ちなみに、通算500局以上の長年の対局実績がある棋士の中で、7割以上の勝率を保持しているのは、羽生三冠王以外では、この豊島八段ただ一人なのです。
 ※300局くらいの実績者の中には、やはり藤井四段に勝った菅井七段、他に最近タイトル挑戦でも活躍中の斎藤慎太郎七段の二人がいます。
 
豊島八段、恐るべし。
たしかに、「豊島? あ、強いよね」

藤井四段、不可解な敗戦

終局後の、「はっきり力負け。実力の差、壁の高さを感じた。まだまだタイトルには実力不足。これから一歩一歩強くなっていきたい」とのコメントを聞けば、たしかに理屈が通っていてその通りだなとも思うのですが、終盤の勝負どころが不可解な一局でした。
 
棋王戦決勝トーナメント、相手は若手トップの実力者・豊島八段。
豊島八段は、何度もタイトル挑戦したこともあるA級棋士で、実力トップ5に入るくらいの正真正銘の強敵です。
午前中に藤井四段先手で始まった本局は、早々に千日手となり、指し直しになりました。
見たところでは、豊島八段の誘導に嵌り、千日手にさせられたような状況でした。
しかも、藤井四段だけが1時間以上持ち時間を消費していたので、指し直し局に引き継がれる持ち時間で、一気に不利になってしまったんですね。
とはいえ、後手番となった指し直し局では、藤井四段も上手く指し、中盤で持ち時間の消費は五分となっていたのでした。
 

図は、その勝負どころの局面で、豊島八段が角取りに28飛車と催促したところ。藤井四段の手番です。
ここでは、解説でも、アマチュア的に見ても、59銀不成と入って勝負する一手に見えました。
実際、そう指していれば、藤井四段側が互角以上に優位に戦えたようです。
しかし、なぜか指し手は驚愕の39角成。
その結果、58の銀がタダで取られてしまいます。銀の丸損ですね。
藤井四段のことなので、次の66歩と取り込む手の先に何かあるのかとも思われたのですが、78銀打ちと、取ったばかりの銀をがっちりと受けに投入されて、一気に形勢が開いてしまいました。
 
この局面、藤井四段は、ある程度の時間考えていましたので、見落としや単純ミスの可能性はほぼ無し。
しかも、59銀の後の展開は、直線的に何10手も先まで深く読めるので、見通しを立てやすかったはずです。
恐らくは、39角成以降を深く掘り下げた局面に、何か決定的な誤算があったのでしょう。
 
いずれにしても、藤井四段としては、珍しい負け方でした。
対局が立て込んで、疲労が蓄積しているのか?
それとも、中3最後の夏休みの、宿題でも気になっていたのか?
次戦9月2日、さらに9月3日に生中継が決まっているNHK杯戦に期待しましょう。

藤井四段、今日1日で怒涛の連勝

朝日オープントーナメントの2回戦、3回戦が行われた今日、藤井四段は午前中の2回戦を勝ち進み、そのまま午後の3回戦へと進出しました。
本戦は、持ち時間各40分切れ後1分秒読みなので、ほぼ早指しの戦いです。
2回戦の大石六段、3回戦の竹内四段共に新鋭で強敵です。
 
予想通り共に激闘、凄まじい戦いが繰り広げられたのですが、特に午後の竹内四段戦がすごかった。
竹内四段は既に公式戦で藤井四段に連敗していて、ここは男として何としても勝たなければという一戦でした。
気合も相当なもので、序盤の作戦勝ちから優位を築き、自玉を安全な穴熊に囲って攻めに専念できるという、理想的な作戦勝ち局面を作り上げたのでした。
「藤井城落城」に後一歩というところまで迫ります。
 
 
図は、その終盤の入り口、先手の竹内四段が16歩と桂馬を取った手に対して、藤井四段が、なんと同竜!と応じたところです。
自然に歩で取れるところ、わざわざ香車の利き筋に攻めの要の竜を差し出すという、驚愕の1手です。
 
局面を見渡すと、藤井陣には竹内四段の攻め駒3枚が既に迫っており、なおかつ藤井玉のいる端にも敵側の手が付いているという、いわゆる「後ろから前から」という局面で、藤井四段にとっては絶体絶命とも言える危機的状況に陥っています。
そこで悠然と、まるで敵を小馬鹿にしたような手を繰り出してしまうあたり、この人はただ者ではありません。
しかし、確かに指されてみればなるほどの一手で、ここで竹内四段の駒台には歩がない。いわゆる「歩切れ」、「歩のない将棋は負け将棋」状態なのを、合理的に咎めているわけですね。
これ以降、竹内四段に1歩あれば受けられるという局面が続くのですが、ついに歩を持たないまま敗勢に陥っていきます。
 
この一手が、どうやら完全に竹内四段の脳細胞を破壊してしまったようです。
ここは同香と取ってもよかったのですが、熟慮の末結局取れず!
竹内四段は自陣の88に金を埋める守りに徹せざるを得なかったのでした。
これにて、例によって形勢逆転の様相となり、何よりここまでは攻めのことだけ考えれば良かったのに、これ以降は攻守両方を、しかも秒読みの中で考えなければならない状況に陥り、じわじわと後退を余儀なくされてしまったのでした。
 
局後の竹内四段いわく、「手が見えなくなった。。。」
このあたりの藤井四段の指し手は、朝日デジタルのLive中継画像を通しても、バシバシと激しい駒音が伝わる気合の入りようで、勝負の鬼・藤井四段の独擅場を見るばかりとなったのでした。
この連勝で、今期通算成績は29勝3敗、勝率は9割を超えています(驚。

ラグビーは、なぜこんなにも熱いのか? ~サルでも分かるラグビー入門~

ラグピー日本代表のWカップでの大活躍が持て囃される一方、若い世代や女性を中心に、「ルールが分からない」という声がよく聞かれる。さらには、それを根拠に「ブームは一過性で終わるだろう」とまで言われ始める状況。

これは、いかん。
何か自分にできることはないか?
というわけで、思いついたのが、我流「ルール解説」。


もちろん、ランニングオタクの自分に、ラグピー経験はない。
高校の時授業で習ったのと、Jリーグ創設以前盛んにやっていた大学や社会人ラグビーの試合をTV観戦していたくらいだ。
しかし、日本チームフォワードの要・畠山選手も、帰国会見で「ルールを完全に知っている選手なんて、この中にもいません(笑」と言っていたではないか。
であれば、ファンならなおさらのこと、ルール理解は浅くていいはずだ。
そう、要は、ラグビー観戦を楽しめればいい。
そういう前提での解説です。
なので、これを書くにあたって、ネットでの下調べとか一切やっていません。単に脳内の知識(というか、単なる記憶)を吐き出

すだけ。記述内容の細部にわたっては、一切責任を負いかねるので、念のため(笑。
では、前置きはこれくらいにして、早速。



■ラグビーの“熱源”!


①フォワードによる“格闘”
 前線の巨漢フォワード選手達が、文字通り命懸けでぶつかり合う。ラグビーの一番の醍醐味だ。
 今回の日本代表チームは、スクラムを含めたフォワード戦を死ぬほど強化してきたらしく、素晴らしい肉弾戦を展開してくれた。⇒写真




 何度もぶつかり、何度も潰され、上からどんどんのしかかられ、よくあれで怪我をしないものだと思う。(※実際には、一杯しているらしいが、とにかくプレーを続ける)
 倒されても倒されても、少しでも前進しようと突進を繰り返す姿は、それ自体が心を熱く揺さぶられる。
 一見単調に思えるあの攻撃、見ているうちに、そこに深い意味が隠れていることが見えてきた。


②鮮烈なライン攻撃
 ラグビーの真骨頂、バックスによるライン攻撃。
 これが決まったときほど、見ていて気持ちのいいものはない。
 しかし、今回のWカップで嫌というほど分かったのは、ワールドクラスの強豪チームのディフェンスの強さは尋常ではないということ。
 日本チームは、球を持っているにも関わらず、ゲインライン(※元々球があった位置)を突破できないでずるずると後退させられるシーンも目立った。とにかく、ディフェンスラインの寄せが素早く正確。
 ライン攻撃によるトライは、宝くじでも当てるほど遠かった。
 それだけに、あの南アフリカ戦の最終版、途中出場したウィング・ヘルケスによるライン際へのトライには、だれもがアドレナリンを噴出させることになった。


③不安定な球の行方
 従来の日本ラグビーでは、ライン攻撃の際、ほぼ半々くらいの確立で、キックを使っていた。
 ところが、現代の日本代表は、これをほとんど使わず愚直に縦への突進を繰り返す。
 敵陣の裏側にハイパントを上げる。ともすると、相手が捕球しきれないで球が転がる。
 転がるのは、もちろんあの形のラグビーボール。どちらの転がるか分からない。思わぬバウンドで、味方の前衛選手が捕球すれば、一気にチャンス到来。
 しかし、そうした攻撃は、一面不確実だ。
 日本代表のプレーには、ラグビーの不安定さを受け入れながらも、その中に安定と確実性を見出す、そんな哲学さえ感じさせるものがあった。
 そして、それこそが、今回の「3勝」たたき出した“強さ”の源泉だと思う。



■メンバーと組織編成を知る


1チーム15人で、敵、味方に分かれて対戦する。
特別に、最近たびたび話題になるパワポ(PPT)で、陣形イメージのスライド作成したので見て欲しい。
特製だ! ⇒図①




なんとなく、分かってもらえますよね。この敵味方2チームがが向かい合っているイメージ。
で、15人の編成は、基本3つに分かれる。
まずは、フォワードの8人。
あの球技というよりは、格闘技のような恐ろしい体格をした人たちの集団ですね。
スクラムを組むので、体重と筋力が不可欠。
体格で劣る日本チームのフォワードは、死のような筋トレとスクラム練習に明け暮れたらしい。

次に、ハーフプレーヤーが2人。
スクラムハーフとスタンドオフハーフ。
ゲーム進行、特に攻撃の起点となる重要なポジション。
以前人気があったころの大学ラグビーでは、各チームのスタープレーヤーは、必ずこのスタンドオフの選手だった。

そして、バックス。
その編成は、センターバック2人、ウィングバック2人。そして、フルバックだ。
今回有名になった、あの五郎丸選手のポジションですね。⇒図③


整理すると、ラグビーの布陣は、フォワード8人、ハーフ2人、そしてバックス5人という構成になっている。

では、次はいよいよルール解説だ。



■頻発する3大反則の意味を味わう!~これだけは、絶対に押さえたい!


いきなり、反則からだ。
しかも、3つだけ知っておけば、大概ラグビーは理解できる。
でも、その意味は結構深く、ラグビーというスポーツを特徴付けている、いわばルールの要だ。


①“スロー・フォワード”
 球を「前に投げる」。
 なぜか、これがラグビーでは許されない。
 要するにラグビーとは、「ボールを前に投げてはいけない」スポーツなのだ。
 なので、オーソドックスな攻撃法であるライン攻撃の際、必ずそのフォーメーションは図②のように、ボールのある位置の後ろ側に選手が並ぶ(ラインを形成する)ことになる。
 ※図②は、ラックから、今まさに球出しが行われようとする瞬間。




 実際の試合では、少しでも敵陣に向けて進もうとする(地域を取ろうとする)ので、必然的に反則ぎりぎりのところでパスをする。
 よって、この単純な反則が結構頻発するわけだ。


②“ノック・オン”
 これも簡単なルールで、球を前に落としてはいけない。
 この反則も、試合中頻発する。
 その理由は、ラグビーボールの形にある。そう、あのアーモンドのような変形したボール。結構手に付きにくいのだ。
 なので、熟練のラグビー選手でも結構落とす。
 後ろに落とすのはいいが、自分よりも前方=敵陣方向に落とせば、すぐに反則。
 相手ボールでのスクラムとなる。⇒写真




③“オフサイド”
 サッカー同様、ラグビーにもあるオフサイドルールは、やはりこのスポーツの秩序の要だ。
 いろいろなケースがあるが、ラグビーでは、ボールが存在する位置を基点にして、常に敵陣と味方を分ける仮想の横線が引かれているというイメージを持つ。⇒図②の赤ライン


 その仮想ラインの敵側にいる選手がボールに働きかける(※例えば、ボールを奪おうとする)と、すぐにオフサイドになる。
 後で説明する、スクラム、モール、ラック、ライン攻撃等、ゲームのあらゆる局面に共通する重要なルールだ。



■ゲーム編成のルールも、3つだけ知ればOK!


①40分×2(前半、後半)で、ゲームを行う


②“キックオフ”ではじまり、“ノーサイド”で終わる
 この始まりと終わりの“表現”だけは、ラグビーを知らない人を含めて、余りにも広く知られている。
 ラグビーが、ひとりスポーツのみならず、人の生き方にまで深い示唆を与えるスポーツであることの証だ。


③点の入り方は、次の3つ
 1)トライ:5点
  敵陣のエンドラインを超えた一定範囲の中で、球を地面につけて押さえる。これだけ。
  しかし、これが難しい!
 2)コンバージョン・ゴール:2点
  トライをしたら、その位置から縦に伸ばした仮想ライン上のどこからでも、1度キックする権利が与えられる。
  まあ、宝くじで言うと、1等の前後賞のようなもので、漏れなく付いてくるわけだ。
  仮想ラインがゴール正面に近い角度であればあるほどキックが入りやすいので、トライしようとする選手は、できるだけ敵陣

正面にボールを持ち込もうとする。
 3)ペナルティキック&ゴールキック:3点
  反則によるゴールキック。普通のキックでのゴール。いずれも3点だ。
  ちなみに、ペナルティキックによる得点は非常に多いが、普通のキックでのゴールは極めて稀。それだけ難しいということだ。



■試合展開のポイントとなるプレー


①ラック ⇒写真




 球を持った選手は敵陣に向けて突進する。
 対して相手チームは、それを阻止しようとして、果敢なタックルを挑んでくる。
 ラグビーとは、つまるところ、繰り返しだ。
 ただ、タックルを受けた選手が味方にパスをつなぐことができずに潰されてしまった場合、その場でラック(※写真。選手が密集した団子のような状態)となる。
 ボールを持って潰された選手は、すぐにボールを離さなければならない。
  ※離さないと、“ノット・リリース・ザ・ボール”の反則を取られ、ペナルティとなる。
 これも今回観戦していての発見だったが、倒れた選手が、味方に向けてボールを置く動作が、綺麗に手が伸びて実に美しかった。味方が命を張ってものにした球を大事にする姿勢が、代表レベルでは徹底しているのだ。
 ちなみに、ラックの中では、手を使ってボールを処理してはいけない。
 使うと、これも反則を取られ、ペナルティとなる。


②モール ⇒写真




 タックルを受けた選手が倒されることのないまま、他の選手もそこに集中して来た場合は、“モール”(※写真)となる。モールは、ラックと違って選手が立ったままなので、密集を組んだまま移動することができる。
 モールを得意とする日本チームは、あの惨敗したスコットランド戦の前半、モール状態のまま敵陣に押し込んでトライを決めた。ちなみに、そのような戦法を“ドライビング・モール”と言う。


③ライン・アウト ⇒写真



 Wカップを今回じっくりと観戦してみて、一昔前の国内ラグビーとは、まったく風景が違うと感じた。
 とにかく、個々のプレーの完成度が高く、正確なことだ。なので、全体として非常に美しいスポーツに見えた。
 その象徴が、ライン・アウトだ。
 球がグラウンド内から脇に出た場合に投げ入れる、あれですね。
 球を入れる際、味方フォワード陣が瞬時に人間ピラミッドのような陣形を作り、正確に球を自陣に引き入れる。
 昔はあんな正確なプレーはなかった。


④スクラム ⇒写真




 軽い反則の場合は、常に相手ボールによるスクラムが組まれる。
 基本的に両チームとも、フォワード8人全員で組む。
 反則のたびにスクラムになるので、試合展開の帰趨を左右する重要なプレーだ。
 今回日本代表を率いた名将・エディージョーンズHCによれば、「スクラムとは、ピアノと同じで、やればやるほど上手くなる」のだそうだ。
 日本代表のスクラムは、軽量にも関わらず、強く頼もしかった。


⑤タックル ⇒写真


 ラグビーとは、つまるところ、敵プレーヤーへのタックルの繰り返しだ。⇒写真
 しかも、ラグビーの場合、アメフトのような防具を全くつけないで、これを行う。
 実際、試合後には、ものすごく身体が痛いらしい。
 しかし、これを躊躇していては、話にならない。
 そう、ラグビーとは、そんな痛さも厭わない、文字通りの男のスポーツなのだ。



さて、図らずも、かなり長くなってしまった。
今回は、あくまで入門編なので、ルールを中心にこの辺で。
たぶん、詳しい方から見れば、いい加減な説明、あるいは間違いが沢山あると思う。
ぜひ、ご指摘を。
もしまた機会があれば、そのうち、実践編を共有してみたい。
ラグビールールが、広く若い世代の国民に共有され、ラグビー人気が次回東京大会にまで続くことを願って。
では!

4年ぶりの自己ベストで完走!/第21回ハセツネカップ


10月14日未明、ハセツネカップ、無事ゴールした。

ほんの少しだが、4年ぶりの自己ベスト!
応援いただいた皆様のおかげで、本当に感謝に絶えない。



ダイアローグ・ドキュメント


ダイアローグ・ドキュメント


思えばこの3年長かった、骨折、体調不良、天候に恵まれない…。
ずぼらな性格につき、いつも最低限のトレーニングしかしないので、どれか条件が悪いともうだめの繰り返しだった。
今回は天候に恵まれ、なおかつ不安のあった胃が、不調ながらも最後まで持ちこたえたのが大きかった。


ただ、前半やや高温の中オーバーペースで入ったため、途中でバテテしまい、中盤の難所・御前山の登りは、地獄の苦しみだった。


それでも、捨てる神あれば、救う神あり。
第2CP(42k地点)で、先日の練習時にクルマで送ってもらった青年と偶然再会を果たし、応援をもらったのは力になった。


それと、最終ピーク・大岳山登りでの出来事。
ややヘロヘロ状態の自分の後ろには、20名くらいの行列が出来ていた。
それでも、皆疲れてるので、抜かすまでの体力はないのだ。
そんなわけで、「悪いな~」と思いつつ山頂に着くと、後ろにいた一人の青年が、次のように声を掛けてくれた。
「隊長! 登りのペース作っていただいて、本当にありがとうございました。岩場の難所も好ルートへ誘導していただいて、とても助かりました。」
多少経験が生きたということだが、こんな風に言ってもらえると、嬉しい。


この一言で、今回は何か自分の中でギアが入れ替わった気がした。
大岳山からの下りに入ると結構走れる。
直後の綾広の滝の冷水で顔を洗うと、完全に復活!
最後の金比羅尾根を全力で駆け抜けて、ゴールできた。
日の出山下からの約10kを、なんと50分でカバーしている。
もう抜き放題! ついに、金比羅尾根の風になった。
(※もっとも、なぜ最初からこういう風に走れないのかが、問題だが…)


ダイアローグ・ドキュメント
※日の出山頂からの夜景

【復活の条件】


マラソンはじめロング走で、後半上げ基調でゴールできると、その快感は堪えられないものがある。
特に、ハセツネのようなロングトレランでは、何ものにも変えがたい貴重な体験に思える。
なぜかと言うと、そもそもこういうことをやる大きな意味の一つが、長時間にわたって自分の身体と精神をコントロールしきる事にあるからだ。後半上げ基調で全力を出し切ることが、その証でもある。



ダイアローグ・ドキュメント

でも、これが実現するのは、同一レースの中で、多分2割くらいの選手ではないか。
それは、レース結果のラップタイムの推移を見ると分かる。大半の選手は、前半オーバーペース気味で、後半バテている。それくらい難しい。

まず考えられることは、前半ぐっとペースを落として後半に備えることだが、次のようなわけで、この単純な戦略はなかなかうまくいかない。
 ①レースの盛り上がった雰囲気の中で、自分の実力レベルから格段に下のペースを維持するのが、そもそも難しい
 ②特にトレランの場合は、仮に歩いたとしても、登りでは相当筋肉に疲労が蓄積するので、ペースを落とした実感が、あまり得られない。
 ③そういうわけで、前半ペースを落としても、後半はやっぱりものすごくきつくなる。


つまり、目先の自分の「実感」に捉われているうちは、うまくいかないわけだ。


今回の場合、前半のややオーバーペースが祟って、中盤の筋肉疲労は想定以上だった。左太腿にはキリキリ痛みが走っていたし、その関係で下りでは膝へのダメージが大きく、最後まで持たないのではないか(つまり故障する)という不安に終始襲われていた。
第2CP(42k補給地点、写真)に着いた時は、「今回はもうだめだな」という悲惨な気分に支配されていた。
事実、その後ペースは落ちる一方。特に御前山登りでは、どんどん抜かれていった。


それでも、結果的に後半復活できたのには、次のような条件があると思える。
 ①悲惨な気分の中でも、サプリメント類は一定時間ごとに確実に取り続けたこと。
 ②膝等の決定的な故障、または内臓面の体調不良が発生していないこと。
  ※もちろん、事前の体調管理も含めて
 ③レース前に想定したタイムプラン等に捉われて、部分的に無理(無茶)をしないこと

この3つを守るのも結構難しいが、でも、守っていれば必ず復活のチャンスは来ると、今回の経験から思える。
これは、人生(※仕事、恋愛他いろいろな面で)にも、少し似ているかもしれない。



【苦 境】


「復活」があるからには苦境があったわけだが、今回も格別の苦しさだった。

第2CP(※42k地点、標高約1000M、唯一の給水ポイント、下記写真)に着いたのは、スタート後約8時間半経った午後9時半。この時点で、身体、筋肉共に疲労困憊で、給水を終えた後20分くらいシートに座り込んでしまった。



ダイアローグ・ドキュメント


それなのに、そこから先も苦しさは改善しない。
第2のピーク・御前山への登りでは、足元が異様に左右にふらつく。多分後ろから見たら、「こいつ、大丈夫か?」と思われていたことだろう。

エネルギーが欠乏しているはずはないし、「何だろうこれは?」と思っていると、しばらくして漸くそれが睡魔であることに気づく。特に睡眠不足でもないのに、こんな宵の口にまったくの初体験。理由は分からないが、とにかく眠い。しかも、登りは神経への刺激が少ないので、水を沢山飲んだり、深呼吸を繰り返したりしても、なかなか眠気を振り払うことができない。
加えて、ヘッドライトで照らしているコース上の丸い明かりに、どうも催眠効果があるようだ。見ていると、眼が回るような感じがあった。これは、今後何か対策を考えなければいけない。


そんな状況で登りのペースは上がらず、どんどん抜かされていく。
結局第2CPから御前山頂への約4kに、想定を大幅に超過する1時間20分くらいを要した。
もっとも、このエリアは皆同じような状態になるようで、登り斜面のそこここに、木にもたれて仮眠を取っている選手が目立つ。とはいえ、いくら疲れていても、そういう風に眠ってしまったら、タイムロスはあまりに大きく、復活は難しいだろう。


苦悶の末到達した御前山頂で栄養補給すると、ようやく睡魔は徐々に去っていった。それにつれて筋肉の状態も改善してくるから不思議だ。

この苦境からの脱出の過程には、トレランの大事なポイントがあるように思える。
通常、ロードでロング走をするとき、ポイント練習と疲労抜きジョグを、日を分けて交互に繰り返す。
トレランの場合は、1日の中で、これと同じことをしているように思っている。
つまり、登りコースでは筋肉と心肺に猛烈な負荷が掛かる(≒ポイント練習)、その後の下りやフラット部分では、負荷を大幅に軽減して疲労を抜く。
途中の疲労抜きがうまくいかないと、どんどん疲労が蓄積するので、やがてバテてへばってしまう。そこに栄養補給がうまくいってなかったりすると、ハンガーノックに陥るだろう。だから、疲労が蓄積していることを自覚したら、格段に負荷を軽減する対応を、すぐにしなければいけないということだ。
多分速い選手は、この2つのサイクルの回し方がとても上手いのだと思う。

一時的に周囲の選手に遅れているように見えても、自分の状態をよく自覚して、疲労を抜きながら全体としてイーブンペースを維持し、後半にスパート余力を残している。そういうランナーが、強いトレイルランナーだと思える。



ダイアローグ・ドキュメント

※写真は、序盤20k地点辺りの連峰行への長い登り階段。通称・「痙攣坂」。普通に何気なく登ると必ず太

腿が攣るので、皆膝に手を添えて、慎重に登っている。



【ダメージから分かること】


レース翌日、さすがに太腿四頭筋を中心に脚には筋肉痛があった。
それでも、入浴時にマッサージとかしているので、階段の下りがやや苦痛な程度。
もっとも、この程度の筋肉痛は、ちょうどいい塩梅といったところだ。


幸い腱とか靭帯には障害はない模様。
ただ、最後の下りで、一度右足首を木の根っ子に取られて外側に捻ってしまい危ないところだった。もう少しで捻挫、さらに強く捻れば3年前の骨折の再現。その時点で、レースは終わっていた。
同じように捻っても、骨折まで行く時とそうでないときがある。
これを分ける要因で一番大きいのは、集中力だと思っている。
3年前に骨折してしまった時は、その集中力が決定的に欠けていた。レース前半で豪雨に祟られて時間をロスし、タイムプランが狂ったことに落胆していた。、終盤では15時間切りが難しくなったことで、レース全体を悲観し、集中力をなくしてしまっていたのだ。そういう時が、最も怪我のリスクが大きくなっているということだ。
スピードを出していても、集中していれば、捻った瞬間にすぐに脚を引き抜く等の対処が、大抵の場合自然にできている。


今回のレースでは、一度も転倒がなかった。
ただ、これは天候に恵まれ、コースが全体として渇いていたことが大きい。
転倒をしないと、やはりレース後の筋肉のダメージは少ない。というのも、転倒するということは、それ以上に何度も転倒しかけているということで、そのたびに踏ん張って筋肉や腱を傷めることが多いからだ。トレランでは、できるだけ躓かない、転びかけないことも大切になる。
 ※疲労が蓄積してくると、これがなかなかできないのだが…。



ダイアローグ・ドキュメント


写真は、レース翌日の足指の状況。
脚全体が若干腫れているので分かりにくいが、人指し指の爪、残念ながら両方とも死んでいる。多分これからどんどん黒ずんできて、最終的には剥がれて新しい爪に入れ替わることだろう。
途中の疲労で、何度も躓いて木の根っ子や岩に脚をぶつけたことも大きいが、何と言っても最終10kのまるで別人のような下り坂スパートで足が靴の先にずっと押し付けられていたためだと思う。直前に靴の紐をしっかり結びなおせば防げたかもしれないが、まあ自己ベストの代償と思えば、この程度はお安いものだろう。



【アイテム】


山岳耐久レースの主な携行品は、次のようなものだろうか。
 ①雨具(防寒を兼ねた、出来るだけ軽いもの)
 ②給水(絶対必需品、ハセツネの場合原則2L以上が義務)
 ③補給食(これも絶対必要、補給ジェル、食事、糖分・アミノ酸等のサプリ等)
 ④ライト(絶対必要、必ず夜走になるので)


その他防寒着等準備し始めるときりがないが、自分の経験では、ハセツネの時期の気候なら(動いてさえいれば)アームカバーさえあれば十分と思っている。

もちろん、携行品の重量は少しでも軽いにこしたことはない。なので、各種のトレラン用サプリ製品は、少ない量で多くのカロリーが補給できるように工夫されたものばかりだ。



ダイアローグ・ドキュメント


さて、その中で、写真の2点は今回特に貢献度の大きかったアイテム。
左は、エアーサロンパスの小型缶。意外にもこれは市販されていなくて、マラソン大会のブース等で試供品として配布されているものを、めざとく貰って、せこくストックしておいたものだ。
概ね両脚全体に2回吹きかけると空になる。
しかし今回これが、中盤疲労しきった脚の回復に役立った。


さらに右側。会場のアートスポーツブースで、メーカーが直接販促をしていたのを、当日スタート直前に購入したもの。
“MAGMA”、これまで全く知らなかった。新製品のようだ。
やはり、持久系スポーツの補給用に開発されたもので、ミネラルやアミノ酸等いろいろな成分がバランスよく配合されているとのことだった。


しかし、これだけなら、多分買わなかっただろう。
買う気になったのは、営業マンと色々話をするうちに、「天然成分しか使っていないので、運動中の胃粘膜保護効果がある」と、彼がポロッと漏らしたからだ。その瞬間、胃に不安を抱えていた自分は、即決で購入を決断。


とにかく、ロングトレランやウルトラは、胃をやられやすい。途中での栄養補給が必須なのに、食べた後も休まずに走るからだ。
ハセツネも中盤以降になると、前後のランナーから、しきりにげっぷの音が聞こえてくる。コース横で吐いている人もよく見かける。それくらい、皆胃の調子を崩しているのだ。
今回こいつを断続的に計4回補給して、そのたびに胃の調子が気にならなくなるのを実感した。終盤の「復活」につながる栄養補給効果もあったと思う。


携行品、あまりお金をかけても仕方ないが、最低限の情報収集は、やはり必要かもしれない。



ダイアローグ・ドキュメント
※練習走の時、大岳山頂からの富士山方面の眺望

完遂!/奥多摩ロングトレラン


9月14日(土)、ハセツネ本番前の最後のチャンス。

奥多摩ロングトレラン52k(浅間峠~武蔵五日市)、やり遂げた。
もうすべて出し切った感じ。疲労度120%で、なにも残っていない。なんとか家までたどり着いた。



ダイアローグ・ドキュメント

写真は、コース最後のピーク、大岳山頂に到達した時に開けた空。
浅間峠をスタート後すでに7時間ほど走り続け、間もなく夕暮れという頃。雨上がりの空気が澄んでいて、空が本当に青かった。
トレラン、99%は単に苦しいだけだが、この瞬間だけは残り1%。やっていて、本当に良かったと思った。西方に残った雨雲の上に、富士の頂もしっかりと見えた。



朝8時、いつものように練習仲間のTozukayaさんと待ち合わせ。
50kロング走は、さらにバスで上川乗へ行き、そこから尾根筋の登って第1CPの浅間峠から走り始める。

晴れているのに台風の湿気が入り蒸し暑い。午後からはにわか雨の予報なので、できるだけ早く進みたい。
でも、焦りは禁物。50k先の自分を予測してじっくり進むことが、練習なので。


かなり順調に進んで2時間ほどで三頭山到達。その手前から、雨がやや強くなってきた。
しかし、長く降り続くことなく、補給のため都民の森駐車場に降りたときには、もう小康状態に。
そこには、民芸品店を兼ねた小さな食堂があり、時々ここで蕎麦を食べる。
この日は山菜蕎麦を注文。それに加えて、磯部餅を買います。あ、もちろんコーラも忘れずに。



ダイアローグ・ドキュメント


ただ残念なことに、北海道マラソン、それに先週の富士登山の疲労が残るTozukayaさんは、ここで離脱を決断。以降単独走になった。まだ、行程は30k以上ある。



ダイアローグ・ドキュメント


前途に自信のないまま進む。1400Mの難敵・御前山はまずます順調に攻略。そのくだり斜面、雨で泥濘がひどかったものの、40分程度で大ダワまでクリアー、さらに1時間弱で最後のピーク・大岳山到達。
その頂からの空の青さには、本当に感動。



ダイアローグ・ドキュメント


ダイアローグ・ドキュメント



ダイアローグ・ドキュメント



ダイアローグ・ドキュメント


一応この後の20kはほとんど下るのみ。
綾広の滝の冷たい水で顔を洗ってリフレッシュ。御岳神社の自販機では「7アップ」で補給。
その辺りで、いよいよヘッドライト装着して夜走に入る。
ただ1箇所、日の出山への登りはちときつい。
でも、誰もいない山頂で、この写真の夜景を独り占めにできれば、満足しないわけにはいかない。




ダイアローグ・ドキュメント


さあ、最後の金比羅尾根の下り10k。

暗い。孤独だ。
加えて、本当に怖い。


レースの時は前後にランナーがいてライトが見えるが、今は正真正銘の真っ暗闇。
虫の音、思い出したような鳥の囀り以外は、自分の足音が山の斜面に反射するカチカチという音だけ。
世界に未知の現象があるなら、こういう時に遭遇しないで、一体どこで遭うというのか。
恐怖を振り払うにはひたすら走るしかない。それでも、疲労困憊の足では、登りはやっぱり歩く。そして、走る。


走って移動するライトに応じて、木々や草の陰も動き、時々それが生き物のように思える。
何のためにこんなことをしてるんだろう。やって何になるのか…。
朝から走り始めてもう9時間以上。普通の登山者なら、完全に遭難状態。捜索隊が出ている。
幾重にも連なる曲がりくねったトレイル。昼間は何度も走っている道なのに、ああもうここか、と思えば、なんだまだここだったかの繰り返し。疲労した心理は、都合のいいように解釈するものの、距離は走っただけしか縮まらない。当たり前だ。


そうして漸く残り2kポイントの金比羅神社分岐を曲がると、この日初めて、ひとりのランナーを抜いた。装備から、まだ走り始めて間もない人のように見える。軽く挨拶してお先に。金比羅の硬い斜面の衝撃を、ズシズシ膝で吸収しながら急いだ。
誰もいないはずのゴール、五日市会館前には、何かのイベントを終えたらしい高校生がたむろしていた。


完全に出し切った。
結果、昼食休憩を除く所要時間、ほぼ9時間。
これに浅間峠前の予想所要時間・4時間を加えると、理屈上は、13時間程度で本番を走りきれる可能性がある。もちろん、それは、理屈上のこと。
しかし、例え1%でも、その可能性に賭けて、来月の本番臨んでみるか


猛暑の間隙をついてin奥多摩


ありがたいことに、東京地方は一週間ほど気温低めの日々が続いていた先週。
そんな日曜日8/4は、迷わずトレラン練習。


ダイアローグ・ドキュメント


いつものように、武蔵五日市でAさんと待ち合わせ、ハセツネコースに入るべく清流・秋川を渡る。
鮎の友釣りが解禁になっているようで、なんとものどかだ。


こんな日は釣りでもしていればいいものを、何が悲しくてきつい山道を走るのか?

今回は気合を入れて、奥地・数馬の里までの約35kの目標で臨む。ところが、走り出した途端やはり蒸し暑く滝汗状態。加えて、Aさんの体調不良もあり、目標はどんどんしぼんでいき、結局1ヶ月前と同じ浅間峠までの25kで折り合いをつけてしまいまった。それでも、かなりのきつさだ。


ダイアローグ・ドキュメント

 ※醍醐丸手前の、登りに続く森


ダイアローグ・ドキュメント

 ※三国峠から、山梨方面


もう8月なのに、いかんいかん、何をしているのか…
次回こそは、超ロング走トレーニング、必ずやるぞ!



5月以来計4回山を走り、特段進歩はないものの、変化と言えば、直後の筋肉痛がまったくないことぐらいか

ところで、一昨日のトレラン、ひとつラッキーなことがあった。

ランニング中、一組の若者ランナーズとずっと抜きつ抜かれつで一緒だったのだが、最後の浅間峠でもたまたま合流。


彼らは、トレランキャリアはあまりないらしいが、走り方体つきから見て、とても速い感じ。でも、この日は「試走」ということで、途中たっぷり休憩を取りながら、ゆっくり走っていたようだ。案の定話を聞いてみると、そのうちの一人は、昨年のハセツネを12時間で完走したそうである。


で、浅間峠下の上川乗バス停にマイカーを置いているとのことで、「良かったら一緒にいかがですか?」と言ってくれる。次のバスは1時間以上待ち。
そんなお言葉に遠慮するはずもなく、すっかり甘え、おまけに途中日帰り温泉瀬音の湯によって温泉を浴びる贅沢。タクシーであれば、優に5,000円以上の道のりを、ランニングトークで盛り上がり、すっかり楽しませていただいた。


ダイアローグ・ドキュメント



昨年ハセツネに出た彼は、今年は信越五岳出場とのことでハセツネはお休み、もう一方の彼はハセツネ初出場だそうだ。


年は多分30歳前後。とても感じの良いさわやかな二人だった。
日本の若者も、まだ捨てたものではないな。


炎暑ランと『シャトー・ルージュ』


7月5日(土)、梅雨が明け、ついに魔界のような夏がやってきた。
最高予想35度、湿度MAX!


しかし、ここでひるんでは男ではない。
東京一の猛暑エリア・練馬の森で、100分LSD(約16.5k)をやった。



ダイアローグ・ドキュメント


熱中症対策、給水背負って。
それでも、1周目からすでに呼吸が苦しい。尋常な暑さではない。先週のトレイルより10度も高いので、当然だ。
1時間も走れば、意識は朦朧。周りには、人気がなくなってくる。最後は、暑さを通り越して悪寒が…、極めて危険な状態だった。でも、ここからが勝負、また頑張るしかない。



ダイアローグ・ドキュメント


というわけで、週末は炎暑の中気合を入れてロング走したものの、それは1日だけのこと。
この過酷な天候がこの後1週間、1ヶ月つづくかと思うと、本当に気が遠くなる。

そんな日の午後は、仕事も難しい本も、人付き合いも全部放り出して、こんな本を読んでみるのもいいかもしれない。



ダイアローグ・ドキュメント


『シャトー・ルージュ』、その筋の大家・渡辺淳一の比較的新しい小説。

教育の関係で、日本人が最も苦手な分野を3つ挙げるとすれば、①軍事、②宗教、③性だろうか。
言うまでもなく、渡辺は、③の「苦手克服」を自らのライフワークに位置づけているような作家で、もちろん、この小説も、そういう内容だ。


とはいえ、厳密に言えば③にも、ふたつの側面がある。
 ③-1:結婚~出産~育児に至る、いわば表の面
 ③-2:それとは別に、男女の関係(結びつき、あるいは対立)、コミュニケーション(相互理解、もしくは葛藤)、快楽の体験、快楽の創出、その障害、それらを通じた人間の成長……、といった裏の面
もちろん、渡辺の小説のテーマは、③-2限定。
そこを、とことんまでしつこく、自らの専門分野である医学知識から通俗的体験に至るまでを総動員して、ねちねちと描き続ける。ただ、「その場面」は意外に少なく、決して卑猥ではない。


※以下、若干ネタばれあり。


あくまで簡単に紹介すれば、「シャトー・ルージュ」とは、フランスの地方にある古城の俗称で、そこには、この小説の主な舞台となる、女性の性的嗜好の改造を試みる秘密組織がある。
こう書くと、何か荒唐無稽な話のようだが、決してそうではなく、主人公は日本人の若い医師で、自らの性的不能と、美しくはあるが、お嬢さん育ちで我儘な妻とのセックスレスな関係に深く悩んでいる。


そこで、大金をはたいて、しかも「犯罪」という大きなリスクを背負ってまで、妻が自分に性的になびくようにするため、秘密組織に拉致監禁させ、性的嗜好の改造を依頼するわけだ。
もっとも、秘密組織は「拉致監禁」といっても、別に乱暴狼藉を働く暴力組織とは程遠く、むしろ紳士の集団。それが、主人公の大きな「後悔」につながっていく。


毎日のように組織から送られてくる妻の「調教ビデオ」には、性にまったく無関心に思えた妻がフランス人達と快楽に耽り、自ら積極的に求めさえする姿が余すところなく映っている。それを見て、絶望と敗北感に苛まれる毎日。
そんな後悔の日々を経て、妻は無事自分の手元に戻ってはくるのだが……。


もっとも、その秘密組織の「調教」、さほどのことではないが…。
とはいえ、それを通じて渡辺が描きたかったもの。
日常の埋没する中で、エリート達ですらあまり深く考えたことのない人間の「性」の構造と原理。それが、例えば夫婦不和という、自らの力ではどうしようもない出来事に直面すると、誰であれ途轍もなく大きな問題として精神を激しく抑圧し始める。そのときになって、自分の無力さを悟ることになってもいいのか?
日常の裏側にある闇からの、そんな問いかけかもしれない。


トレラン練習in奥多摩


6/29(土)、ほぼ1ヶ月ぶりのトレラン練習in奥多摩に行ってきた。
予報が悪かったが、天候はなんとか持った。気温がそこそこなのも、ありがたいところ。


午前8時武蔵五日市集合。早速走りはじめる。
コース選択はやや迷ったが、気温も考慮し、ここは思い切って最も苦しいハセツネ序盤コースへ。
奥多摩エリアと高尾エリアの境界を辿り、笹尾根中央部の浅間峠(ハセツネ第1CP)までの約25k。
練習不足のこの時期、当然というべきか、猛烈に苦しかった。


ダイアローグ・ドキュメント



特に市道分岐(約12kポイント)手前の数キロが、鋭いアップダウンの連続でいつもながらほんとにきつい。ずっとアップダウンで、ほとんど前に進まないのだ。トッキリ場から市道分岐まで、多分50分くらい要している。
その影響で、例によって醍醐丸(15kポイント)を過ぎると早速ガス欠ぎみになりはじめ、同行のTozukayaさんに引っ張ってもらって、どうにかこうにか浅間峠にたどり着いた。
4時間半くらい、かかった。


ダイアローグ・ドキュメント

 ※醍醐丸手前の登り


10月の本番を満足の行くレースにするには、このあと相当な鍛錬が必要だ…


ダイアローグ・ドキュメント
 ※三国峠の眺望




1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>