数年ぶりにギターを握った。
あれは何年前だったろうか、少年剣道の遠征先での飲み代にするため当時所有していたギブソンのSGと、エピフォンのレスポールを「なんでもリサイクル・ビックバン」で売っぱらった。その金は9万くらいになったけど、あっという間にビールやワインに姿を変え、俺の肝臓の肥やしとなった。
俺は中1の時に友達が貸してくれたイエモンのCDを聴いて以来、影ながらギター少年の道を歩んできた。影ながらというのはその言葉通りで未だかつて人前で演奏をしたことはない。
結婚する少し前に、当時の彼女(今の嫁さん)と妹とバンドのようなものを組んでいたこともあるが、結局人前で演奏することはなかった。というか、そのレベルまで至らなかった。
そのレベルってどのレベルだよ、と今となれば思う。「ギター上手くなるのを待ってたらステージに上がる頃にはおじいちゃんになっちゃうよ」と言ったのは誰だっけ?KEN YOKOYAMAだったっけ。
結局俺には行動力がなかったんだなと思う。そして、その程度の熱量だったんだとも。あの時、もう30間近だったし、勢いに任せてどこまでも突っ走っていくにはちょっと年を取り過ぎてたかなとか考えたこともあったけど、そうじゃなくて。
単純に俺はそういうタイプじゃなかった。めちゃくちゃなものに憧れながらも、心の中では安定を求めていた。
でもさ、よく考えてみたらまだ遅くはなくない?そんな自分を変えるのに。
あとひと月もしないうち俺は40になるけど、この人生は続いていくんだから。
若い頃に尻込みして行動できなかったことが、オッサンになった今ならできるかもよ。そう思うと思わずネックを握る左手にぐっと力が入った。
そして改めて気付いたのは、歌もギターも自分には全く才能がない ということだ。