基幹相談支援センターでは、1/13(土)に釧路市生涯学習センター(まなぼっと)にて、『人を大切にする相談支援のスキルアップ研修』を開催、約100名の方に参加して頂きました。
~第1部~基調講演
講演:人とつながる力
~障がい者の主訴に寄り添う相談支援のスキルアップ~
講師:岡西 博一氏
社会福祉法人 常成福祉会 丹沢自律生活センター生活福祉部 部長
かながわ障がいケアマネジメント従事者ネットワーク 理事長
第1部では、相談支援の基本的な視点から、アセスメントの大切さについて学びました。
岡西さんの講演の冒頭では、「『寄り添う支援』のためには、本人を知ることは大切。でも、まずは自分に対する自己理解…『相手』の価値観を受け入れる『自分』の価値観を持ちましょう」とお話があり、印象的でした。
本人を知り、本人に寄り添う支援を展開するためのアセスメントとは?
その人がどんな人でどんな支援を必要としているのか…本人や家族の意向、生活歴、関係機関からの情報収集はもちろん、大切なことは本人の強みを見出す(ストレングス視点)ことなど、複数の視点で情報を整理・分析することが必要です。
そこで、神奈川県では、本人を知るためのツールとして、
『意思決定支援に関わる手掛かり・ヒアリングシート』を活用しています。
本人が表出・表現した表情、感情、行動から読み取れる意思について記録・蓄積し、支援者が本人の意思を読み取ったり推定したりする際に記載するツールです。
神奈川県は支援者個人だけではなく、チームで取り組む事ことで、障がいのある本人中心の障がいケアマネジメントを実践しています。
岡西さんの話では、神奈川で実践をしている話を基に、
見立てを持った根拠ある支援をどう行うか、本人中心支援について学ぶ機会となりました。
第2部~シンポジウム「ライフステージに合わせた意思決定支援とは?」
釧路地域の事例発表、講師・発表者によるディスカッション
・コーディネーター:柿沼 弘昭
(釧路市障がい者基幹相談支援センター)
・パネリスト:岡西 博一 氏
(かながわ障がいケアマネジメント従事者ネットワーク理事長)
葛野 泰江 氏(さぽーとるーむ のおと)
早川 博司 氏(地域生活支援センター ハート釧路)
打川 文郎 氏(丹頂の園 特定相談支援事業所 りりーふ)
箭原 純子 氏(釧路市東部北地域包括支援センター)
第2部では、『ライフステージ』をテーマに
①幼児期・学齢期②青年期③壮年期から、本人の障がい特性や社会的背景や環境などをアセスメントし、どのように自己決定につなげたか…相談支援専門員としてどのような支援を行ったか、事例発表がありました。
釧路地域で活躍している相談支援専門員から、支援方法や苦労話、発表者が支援で大切にしている想いなどの本音もあり、現場の声を聴けて大変参考になりましたと感想をいただきました。
その後の、ディスカッションでは、高齢分野のパネリストとして東部北地域包括支援センターの箭原所長にも登壇して頂き、各ライフステージの支援の共通点や意思決定における寄り添いの支援などを交えて、お話をいただきました。
アンケートで頂いた講師への質問 (回答:岡西氏)
1. 神奈川における他職種連携について、どのように行っているのか?
神奈川県は33市町村(政令指定都市3市を含む)あり、それぞれ地域事情や状況が異なります。その為、個人としての見解になりますが、他職種と連携する理由として、「私自身」の専門性や知識、技術、ネットワーク等では支援対象者のニーズを満たす支援を提供することが難しいという点を挙げます。「私自身」というのは、「所属する事業所」や「職種」に言い換えることもできると思います。
今回の研修では、本人の思いに寄り添うこと、意思決定支援等がテーマになっていましたが、この具体的実践には他職種との連携(チームアプローチ)を欠かすことはできないと考えています。その為、他職種連携が必要だと感じたら、その目的を明確にすることからはじめ、目的を達成できるメンバー(他職種)に声をかけて協力を求めるという至ってシンプルではありますが基本的な動きになるのだと思います。研修の冒頭でお話をさせていただいた「自分を知り、相手を知る」。この事は他職種連携にも通じるものと思います。
相談支援の駆け出しの頃、連携が上手くできないことも多くありました(今も上手くいかない時はありますが)。そのような経験から私は、「誰のために」・「何のために」・「どのような力を」・「あなたに貸して欲しいのか」ということを念頭に置いて他職種とのつながりを持たせていただいています。
2. 学校に対する困り感を感じている児童の保護者(母親)が多く、相談・支援が難しい。何か良いアドバイスはありますか?
「困り感」を保護者の思いや考えと学校側とのズレとして捉えた場合、児童や保護者とかかわる相談支援専門員や児童発達支援管理責任者等が、児童及び保護者のニーズを一緒に整理していくことが大切だと考えます(中立的視点や第三者的視点の意味も含めて)。子どもの成長や将来に対する期待や不安に関する思いを簡単に整理することはできず、時間を要することも多いかと思います。今回の研修でも実践報告の中で3名の方々が児童期に限らず、支援者が思いに寄り添うことや焦らずに待つことなど貴重な発表をしていただきました。
具体的なアドバイスは、個々に異なるので決定打はありませんが、「他職種連携」の質問でお伝えした考え方が力になってくれるものと思います。
※幼児期・学齢期で事例発表を頂いた葛野氏からも回答を頂きました。
まずは保護者が先生ときちんと話せているのか確認します。話せていなければまずは話をするように進めます。先生と話はしているが、うまく対応できていないときには学校全体の話になるように考えます。保護者がコーディネーターや教頭等に話しができるのが一番かと思います。学校を含めて支援会議等になれば、相談支援や必要に応じて医療や幼児期の支援者の参加を提案することもあります。
でも思い通りにならないことがほとんどで、保護者が声を出せなかったり、出しても取り合ってもらえないことも多いです。場合によっては、私から学校に保護者の気持ちを伝えることもありますが、相談が前面に立つとあまりうまくいかないことが多いように感じます。学校へのアプローチは保護者の力がとても大きいです。
あとは保護者に学校への考え方や付き合い方をアドバイスすることもあります。
学校は何のために行くのか、本当に行かなければいけないのか、優先順位は何か、親ができることはないか、先生にどう伝えたらいいかなどなどです。
それにしても学校との連携は難しいです。私も教えてほしいです。
3. 岡西さんが福祉の仕事をしている中で、“一番の喜び”はどんなことですか?
難しい質問ですね…笑。いろいろな事が思い浮かびますが、やっぱり本人さんの笑顔、その時間や場面を共有できたときに嬉しさを強く感じます。
4. 今まで関わってきたケースで、一番心に残るケース(支援)はありますか?
特別支援学校に通う高等部2年生のAさんです。ご家族に大切にされながら育ってきた方ですが、障がいのある自分を受け止められず、葛藤されていた時期に出会いました。自分に自信が持てず、親御さんにも自分の思いを伝えることに遠慮してしまう…。でもAさんにはなりたい職業がありました。なれるか、なれないかではなく、なりたい職業。Aさんからその思いを教えていただいた後、学校の先生にも協力してもらいながら1年程の時間をかけて一緒に考え、いくつかの経験を重ねながら伴走しました。Aさんの気持ちの中で葛藤が無くなったわけではありませんが、親御さんに夢を伝えることをAさんは決めました。いよいよその当日。Aさんはとても緊張していましたし、私も緊張していたことを思い出します。それでもしっかりと自分の言葉で思いを伝えたAさん。その表情や姿を今も鮮明に覚えていますし、大切な瞬間に立ち会えたことは私にとって生涯忘れることのできない時間になりました。この仕事をこれからも続けていこうと思わせていただいた方でもあります。
5. めげずに続けていけるコツはありますか?
めげる時と言うか落ち込むことはたくさんあります。でも踏ん張れるのは、自分がこの仕事をしようと決めた十代(相当昔ですが)の頃の思い、これまで出会った障がいのある方々やそのご家族等から学ばせていただいた多くのこと、そして仕事や活動を通じて出会った仲間の支え(叱咤激励!?)があるからだろうと感じています。感謝しかありません。
まだまだ知らないことばかりで、発展途上の自分であることを自覚しているので、めげた時もまた踏ん張って前に進みたいと思います。
そうそう、めげた時や落ち込んだ時は素直にそれを吐き出して自分自身で認めてあげると気持ちが自然とすっきりしますよ。ぜひお試しください。
お問い合わせ先
□障がい者基幹相談支援センター(釧路のぞみ協会 自立センター 内)
□住所 釧路市双葉町17番10号
□電話 0154-65-7380
★当日の資料が若干数ございますので、ご希望の方はご連絡ください。