風は空は、すっかり秋らしくなったのに。うちはなぜこんなに暑いのか…
『七色いんこ』という漫画があります。作者はあの手塚治虫で、少年チャンピオンで連載されていました。
ブックオフで見つけたのだけど、なんと1冊105円で全巻そろえることができた。そんなに状態が悪いわけではないけれど、ブックオフでは値がつかない。アマゾンを見たら、7巻セットで一番安いのが3,480円。735円で全巻そろった。ヤフオクとかならもっと安いのだろうか、でも1冊105円は最安だろうな
フフ
『七色いんこ』の主人公、七色いんこは、代役専門で舞台の役者を引き受け、幕間に金持ちの観客の金品を盗む泥棒。
タイトルのほとんどが実際の芝居や小説からとられていて、いんこが代役をする舞台の演目だったり、脚本が話全体のストーリーのモチーフになっていたりする。第一話は「ハムレット」で、ほかにも「南総里見八犬伝」とか、「棒になった男」とか、「ピーターパン」とか、古今東西の有名なものばかり。冒頭には必ずモチーフとなった演劇の解説が付けられている。
ここからはwikipediaより引用
代役専門の泥棒役者でギャラを貰わない代わりにその劇場での盗みを黙認させる。優れた変装と声色の技術を持っており、老若男女を問わず変装できる。その演技力は有名演出家や一流の女優を唸らせるほどだが、本人に言わせると「モノマネがうまい素人役者、そしてドロボー」らしい。最近は「いんこのホンネ」という幻覚に悩まされることがある。
盗みをする理由は本人曰く、かつて演劇が大道芸だった頃は見物人のうち金持ちが気前よくお金を払い、貧乏人はお金を払わなくても黙認されていた、かつての美習を踏襲したという事だが、どうにも言い訳くさく、実際には演劇とは全く関係無く盗みをする場合も多い(作中では何らかの事情で結局は失敗、もしくはいんこ自身が盗みをやめることが多い)。
演技をする時以外は青みがかった緑色のおかっぱのカツラ とサングラスで変装しているがこれはカツラの裏に変装道具を隠しているためである。また、有名な劇場などには必ずと言っていいほど変装道具を隠している。お気に入りのコーヒーショップがあり、いつもそこでコーヒーを飲んだり漫画を読んだりしてくつろいでいる。
出演の依頼をするには「新宿区私書箱5826432」に速達で手紙を郵送すること(第1話参照)。
まあつまりこんな感じです。
最終巻「終幕」という話で、いんこを追う刑事・千里万里子が読む「いんこのつぶやき」という本人の追想録で、いんこの正体や代役専門で演技をしている理由やら、すべてが明かされる。まさに終幕。ここからはかなりネタバレですが、私が好きなのは、ピエロのトミーの言ったセリフ。
「今こそやつに復しゅうしてやるんだ」「役者のやりかたでな!」
ベトナム戦争である新兵器を使わされ、心ならずも関係のない女や子供まで皆殺しにしてしまったトミーは、ベトナムの遺族たちの恨みの標的にされ、戦争が終わった後でも命を狙われている。顔を隠しながら怯えながら生きていかなくてはならない人生。すべての責任は、新兵器を作ったバーミンガムにある!しかし、とうのバーミンガムはまだ金集めをしながらのうのうと生きている。そこでトミーは、ピエロになって、劇場の観客にバーミンガムの悪事を「ピエロらしく」伝えることで復讐した。
この、ピエロのトミーはいんこの師匠であり、いんこが代役専門の泥棒役者になるきっかけを与えた人物。バーミンガムへの復讐劇は、「終幕」での、いんこの命をかけた名演技の理由でもある。いんこも「役者らしく」父に復讐をする。
いんこの痛快な泥棒劇ももちろん見どころだけど、一番の見どころは「終幕」にある。「目には目を」という復讐の、いかに愚かしいことか。手塚治虫は、そういうことを言いたかったのかも。
2000年に、稲垣五郎主演で舞台化したらしい。稲垣五郎か…今だったら、誰がやるだろう。松山ケンイチあたりなんか、いいんじゃないかしら。
少年漫画らしい、ギャグを含みつつ大きなテーマの話。とても面白く読みました。ジャンルとしては、何になるだろうか、表紙には「演劇ロマンコミックス」とある。そういえば少年漫画で主人公が役者(いんこは泥棒だけど)という話は、これが初めてだった。演劇というものを物語の柱にすると、どうしても少年漫画的展開は難しいのかもしれない。演劇とか演技とかの漫画だと「ガラスの仮面」が思い出されるが、それとは全く違った話。ロマンというか、サスペンスといってもいいような感じ。演劇という、少年漫画ではあまり開拓されていない(ようにおもわれる)ジャンルはいいんじゃないのこれ。
しかし、漫画で演技する様子を描くというのは難しそうだ。特に、「うまい演技」というのはどう表現するのか。ものすごく下手な演技との比較手法が一番手っ取り早い気がするが、そういえば「七色いんこ」にはあまり下手な役者は出てこない。普通の役者は出てくる。「七色いんこ」では観客の様子によって表現されている、気がする。これは、漫画でいい音楽を表現するのとおんなじだ。演技も音楽も、可視的に表現されているけれども奥の奥に見えない表現があって、それは文字にする方がよっぽど簡単に思える。それを絵で表現するのは、やっぱり難しいのだろうか。演劇・音楽といわず、どんなことにも当てはまるのだけど。
おもしろいよねー演劇も漫画も。
追記
第一話は「ハムレット」で、「終幕」で明かされた復讐とか、全体のモチーフがハムレットだったのかもしれない。いんこがどうなったかは明かされずご想像にお任せしますという形になったが、死屍累々は想像したくないな…