ただ見守るだけの中部選手権 | モトクロスがある生活

モトクロスがある生活

1989年生まれの河村広志が日々の日常とモトクロスがある生活を赤裸々に綴ります。

週末はいなべモータースポーツランドで中部選手権がありました。

沖縄から福島ファミリー6人全員が来本土。


僕はここ数年、シーズンオフになると沖縄に招待して頂いています。


沖縄にはMFJ主催のシリーズ戦が現状ありません。


しかしコース主催のシリーズ戦が毎年開催されており、子供達や大人達が熱いレースを繰り広げています。



そこで腕を磨いたライダーが本土のレースに出てみたいと思うのは当然の流れかもしれません。




今回は福島 兄のゆうが と 弟のふみや がジュニアクラスに参戦。



バイクは持って来られないので、こっちにあるバイクを手配。



来る前から既に気合い満点の様子がうかがえる。




土曜日は若干のマディコンディションの中2人は事前練習走行をはじめます。




初めての環境。

初めてのコース。

初めてのバイク。



モトクロスという同じモータースポーツなのに全てが初めて。



同じスポーツだからこそ普段とのギャップを感じやすい。



普段している事だからこそ、ちょっとの違いがとても大きいものに感じる。




僕は2人の走りやレースの結果なんて最初から気にしていませんでした。



そんな事よりも、なるべく自分達の思った通りの走りが出来るようにさせてあげたかった。



僕はバイクの走りに関しては元々そんなにアドバイス出来るほどのライダーではないけれど、それなりに全日本や海外でのレース経験だけはあります。




そこで感じた気持ちや感覚は間違いなく僕が体感したもの。



レースで速く走るという事は、第一に普段の練習等で培った自分の力を出すという事。



この自分の力っていうのを全日本という舞台で発揮する事の難しさ。



フィリピンでちゃんと整備が行き届いていないバイクでいきなりレースをする事の意味。


マレーシアの体感した事のない暑さと湿度の中、アホみたいにデカいジャンプがあるコースでレースをする事。


モンゴルでチェーンアジャスターが折れているのをわかった上で並ぶスタートライン。



そんな今となっては笑えるけど、当時の現場では全部苦笑い120%で乗り切ってきた経験が一応ある。




まずやってしまいがちなのが、結果を出す事に執着してしまう事。



ファクトリーチームがズラリと揃う世界選手権。
そんな最高の環境でレースが出来るのにも関わらず、コンスタントにパフォーマンスを発揮出来るライダーはごく僅かです。


それでも結果を出さなければいけない世界。


考えただけでお家のソファでコーヒー飲みながら漫画読んでいたい気持ちになる。



まずは無事に走りきる事。

もう絶対これが一番大事。




あとは少しずつ、全部じゃなくてもいいから自分の走りをしていく。



結果なんて二の次三の次でいい。



良いか悪いかは置いといて、結果なんて自分の走りをしたら後から勝手について来るもの。



それが自分の結果。


それ以上を出そうとすると、これまた痛い目に遭う事もこれまで沢山ありました。



日本での自分の走りはこんなんじゃないんだー!アクセルガバー!

バィイーーーン!!

ってフィリピン人と真横になりながら吹っ飛んだ。





話は戻って事前練習のお昼過ぎ。



もうコースにも慣れてきたかなぁという頃。


僕がウトウトお昼寝していたらお母さんの声が


「ひろしさん… ゆうが やってしまったかもしれません…」


目が覚める覚めないの間にコースに目を持っていくと、気合いの入り方が強かった兄のゆうががコース上でうずくまってる。


残念ながら骨折しており、次の日のレース出場はなりませんでした。


悔しい事なんて周りの誰もがわかっていたから掛ける言葉もない。



そうなってくると弟のふみやが今度は心配になってくる。


でも何となーくだけど、僕はふみやは放っておいてもマイペースにこなしていくタイプに見えました。



僕と同じ、弟特有の洞察力。



あ、これやったら痛い目見るんだな。


あ、これやったらお母さんに怒られるんだな。


っていうのを静かに考えているのです。



翌日のレース本番。


こんな多い台数でのスタートなんて初めてなはず。


それでもふみやはスルリと1コーナーを抜けて、決して派手ではないけども、淡々と走って前へ前へと進んでいきました。



残念な事に序盤でシフトペダルが破損してしまい、思うようには走れなかった模様。


それでも頑張って走っていたふみや。


レース後


いい走りだったよ!すごいすごい!



と僕。



ふみやが照れ笑いしながら



結果が残せなくてすみません…





もうね。誰にそんな事言えって言われたんだと本気で疑ったわ!



どこでそんな言葉習ったんだと!





いいかいふみや。

まず僕にそんな事を言う必要はないよ。

今までレースに出てお父さんお母さんに結果の事で叱られたことはある?


ないでしょ。



お父さんもお母さんも、ふみやがレースで勝って喜ぶところは見たいと思うよ。


でもね、それはふみやがレースに勝ったから嬉しいんじゃなくてね、ふみやが喜んでるところを見るのが嬉しいんだよ。


だから結果なんて気にしないで、今ふみやが出来る走りが出来ればそれでじゅうぶんなんだよ。




こんなカッコよくは無かったし、ちゃんと言えてなかったと思うけど、僕の口から自然とペラペラこんな感じのわかったような言葉が溢れてきました。



だって本当にそう思う。




結果が出なくて謝らなきゃいけないなら僕は毎戦土下座をしなけりゃいけません。

もうオデコぼっこぼこ。



確かにこの先結果が出なければいけない世界に行くかもしれない。


でもその前にもっともっと自分の根っこにある気持ちを大事にしてほしいですワタシわ。




ヒート2はマシンも直ってコースもドライコンディション。


ふみやは再び淡々と走り出します。


さっきとは違って何となく精彩を欠いた走り。



レース後



自分の走り出来た?



俯きながら首を横に振るふみや。



でもただ一言。




めっちゃ悔しいぃーー!!





おとなしい性格だと思ってたふみやからその言葉が出た時は思わず笑ってしまったし、同時に嬉しかった。


それなんだよなー。


その悔しい体感が遠回りに思えるけど、実は一番近道な気がします。



兄のゆうがもただ黙ってレースを見学するのは想像を絶する悔しさだったろうけど、それがいつか自分の糧になる事を体感するんだろうなぁ。



僕の役割は車の運転手くらいしかなかったけど、ずっとそばで見ていていろんな事思っていました。


お父さんお母さん。

本当にお疲れ様でした。



僕が彼らと同じ歳の頃。

約一ヶ月くらい沖縄で色んな人たちの家に居候させてもらっていた期間がありました。


その時のご恩はとても返せるものではないけれど、少しでも力になれていれば僕は嬉しいです。



全日程後


お父さんが兄弟たちに言いました。



いいなあ。お前ら。

こんな歳でこんな経験して。




いいなあー!!めっちゃ羨ましい!!






っていう心の底からの本心が今回のハイライトでした。


僕は何にもしないでただ見守るだけだけど、またおいでよー!

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