2021年3月某日





「ゆう、5月辞めるって聞きましたぁ?」



いつもどおり、あきちゃんが



唐突に私に聞いてきた。





「え、なんの話ですか…」



「聞いてないんですかっ?辞めるって」








「ううん…」









あきちゃんが、それに対してまた



お怒りのお言葉をお吐きになられてたけど



私は頭が心臓になったみたいに



ガンガンしてた。








「それは、決定?笑」



(また、辞める辞める詐欺やろ?)



「違いますよぉー!!



  もう、マネージャーに言ったらしい」



「言ったんや…」



「マネージャーも、もう止めるの



  やめたんでしょうねぇー



  あいつ、何回も言うから」







私って、ほんまにポーカーフェイスうまい。



なんてこと無い。



けど、やっぱり"ちょっとショック〜"



という、微妙な雰囲気は出した真顔








ゆうくんのシフトは



この頃、半月に3回程度になってたし



お店もコロナ禍でガラガラ



今にも閉店しそうな雰囲気を漂わせて



お客様も



「この店、ヤバイんちゃう?」



と、聞いてきたほど。








それでも、かろうじて



私とあきちゃんはメインのメンバーに



してくれていた。



私が朝から夕方



あきちゃんが夕方から夜にかけての



二人がメインでいれば



後はちょこちょこ入ってくれる人が



いたらOKみたいな…カオスな状態。








そんなだから、



私は結構、意に反してあきちゃんと



よく話していたから



あきちゃんは、私によく



ゆうくんの事を話してきた。



この辞める話も、まだ社員しか知らなくて



「たぶん、ゆう、nomさんに言ってくるでしょ」



と、言ってきた。









言ってきたら、



私はなんて言おうか…



「辞めんといてぇー!



  置いてかないでぇー!」



なのか?







実際、この時もLINEは未読だったし



プライベートのゆうくんのことは



何も知らない。



あきちゃんが知らない話を



私が知ってることもあったけど







ゆうくんが、元介護士だった話を



もちろん知ってると思ったのに



全然知らなかったらしくて



「なんで、そんな話になったんですか」



「いつ、そんな話したんですか」



の、質問攻めにあった事があった驚き









私がヘルパーをしていた話をしたとき



彼が「俺も、介護士してた」



と言ってて盛り上がったのは



1年半前のラーメンデートの時やった。








そんなときみたいに、



ゆうくんは、サラッと私に



「俺、辞めるねーん」



って、言ってくるんやろなぁーって



予想してた。






ところが、その後何回かシフトが



同じ日の時も、普段通り



「おはよぉ〜」って、とびきりの笑顔で



挨拶してきたり



私が話しやすい雰囲気を作って



何でもないような事を話しかけたり



できる限りの間を作ってみたりしたが…



一向に言う気配無し…凝視










私から聞こうかな



私から、突っ込んでみようかな…








何度も考えた。








けど、それにしても



いつもどおりのゆうくん。




あーこに相談してみたら



「てか、その話ほんまに??」



と、疑問視してた。



「だって、辞めるなら



 あきちゃんの次に親しいのはnomちゃんやん」



って。










確かに〜〜!



でた!また辞める辞める詐欺?!



マネージャーは時々暇なときに



みんなの噂話してくるけど、



ゆうくんのことは一度も話さない。







ふ…



出たよ。



辞めるなら、ちゃんとそこは



きっちりしてるもん。