ジャイアンツの2軍のバス。 | 若き親友への手紙

ジャイアンツの2軍のバス。

君ほどのひとに
いまさらこんなことをいったって、
すべてわかってはいるのだろう。

でも、わかっているのと、
できるのとでは雲泥の違いだ。

できるのと、
やっていて、できているのとは
さらに雲泥の違いだ。

ほんとうは、さらにその先の
結果を出せているのかどうかが
いちばん大切なことだ。

けれど、いつもいっているように
結果は出るもので、出すものではない。

だから、結果が出るための
原因づくりが大切だが、
そんなことはすべてわかっている
君に違いない。

巨人軍の2軍のバスの話を
前にもしたことがあったと思う。

巨人軍の2軍の宿舎から
多摩川グラウンドに向かうバスのなかで、
ある選手がこうつぶやいた。

「俺は、子どもの頃から天才野球少年といわれ、
 小学校からずっとピッチャーで4番打者だったんだ。

 甲子園にも何度も出場しているし、
 優勝したことだってある。」

すると、そのつぶやきを聞いた
2軍のバスのなかの選手達が
口々にこうつぶやいた。

「俺もそうだよ。」

しかし、その2軍の選手達のなかから
1軍に進めるのはごく一握りの選手だけだ。

さらにそのなかから
レギュラーとして活躍できる選手は
ひとりかふたりくらいのものだ。

天才とは、才能とは、
努力が実るひとのことで、
努力せずにできるひとのことではない
などという当たり前のことを、
いまさらに君にいうつもりもない。

だが、
君がいつか、
「もう少し早くやりはじめていればよかったと
 いまになって後悔しています」
と僕にいってくれるだろうことだけは、
僕は信じて疑わない。

でも、その後悔が
手遅れになってからの後悔ではないことを
願わくば信じたい。

決して努力していないわけではない
巨人軍の2軍の選手達でさえ、
1軍に上がれず引退していくことを
君も知っているだろう。

しかし、それは
運ではない。

ただの努力ではなく、
人並み外れた努力が、
途方もない努力が、
とてつもない努力が、
目も眩むような努力が、
欠かせないのだ。

そして、そんな努力をしたとき、
天才と呼ばれてきた君なら、
必ず成果を出せるはずだ。

才能とか感性とか
そんな言葉に逃げてはいけない。

そして、こんなことは
すべてわかっているだろうけれど。

わかっているのとやっているのとでは
まったく違うことも
きっと君はわかっているのだろうけれど。