ちょっと特殊なケースなんですけど、私用の作業メモとして紹介します。
実は現在開発中のFC用アクションゲーム「このみのモンスターパーティ」のBGM(作曲/編曲:NOZ)をFMシンセサイザーアレンジで制作します。
使用機材は、FMシンセサイザーはYAMAHA TX816、リズムマシンはYAMAHA RX11、そしてシーケンサーはYAMAHA QX1です。
YAMAHA TX816
QX1も大変古い機材なので、このQX1で作った演奏データを、現代のシーケンサーでも演奏出来るように、演奏データを残したいのです。
そこで今回は、YAMAHA QX1のシーケンスデータをYAMAHA QY700に移す方法です。
結論をいうと、ファイルで移すのは無理です。
QX1は独自のデータフォーマットを使っているので、QX1同士でしかデータの受け渡しが出来ないのです。
また、QX1のシーケンスデータはバルクデータでの受け渡しになるため、システムエクスクルーシブメッセージを記録出来る装置であれば保存は可能ですけど、QX1のバルクデータを他のシーケンサーにロードしても無視されてしまいます。
となると、QX1のシーケンス演奏を直接リアルタイムレコーディングするしかありません。
今回はQX1からQY700へレコーディングなので、QX1をマスターに、QY700をレシーブにします。
QX1とQY700とで、ズレ無くレコーディングするためには、MIDIクロック信号で同期を取る必要があります。
そこで、QX1のMIDIクロックについて、説明書を読んでみました。
QX1はちょっと特殊なシーケンサーでして、まずQX1にはMIDI OUT端子が8個もあります。
何でMIDI OUT端子が8個もあるかと言うと、QX1が発売された84年当時は、デジタルシンセサイザーは1台で1パートを演奏するシングルボイス仕様で、1台で8パートを鳴らすようなマルチティンバー仕様のシンセサイザーなんて存在してませんでした。
なのでQX1は、最大8台のデジタルシンセサイザーを接続して、8パートをMIDIでコントロールする事が出来ます。
そんな8個もあるMIDI OUT端子の中で、MIDI OUT8だけ特殊で、外部MIDI機器同期用にMIDIクロックを混ぜて出力しております。
これは、YAMAHAのリズムマシンRX11やRX15と同期演奏させる為です。
なので外部リズムマシンはQX1のMIDI OUT8と接続します。
と言うことは、このMIDI OUT8端子とQY700を接続すれば、同期レコーディングが可能になりますね♪
ところがMIDI OUT1から7はMIDIクロックが含まれてないので、普通ですと同期が取れませんよね。
でもRX11と同期も取れて、同時にQY700へリアルタイムレコーディングも出来るようにしたい…
その我がままを叶えるべく用意したのが、YAMAHA MJC8です。
MIDIパッチベイと呼ばれている機器ですね。
MIDI INが8系統、MIDI OUTも8系統あり、フロントパネルの操作で自由に結線を変える事が出来ます。
このMJC8のMIDI IN 1~8に、QX1のMIDI OUT 1~8を接続すれば、1本のMIDIケーブルにQX1のMIDI OUT1から8のシーケンスデータと、MIDI OUTから出力されるMIDIクロックをまとめる事が出来ます。
QX1は1本のMIDIケーブルで最大4track同時に出力出来ます。
えっ?!8trackじゃないの?と思われるかもしれません。
1984年はMIDI 1.0の規格が出来たばかりで、まだマルチティンバー対応音源なんて無い時代でしたから、4chあれば十分と考えたのかもしれません。
あとQX1は、1つのtrackに入力出来る同時発音数が無制限だった為、4chで様子を見よう言うと言う考えもあったのかもしれません。
なので、確実な方法として、1trackずつリアルタイムレコーディングする事にしました。
MJC8のセッティングは、MIDI IN 1~8にはYAMAHA TX816のMIDI THRU 1~8を接続します。
RX11はQX1からのMIDIクロックだけを受信するように、他の信号や情報はシャットアウトするように設定します。(説明書50ページ)
さて実際に、QX1からQY700にマルチトラックレコーディングをやってみます。
まず、QX1をマスターにするので、QX1のMIDI SYNCの設定をします。(説明書23ページ)
PLAYモードの状態で、JOBキーを押してから02 STATUS/SWITCHを選択。
SYNCのところを1(内部クロック)にします。
レシーブ側のQY700はMIDI SYNCの設定MIDI IN-AもしくはMIDI IN-Bにします。
次に、QX1の出力設定です。(説明書25ページ)
出力したいTrackのMIDI OUTナンバーを8にして、他のTrackはSPACEキーでOFFにします。
MIDI OUT 8は唯一MIDIクロックを出力するポートです。
必要であれば、MIDI OUT CHも設定します。
例えば、Track1を出力したい場合、MIDI OUTポートを8に設定、MIDI OUT CHは1chとします。
それ以外のTrackは、MIDI OUTポートは空白(OFF)にします。
Track2を出力したい場合、MIDI OUTポートを8に設定、MIDI OUT CHは2chとします。
それ以外のTrackは、MIDI OUTポートは空白(OFF)にします。
QY700のレコーディングしたいTrackとMIDI IN CHを設定した後、RECボタンを押して、レコーディング待機状態にします。
QX1のPLAYボタンを押すと、QY700も連動してREC STARTになり、レコーディングが開始されます。
MIDIクロックの信号も混ざってますので、QX1の演奏が終われば、QY700も連動して停止します。
これがMIDIクロックを使ったレコーディングの良いところで、テンポのズレも無く、正確にレコーディングが出来ます。
これを8track繰り返せば、QX1のシーケンス演奏をQY700に移す事が出来ます。
QX1の演奏データは、SMFやESEQ形式よりも古い形式のQX1専用データなので、もうこの方法しかデータを移す方法が無いんですよね。
でもこれで安心して他のシーケンサーに受け継ぐ事が出来ます♪
後はYAMAHA RX11のリズムデータも、同様のリアルタイムレコーディングでデータを移す方法になります。
まあこちらはRX11とQY700を直結してリアルタイムレコーディングすれば問題ないかと思ってます。