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陸奥A子といえば、少女漫画誌『りぼん』70~80’sの「おとめちっく」全盛期に、田淵由美子や太刀掛秀子らとともに活躍した漫画家としてその名を聞いたことのある人が多いであろう。
本書の表題作にあたる「ハーパーの秘密」から「バイロンの振り子」、「夢の中から夢の中まで」「思い出のAugust」「一葉の夢(前編・後編)」は、そんな著者がYOUNG YOUに活動の場を移してすぐの時期にあたる1990~92年にわたって、断続的に同紙に連載された、親友花とカリナの恋模様を描いた作品群である。
花とカリナは、学生時代からの大親友。しかし、性格も、人生観も、恋愛に対する考え方も対照的だ。20前半。恋に恋する時代はもう終わり。それぞれの形で、恋の「その先」を考えていく。
カリナは、大嫌いな犬を飼い始めた。彼の大好きだった「ハーパー」というお酒の名前を付けて。お見合いをした。たった一回のお見合いで結婚を決めた。「ハッピーエンドを望んじゃいけない人」との恋は、きれいさっぱり清算されなければならなかった。
一方の花は、失った恋に殉死するかのようにしてお嫁に行き、専業主婦、そして母として型どおりの「女としての幸せ」に自分を当てはめていこうとするカリナに戸惑いを隠せない。「あたしたちまだ21なのに」。仕事も楽しいし、なにより「オトナ」として経済的にも精神的にも自立している現在の状態はかなり充実している。運命のような「片思い」相手と恋人となったあとも、なかなか「そのさき」を意識することができないでいた―――。
陸奥A子の絵は、全てが可愛らしくデフォルメされていて、現実社会の生々しさはきれいさっぱり消臭され、つるつるに磨かれ、ふんわりやわらかい布がかけられ、仕上げにポプリでいいかおりまでがつけられている。だから、読み終わってからストーリーを整理してみると、それは結構な重さを有しているのにもかかわらず、読み進めている間はまったくもってそれを感じることがない。
すこし成長した「おとめ」は、かつての「おとめの論理」そのままをもって、世間体とか、常識とか、欲とか、そういったものに触れないことにはたどり着けない「大人たちの世界」を解釈していく。陸奥A子のセリフと絵をもってして、それは驚くほどすんなりとできてしまう。
しかし、この作品が傑作たる所以は、「おとめ」を貫くことに終始していない点である。「おとめ」も、いつの間にか、「大人たちの世界」の一員となっていく。
そして、本作品は、「おとめ」と「大人たち」の世界のちょうど狭間を描いていているのである。カリナは意識的に「大人たち」の世界へと自分を押込めようとするし(カリナは「おとめ」の世界から逸脱した時点で、自身は単なる「抜け殻にすぎない」と思い込もうとしている節がある)、花は、「大人たち」の世界のぞんざいを知りつつも、その世界を知ることを先送りしている。
作品発表から20年くらいたった今、20代半ばずぎくらいの女性が読むと、きっとしっくりくるはず。
●(筆者の独断と偏見による)陸奥A子を味わうための三冊●
粉雪ポルカ (陸奥A子自選集) (集英社文庫―コミック版)/陸奥 A子

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薔薇とばらの日々 (陸奥A子自選集) (集英社文庫―コミック版)/陸奥 A子

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天使も夢みるローソク夜 (りぼん おとめチックメモリアル選) (集英社文庫―コミック版)/陸奥 A子

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