うちのじいさんが、稲葉運送を創業するきっかけになったのは、戦前に運送会社に勤めたことでした。
そのご縁がなかったならば、うちは全然違う商売をしていたのかもしれません。
先生 34
川崎陸送株式会社代表取締役 樋口恵一さん。
私と同じ3代目ですが、業界の中ではかなりの有名人です。業界団体の要職を歴任したり、物流のイベントやセミナーで、講師やコーディネーターを務めたりしています。
しかし、まったくと言っていいほど、おごる態度をすることはありません。実に謙虚な社長です。
出会いのきっかけは、先代の社長、すなわち樋口さんのお父さんの死去に伴う「お別れの会」でした。
「故人の幼少期を知る稲葉会長から、当日配布するパンフレットに載せる追悼文をいただきたい」というお願いの電話を頂戴し、親父や私が協力して原稿を上程しました。
「お別れの会」には、代表して私が出席しました。大行列の中で、樋口さんと初めての名刺交換。その時、私の名刺を見た樋口さんは、「ハッ」とした顔をして、こう言って下さいました。
「お会いしたかったんです」
めちゃ嬉しくて、感動しました。世代を超えて、ご縁が繋がった瞬間でした。もっとも、樋口さんの中では、それほど大袈裟な印象ではなかったようですが
同業者の仲間は、協会や組合といった場所で増えましたが、樋口さんとの出会いは、そこからもう一歩先に進んだところに突き抜けた気がします。
「運送会社のフィールドワークをしたい」という学生さんに協力させてもらったり、樋口さんの関わるセミナーやイベントに招待してもらったり、今までにない世界でのお付き合いを経験させてもらいました。
とにかく出会わせていただいた方は、みんなポジティブ思考で元気な人たちばかりなので、懇親会で語り合っているだけで、刺激を受けることができます。
それにしてもありがたいのは、樋口さんは私を紹介する時に「彼のお祖父さんは、昔うちの会社で働いてくれたんだよ」という経緯を話して下さいます。おかげで、一度名刺交換をした方は、大抵ボクのことを覚えてくれます。
残念ながら、ボクは川崎陸送の創業者さんや先代社長とお会いしたことはなかったし、樋口さんもうちのじいさんと面識はありませんでした。
でも、ご先祖様からのご縁を大事にしてくれる方が後継者になってくれたお陰で、ボクは人脈を広く深く作ることができました。お互いに、同じ価値観を持っていなければ「あんた誰?」で、終わってしまうこともあるのですから・・・。
樋口家のご先祖様にも、うちのご先祖様にも、感謝です!