「………それはともかくだ。何故今頃になって僕に声をかけたんだ?」
そうだ、ついタイミングを逃す所だった
僕はジッと彼に警戒心を持ちながら聞いてみた
「……別に、深い意味はないけど?」
「ないのかよ!?普通はあるからわざわざ声をかけるものじゃないのか?僕が間違っているのか?間違っているなら間違っていると言ってくれ!」
ああ、僕は一体何をやっているのだろう?こんなの本当の僕じゃないみたいだ。……そうさ、本当の僕はもう少し大人のはずだ
「……オイ…」
そうだ、元はと言えばこの男がいけないんだ!この男が、この男が悪いんだ!
「…悪かったな、俺のせいで」
「そうだ、お前のせいで……って、なんで知ってるんだ!?」
確か僕は心の中で話していた筈…まさかコイツ、超能力者か!?
「…言っておくが、俺は超能力者でもエスパーでもないからな?」
「なっ…じゃあなんで分かったんだ?」
「心の声、丸聞こえだから」
僕は唖然とした
まさか心の中で思ってた事を口にしていたとは……
「…まぁいい。それより、もう一限目が始まる時間だ」
これ以上、会話が続かなそうだったので僕は話を逸らしてみた
案の定、彼は「ああ、そうだな」と同意の言葉を口にした
僕は一限目の教科を確認して、立ち上がった
なんと一限目は移動でもう三分しか移動時間がなかったのだ
しかも、その移動場所は10分もかかる程離れている
…今からではとてもじゃないが無理だな
もうクラスの皆は移動していて誰もいなくて、今教室にいるのは僕とコイツだけになっていた
「…完全に遅刻だな」
僕がそう言うと、彼はまた「ああ、そうだな」と同じ台詞を口にした
「………」
「…行かないのか?」
「君だって行かなくていいのか?」
「……サボる?」
「何故疑問系なんだ?…まぁいい」
そう言って僕は教室を出ようとした
さて、これからどうするか……体調不良と言う言い訳で保健室で一眠りするか?それとも屋上で小説のネタでも考えるか?
僕はどっちにするか悩みながら教室の扉を開けた
すると、後ろからついて来る足音が聞こえた
…もしかすると、竹永がついて来たのか?
そう思った僕は、一度立ち止まり振り向いた
「…って、近っ!なんでこんなに近いんだ!?」
僕はビックリして後ろに飛び退いてしまい、後ろの扉に腕を強く打ち付けてしまった
「…────っ!」
「……どうした?」
「どうもしないっ!と言うより、君は何故僕の真後ろにいるんだ?僕に何か用があるのか?だから突っかかるのか?言ってみろ、今すぐにっ!そしてもう僕に関わるな!」
僕は一気にしゃべって息切れをするが、彼は涼しい顔でそれを聞いていた
ああー…、ダメだ
コイツ苦手かもしれない…いや、嫌いだ!こんな奴!!
「……一人より二人でサボった方がいいだろう?」
「いい訳ないだろっ!馬鹿なのか、君は馬鹿なんだな!?」
芸能人で例えると僕はもしかしたらツッコミ役になるのでわと思ってはいたが、まさか本当にツッコミ役になれるかも知れないと思ったのは初めてかも知れない
それほど彼に対してツッコミ所が色々ある
「…はぁー…、馬鹿はお前なんじゃないのか?…いや、どちらかと言うと、鈍感と言うべきか?」
彼は溜め息をついたと思ったら、そんなことを言い出した
そして近くにあった誰のとも分からない椅子に手をかけて座りだした
…それだけならまだしも、彼は僕にも座れと顎で指示してきた
多少苛立ちはあったが、これでもう関わって来なくなれば安いものだと思い我慢した
もう授業は始まっている時間だ
周りはとても静かで、聞こえるのは先生の声と時間を刻む時計の音だけだった
僕は何度かサボったことがあるが、教室でサボるのは珍しいくらいで、普段は屋上や体調が悪いと演技して保健室にいたりする
……まぁ、教室も悪くないとは思う
教室の扉のガラスは、透明でなくモヤのかかったガラスなので外からも見えないし、近付かなかったら中に人がいるか分からない
「……何だ」
僕は不機嫌そうに聞くと、彼は仕方ないと言う感じで口を開いた
「…お前は前世を覚えているか?」
「前世?いきなり何を言い出すんだ?」
突然の事に、僕は眉をひそめた
「……やはり、覚えていないか…」
「だから一体なんのことを言っているんだ?」
「俺は覚えている。俺とお前が恋人だったこと、愛し合っていたこと、そして前世のお前は長くは生きれない程に身体が弱かったことも……全て記憶に残っている」
「…ちょっ……何を言い出すんだ!?」
僕は恥ずかしくなり、つい大きな声を出してしまったことに気づき自分の口を塞ぐが、彼の言ったことが気になった
「ぼ、僕が前世で恋人だって?君とか?そんな、馬鹿なことないだろうっ!」
僕は小声ながらも彼に対して強く反論した
だが、彼は横に首を振るとまた口を開く
「…俺らは恋人同士だった。それに嘘はないだろうが、まぁ前世のお前は女だったしな」
というと、前世の僕は女としてコイツの恋人だった訳で今の僕には関係ない訳なんだな?
僕はそれを聞いて少しホッとした
……ホッとしたはずなのに、どこか胸の奥がチクリと痛んだ気がした
だが、僕は何かの勘違いだと思いあまり気にはとめていなかった
「…それで?それが本当だとして、今の僕とはなんの関係もないだろう」
「……信じるのか?俺の話」
彼は目を少し開いて驚いた顔をしていた
どうやら、信じてもらえないと彼は思っていたのだろう
「…言っておくが、別に完全に信じた訳じゃないからな!君の妄想話を聞いてやっただけだ!」
すると、彼は黙っていると思うといきなり吹き出したように笑い出した
僕は何に笑っているのか分からず、ただ唖然と彼をみていた
……それが、どこか懐かしい面影な気がして胸の奥が熱くなったからだとは彼には言えない
「…な、何故笑う??」
「いや、少し思い出してた。今も昔も、中身は変わってない所があるんだなと思ってな…」
彼は本当に懐かしいと思っているのか、懐かしそうにだけどどこか寂しさのある顔で僕を見つめる