一昔前も二昔も前の9月某日
婚姻届を提出した。
慣れ親しんだ姓は夫のそれに変わり
夫の姓で呼ばれる事に暫くは
違和感を感じていたが
苦楽を共にする内に私を形成する
一部としてすっかり馴染んでいた。
そしてお互いの未熟さ故に
私達は姓を再び別つ事になった。
この世に生を受けてから
ずっと私と共にあった筈の姓に戻った今
逆に少し戸惑っている。
離婚という選択に後悔はないけれど
偶にこういう小さな事で感傷的になる。
「今月は結婚記念日だね」
という何とも間抜けなLINEを寄越す
元夫に反論するでもなく
そうね、あなたも何か考えながら
日々を過ごしているのだから
そうなのかもしれないと抽象的に納得した。
お互いを型に嵌め苦しみ足掻いた日々も
今となっては俄雨のようなもので
この感傷は雨上がりの
噎せ返るような匂いみたいなもの。
過ぎた日々とこれからの日々に
お互いの存在に。