自治連合会主催の『救護ステップアップ研修』へ参加してきました
講師は、埼玉県自主防災組織リーダー指導員であり、日本赤十字救急法救急員の齋藤芳男さんです。
いざという時、自分の命はもちろん、家族や友人、周りの方の命を助けることにもつながるので、大学生の頃から時々、救急法については興味を持って学んできましたが、時間が経つと忘れてしまいます
去年も開催されていましたが、予定があり参加できなかったので、今年も開催と聞いて意気込んでいきました
資料によれば、阪神淡路大震災時に「助けられた人」の64%の方が、近所の人に助けられていた、というデータがあるそうです。(ほかは消防・警察14%、自衛隊14%、家族・親戚8%)
近所づきあいが減ってきてしまっている昨今ですが、普段からの顔のみえるお付き合いは大事だなぁ。。。とあらためて思います。
復習もかねて、ポイントを記しておこうと思います
発災~緊急搬送までの流れ
最初は、「救助活動」の必要性と、どのタイミングでどう行動すべきかの流れの座学でした。
発災直後は「自助」優先。まず家族の安否を確認すること
安否確認後は、被災状況の把握で的確な情報を知ること
⇒救援要請(どこで、誰が、どのような状況で、どういう対応が必要か)
救出協力者を呼ぶ
※救援活動を行う場合には、必ず2人以上で行動することが鉄則!
(二次災害に遭わないよう、防備をしっかりと整えて)
救出資機材を活用
(通信備品、消火備品、救出備品、照明備品、救護搬送備品)
応急医療処置対応
緊急搬送を迅速に
止血法
次に応急医療処置の実践を順次行っていきました。
最初は直接・間接圧迫止血法の実践です。
人間が生命を保つには“血液”が必要ですが、全体の20%を失血しただけでショック状態、30%を失血すると生命が危険な状態になるそうです。
体重60kgの人で、約5リットル(500mlのペットボトル約10本分)の血液が流れているそうですが、20%というとそのうちの約2本分、30%というと約3本分!!
以外と少ないと思ってしまいました。
だからこそ、止血法はいのちを守る大切な手段ですね再認識しました
体内出血は専門医でないと止血は困難ですが、体外出血は状況により止血は可能ということで、傷口を直接圧迫して止める方法と、止血帯やその場で身近にあるもの(ネクタイ、スカーフ、ボールペンなど)を使って止める間接圧迫で止める方法を習いました。
ポイントは、
タオルやガーゼなどの血液を吸収するものよりは、できれば綿ハンカチやラップなどの方がよいこと
感染防止のために、手をレジ袋やビニール袋に入れて、患部に直接触れないようにして圧迫すること
15分位を目安に、部位を正しくずれないように圧迫を続けること
です。
三角巾包帯法
次に、三角巾包帯法の実践です。
三角巾は負傷の際に、傷口のガーゼ等の固定や止血、副子を当てて患部保護など、いろいろな活用ができる医療備品です。
サイズは底辺135cm、斜辺が95cm×95cmの二等辺三角形がベストです。
市販のものを買ってもよいですが、古くなったシーツから4枚位切り出すことができます。
打撲や骨折時には、首の後ろは本結び、肘の部分は玉結びにして、腕にそって副子(新聞紙や雑誌などで代用)を入れて固定すれば、患部を保護できます。
こんなイメージ
実は、三角巾がなくても、持ち手のついたレジ袋(高さ50cm位が目安)の脇部分だけに切り込みをいれて、持ち手に頭を通せば、三角巾の代用ともなることがわかりました!実際にやってみて、「なるほど、これはいける!!」と実感しました
その他にも、7cm幅位の帯状にして、腕の包帯代わりに用いたり、足首を捻挫した時の応急的な固定にも使えるなど、実際にやってみて、しっかり固定できることがわかりました。
頭でわかっているつもりでも、やってみるのとやらないとでは、全然違うなと思いました
倒壊物からの救出
次に、倒壊物からの救出です。
家屋や家具などが倒壊・転倒して、もし挟まれてしまったらのシミュレーションです。
真ん中に挟まれて苦しそうにしている模型の人がいます。「大丈夫ですか!?」と声をかけているところです。
実は、齋藤さんに協力を依頼され、私ともう1人の方が、この倒壊物の板の上に、おもり役として乗っかりました
実際に重い板を、テコの原理で少しずつ持ち上げていく様子を体験しました。
この方法で、少しの力でもしっかり持ち上がっていくのには驚きました。貴重な体験でした
ポイントは、
状況を把握する(2次被災を避ける)
※被災者に声をかけて「大丈夫ですよ」と安心させてあげることが、何より大切。最後まで声をかけ続けること。
救出対応人数は、必ず2人以上
救出用の資機材を準備する
倒壊物は重量があるので、慎重に
※テコの原理を活用し、持ち上げてできた隙間に、その場にある木材や植木鉢、ブロックなど硬いもの(補助板)を差し込んで、あわてずに倒壊物を持ち上げていく。
補助板は左右均等に置き、崩れの防止を保持。
※倒壊物内には、絶対に手を入れないこと。
被災者の被害経過時間を知る
(手足や体幹・腹部などが、長時間圧迫を受け、筋肉細胞が壊死すると、細胞内からカリウムやミオグロビンが遊離し、急性腎不全などを起こす「クラッシュシンドローム」が起きるそうです。救出された人に、手足のしびれや茶褐色の尿、尿量の減少、圧迫部位の腫れなどがあったら要注意!)
時間経過している場合には「水」を飲ませること。これにより血液が薄まり、毒素が回って腎臓や心臓等への影響を和らげることができる
倒壊物が足の方まで持ち上がったことを確認して、被災者を引き出すところ
簡易担架搬送
次は、簡易担架搬送です。
身近にあるものを活用して、こんなに簡単に担架ができるんだと驚きました。
1つ目は、物干しざお2本(または4本)と毛布1枚で作る担架です。
特にロープなどで留めることなく、男性4人で持てる位の、立派な担架が簡易的にできました
搬送時は、搬送される人の頭部を進行方向に向かって後方にすると、行く先が前に見えて(特に階段移動時など)その方の安心につながる、とか、手は衣服内に、足はクロスさせると、担架からはみ出すことがなく運びやすい、などのアドバイスがありました
2つ目は、物干しざお2本(または4本)と衣服で作る担架です。
衣服を着ている人が、さおの両端を持ち、裏返しで脱がせてもらいながら袖をさおに通します。4~5枚ほど繰り返すと、簡易担架ができあがります。
できれば、厚手のトレーナーなどが強度があって適しているそうです。Tシャツやウインドブレーカーなどは薄すぎて適さないとのことでした。
3つ目は、ブルーシートを担架代わりにしたブルーシート搬送法です。
回復体位(横向きで寝ている形)から、ブルーシート(180×360cm)に乗せ、両端からグルグルと肩幅まで巻き、搬送します
最低、大人6人で搬送するのが良いそうです。
その際、持ち手をお互いにクロスさせて持つようにすると、いざ誰かが力尽きて手を放しても、搬送人を落としてしまうことにならないそうです。
その他、腰かけ椅子を利用しての搬送方法もレクチャーがありました。座った状態の搬送者を、最低大人2人で搬送できます。搬送される側も安心感があります。
また、1人で行う緊急搬送例として、脇から両手を入れて相手の片腕をつかんでひきずりながら搬送する方法や、背負いながら相手の腕をつかんで搬送する方法、毛布や圧布に乗せてひきずりながら搬送する方法、搬送する人の腕を自分の肩にかけ、抱っこして搬送する方法などもあることがわかりました。
1人での搬送は、手の握り方がコツで、工夫次第で重さの負担感が減るそうです。
心肺蘇生(胸骨圧迫)
次に、心肺蘇生(胸骨圧迫)です。
AEDは、参加のみなさんご経験がある方が多いのと、いざAEDが見つからなくてもできる、胸骨圧迫による心肺蘇生法を学びました
今回は、小さいお子さんに対する胸骨圧迫のコツについてでした。
ポイントは、
呼びかけて反応を見て、胸を見て呼吸確認。呼吸がなければ、周りの人に119番への連絡とAEDの確保を依頼し、すぐに気道確保して胸骨圧迫開始。
(時間が経つほど、助かる可能性が低くなる)
両乳首の中間部分をピンポイントに手根部(手のひらの下部分)を当て、片手で行う
※大人の場合は、指を互い違いに絡ませて両手で行う
120回/分を目安で圧迫を繰り返す。深さは5~6cm(大人は7cm位)ほど。思ったより深く。柔らかいので大丈夫だが、万が一胸骨が骨折しても、心臓が止まるよりは良い。かなり疲れるので、複数人で交互にできるとよい。
(校歌を歌うテンポを目安に、との助言あり。)
膝を立てて圧迫は垂直に。最近は人工呼吸を取り入れなくても、胸骨圧迫だけを繰り返した方が効果があるとも言われ、感染症予防のためにも、救命動作がしやすいとのこと。
災害時実践策紹介
最後に、災害時の実践策紹介がいくつかありました。
NHK dボタン活用法
リモコンにあるdボタンを押すと、自宅のNHKテレビで、地域の災害情報が見られます。
発出されている警報・注意法や気象レーダー、避難情報、河川水位情報などが見られます。
心配で河川を見に行き、事故に遭ってしまうようなことを防ぐ意味でも大切です。
水嚢(すいのう)で家の内外での水の侵入を防ぐ
家の外の場合、段ボールをビニール袋で覆い、その中に、家庭用ゴミ袋(20リットル位)に水を入れた水嚢(すいのう)を入れて、その段ボールを並べて置くことで、冠水を防ぐことができます。
また、家の中でも排水口より下水が逆流してくることもあります。浴室排水口やトイレ排水口などに、同じく家庭用ゴミ袋で作った水嚢(すいのう)を置くと、逆流現象の侵入を防げます。
ポイントは、
破れやすいので、ゴミ袋は二重にすると良い
外に置く段ボールは、降雨で上部から水が入らないように注意する
です。
自宅トイレでの「携帯トイレ(便袋)」の使い方
避難所で一番の声は「(汚いので)できるだけトイレに行きたくない」だそうです。
そうなると水分を取ることをためらって、エコノミー症候群になりやすくなるなど、健康を害してしまう恐れがあり、災害時にはトイレ問題は切実です。
自宅で待機できる状況だったとしても、断水で流す水が出ない(上水道)、または下水がダメだから自宅トイレが使えない(下水道)、という時には、中に凝固剤の入った“携帯トイレ”を使うしかありません。
しかし、携帯トイレを毎回使っていたら、多量の枚数が必要で経済的にやっていられません。
そこで、ポイントは
便器にポリ袋(45リットル/黒色だと良い)を二重でかぶせた後に、その上から携帯トイレを広げて、ポリ袋の中に差し込む
※こうすると、携帯トイレの底が水でぬれない
用を足したら、その上にしわしわにした新聞紙などをかぶせて汚物が見えないようにし、携帯トイレのみ取り出して空気を抜き、口を軽くしばっておく
名前を書いて、近くの脇に置いておく(家族でも、各人が自分の袋を利用するのが良い)
複数回、用を足すごとに、汚物が見えないように新聞紙等をかぶせる
→1つの携帯トイレで1人1日分くらいはためられるので、ある程度いっぱいになったら、蓋つきゴミバケツや汚物処理専用の保管袋などを使い、消臭剤も用意して、自治体のルールに従って処理対応をする
このように、お金を節約しながら対応する工夫も大切です。
簡易便座トイレ(市販品)の使用法
携帯トイレの使用法と同様に、二重にしたポリ袋(45リットル/黒色だと良い)を入れてから、携帯トイレを差し込んで使います
この簡易便座は、手づくりでも作れることを教わりました。
自宅の便器と便座の間に新聞を挟み、マジックペンで便座の形を写し取り、段ボールに貼り付けて切り抜きます(4枚くらい)。重ね合わせた便座に、荷造り用幅広テープ(スズランテープなど)を強くグルグル巻きにし、後部に取り付け用のひもをつけて、簡易便座ができます。
これを、プラボックスに取り付ければ、簡易トイレの完成です。
平時にこれを作っておけば、いざという時に慌てなくても、トイレは安心です。
いちいち買い揃えなくても、サバイバル感覚で身近なものを利用していくらでも代用はできることや、普段から防災の観点で周りを見るようにすると、「いざという時にはアレが使えるな」などと、いろいろ見えてきますよ、とアドバイスをいただきました
また、一度研修した内容も、何度も繰り返して身体に覚えさせることが大事、ともおっしゃられていました。
熊本地震、能登半島地震などで、防災意識が高まる昨今、自身や家族、周りの人を救護するのに役立つ実践的な研修は、大変有意義なものとなりました。
これからも忘れないように、機会があれば参加して、知識や技能を身につけていきたいと思います