■東京交響楽団 東京オペラシティシリーズ第82回(10/11東京オペラシティコンサートホール)
[指揮]飯森範親
[ピアノ]ファジル・サイ*
[ネイ]ブルジュ・カラダー
[カーヌーン]セルカン・ハリリ
[パーカッション]アイクト・キョセレルリ
モーツァルト/歌劇「後宮からの逃走」序曲
モーツァルト/ピアノ協奏曲第21番 ハ長調*
(アンコール)モーツァルト/
ピアノ・ソナタ第11番より 第3楽章「トルコ行進曲」*
サイ/交響曲第1番「イスタンブール・シンフォニー」(日本初演)
メインの「イスタンブール・シンフォニー」は全7楽章構成。各楽章はそれぞれ、1.ノスタルジア、2.教団、3.ブルー・モスク、4.プリンス諸島行きのフェリーに乗った陽気に着飾った女性たち、5.ハイダル・パシャ駅からアナトリア方面に向かう旅人たちについて、6.オリエンタル・ナイト、7.フィナーレ、という標題付きで、演奏時間は45分ほど。
マルマラ海の潮騒を表す「オーシャンウェイブ」などユニークな編成の打楽器群に加え、3人のソリストによってトルコの民族楽器が奏される。「ネイ」は尺八のような音色の細長い縦笛、「カーヌーン」はツィターやツィンバロンのような撥弦楽器、パーカッションは一対の据え置きの太鼓のほかに、小脇に抱えるものや大きな円盤型のものを持ち替えて演奏していた。この3人が指揮者と弦楽器の間のスペースに陣取る。
イスタンブールを訪れたのは、もうかれこれ十年以上前のことで、その時に感じた個人的な印象の記憶と、サイのインスピレーションによって抽出されたイスタンブールとが、どのようにシンクロするのか楽しみにしていた。そして結論から言えば、聴き応えのある力作だったとは思うけど、今ひとつツボには嵌らなかったような…。
作品のコンセプト自体はとてもいいし、スコアも精力的で充実しているのだが、総じて男性的でマッチョな仕上がりで、この街特有の色気や叙情性には欠けている気がするのだ。唯一女性的な(というかそもそも女性を描いた)第4楽章が、軽妙で繊細なオーケストレーションで、ソロ楽器も無理なく流れに溶け込んでおり、最も魅力を感じた。まあ好みの問題と言えばそれまでだが、この曲、現地の人たちには「しっくり」聞こえるのだろうか?
この日は冒頭の「後宮」からトルコ尽くし。ハ長調のコンチェルトではサイのカデンツァが冴えわたり、アンコールはお約束の「トルコ行進曲」。左手のリズムをことさらに強調する、鬼才の面目躍如の爆演で、一瞬にしてオペラシティに、オスマントルコの軍楽隊を召喚してみせた。