■NHK交響楽団 第1780回定期公演(4/23サントリーホール)
[指揮]ネーメ・ヤルヴィ
R.シュトラウス/祝典前奏曲
R.シュトラウス/紀元2600年祝典曲
R.シュトラウス/バレエ音楽「ヨセフの伝説」
滅多に実演で接する機会のない、珍しい曲ばかりを集めたR.シュトラウス・プログラム。しかも、いずれもオルガン付きのフル・オーケストラに、特殊楽器やバンダまで総出演という大編成スコアである。
冒頭の独奏オルガンによるコード進行が印象的な「祝典前奏曲」は、ウィーン・コンツェルトハウスのこけら落とし(1913年)を記念して委嘱された、11分ほどの作品。オルガン部分だけを聴いていると、一瞬フランクの宗教曲を連想したりもするのだが、結局のところR.シュトラウスにとっての「宗教」とは、キリスト教的なそれというよりも、もっと抽象的な「美」や「芸術」に殉ずるものだったのでは…という気がしてくる。
エキゾチックな鐘の響きで始まる「紀元2600年祝典曲」は、皇紀2600年(1940年)を記念して日本政府によって委嘱された、14分ほどの作品。プログラム解説にもある通り、「火山の爆発」を中心にシンメトリックに要素が配置された構成は、ミニ「アルプス交響曲」といった趣き。どこかとってつけたような感もある「災害からの復興」という筋書きが、実は現代日本にもアクチュアルに当てはまるという事実に考えさせられる。
この2作品はいずれも依頼仕事であり、作曲の経緯を読む限り、R.シュトラウスが必ずしも積極的に取り組んだ作品とは言えないようだ。作曲時期には25年以上の開きがあり、書法的にも明らかな違いが聴き取れるのだが、どこか、作曲家の手管で仕立て上げた「職人仕事」のように思えてしまうのも事実。同じような趣向の楽曲を、R.シュトラウスならいくらでもひねり出すことができたのではなかろうか…?
後半の「ヨセフの伝説」は、演奏に1時間近くを要するバレエ音楽。しかも全体が切れ目なく演奏され、タイトルのほかには標題的要素もない。一応、プログラム解説にあらすじも載っているが、鑑賞の助けとするには頼りない(というか読んでもよく分からない)内容で、そんな条件下で未知のバレエ音楽を最後まで聴き通すのは、なかなか難儀な体験だった。いつ果てるとも知れない大音響の洪水に身を委ねながら思ったのは、普段我々が演奏会形式でバレエ音楽を聴く時、いかに標題というものに無意識に頼っていたのかということ。そして、標題もなしに1時間以上聴く者を惹きつける交響曲という形式の偉大さ…だった。
総じて当夜の演奏会は、資料的価値は極めて高かったと思うものの、音楽的満足度は決して高いとは言い難いものだった。「音楽」を聴いたというよりも、ひたすら「音響」を浴び続けたという印象だった。