「ハイリスク・ハイリターン」待遇を強化 | 馬場と私の10の約束。

「ハイリスク・ハイリターン」待遇を強化

「眠れる人材」を目覚めさせ、「使える人材」へと変換させるには、

適性とスキルのフォローも必要になる。

具体的には個々の能力を見極めて仕事を割り振り、

さらにスキルの発揮と向上を図ること。

特に適性の見極めを誤ると、思わぬ悲劇を生むことがある。

本人のキャリアアップを目的とした人事異動でも、狙いが裏目に出れば、

逸材をつぶすことになりかねない。

適性外の配属が、人材の芽をつぶすことがある
人事異動は、当然ながら個人の事情よりも会社の事情が優先される。

会社にとって必要な人材でも、ポストが空いていないところには

異動できない。また、将来を見据えて多様な経験を積ませるという意図から、

得意分野以外の仕事を命じられることもあるだろう。
 

とはいえ、適応範囲に限界がある場合もある。

他の人からは魅力的に見えるポストでも、自分の適性に合わない仕事ならば、

続けるほどにストレスを溜める苦行にもなる。

時には、自分に足りない力ばかりを求められるので、

仕事への意欲を失ってしまう。
 

適性は人それぞれ異なるものだが、1つの指針として、

性格のタイプで判断できる要素はある。
例えば相手に対して強気に出るタイプの人は、営業には向かないが、

対外的な折衝が必要な購買部門には適任。

また、チームプレーは苦手だが、独自のこだわりを持って発想する

タイプなら、研究部門の単独プレーで力を発揮しやすい。
物をつきつめて考えるのは苦手だが周りを和やかにする

ムードメーカーなら、支店の営業など現場の実働部隊が向いている。

自主性に乏しく、言われたことしかしない人なら、法的な制約が多く

反復性のある定型業務がいい。
また、IQ(知能指数)から見た「頭脳力」とEQ(心の知能指数)から見た

「人間力」で、判断できる要素もある。
「眠れる人材」は、IQ能力に偏っている場合もある。

このタイプの人は、他人の気持ちを推し量ることが不得手で、

自分のペースで物事を進めるので、人とうまく交われない。

言葉や配慮が足りないことで相手が不満を抱えていても、

本人に自覚がないために気づかないのだ。

往々にして部下や取引先から「なんだ、偉そうに」と反感を買い、

いつしか敬遠されてしまう。こうしたタイプの人は、スペシャリストと

しては力を発揮できるが、部下を管理する立場になると、

部下も本人も苦労することになる。

適性に合わないと判断した場合、最も効果的な方法は人事異動だが、

実現には時間がかかる。そこで、短期的な対策を講じる必要がある。

まず、部署内での仕事の分担を適性に応じて変える。

IQ能力とEQ能力に応じて「難易度」と「仕事の量」の2軸で変化をつける。

こうして部署内の「適材適所」を行う一方で、中期的な政策として、

人事異動に向けての根回しや、他部署との交渉を開始するのだ。
部下の能力にあったスキルを伸ばすスキルアップで、

特に重要なのは「コンテンツ」と「伝える力」の2つが相乗的に

上昇することだ。しかし、多くの企業ではコンテンツ強化に力を入れても、

伝える力を伸ばすことは後回しにされているのが現状だ。

しかし伝える力は、説明・交渉・提案など、仕事上のあらゆるシーンで

重要になるスキルだ。その力が強いほど、相手への影響力が増す。

顕著な例として小泉純一郎元首相や米国大統領バラック・オバマ氏。
 

伝える力を伸ばすために意識したいことは、「論理性」と「感情」の両面だ。

論理性を高めるには、重要な選択肢を漏らさず列挙すること、

取捨選択の価値判断が妥当であることが大事だ。

さらに、聞き手に分かりやすい事例、適切な例え話を交えて話すと効果的。

聞き手が実感を持てれば、共感を生むにせよ、反論のきっかけになるにせよ、

相手の感情を動かす起爆剤となる。
 

また、五感を使わせる演出も有効だ。例えば社内で使用する書類の

サイズ統一化を提案するとしよう。

この時論理的に弁舌を振るうだけでは、相手を納得させることはできても、

影響力は小さい。

しかし実際にサイズの異なる書類を何十種類か持ち込み、

「これを見てください。これが当社の現実なんです」と訴えれば、

目で見て問題点が把握できる分、「何とかした方がいい」と相手の感情が動く。

こうしたスキルは一朝一夕では身につかない。日頃から訓練する場が

必要だ。上司はまず、部下のスキルの現状ランクを常に把握しておく。

そして、スキルレベルに応じて難易度の異なる発表の機会を与え、

実践的に訓練を積む場を用意することだ。
 

部内のミーティングなど顧客に影響がないところから始めて、

徐々に難易度を上げていく。

社外の取引先などで、既にいい関係が出来上がっており、

何かあっても上司の自分がリカバリー可能な相手がいれば、

思い切って部下に交渉を任せてしまうのも1つの手だ。
 

そうするうちに、部下の能力のレベルが見えてくる。

1対1でならうまく発言できる人、少人数での場では力を発揮する人、

会議でも萎縮することなく発言できる人など…。

現状を把握できれば、能力を伸ばす方向性も決まるだろう。
 

伝える力にとどまらず、スキルアップには、先を見据えた計画も必要だ。

ビジネスマンが成長する過程では、3段階の転換期が訪れ、

その段階に応じて求められるスキルが変わるからだ。
最初の段階では自分の仕事で直面する問題を解決する力が求められる。

次に求められるのが「変革力」

最終的に望まれるのは、全社的な視点で対応策を考える力「経営力」。
上司は、部下が今能力的にどの段階にいるのかを個別に見極めて、

持っているスキルを高める課題を出すなど、その人に合った育成ができるかがカギとなる。
全体のバランスを考えれば、全員が同じペースで同じスキルを養う必要はない。

それぞれの能力に応じて、異なる特化したスキルを伸ばした方が、部署全体のパワーが上がる。
透明性の高い風土が信頼を生む
 

人材活用には、部下の現状を正確に見極める目と、

適切な判断を下して育成を促す行動力が重要だ。

また、部下からの信頼を得る努力も欠かせない。

信頼できない相手の言葉は、説得力に欠ける。
 

人の不満は、不平等感から生まれやすい。

心がけたい点は、部署内にフェアで透明性のある風土をつくり上げ、

それぞれの部下との間は近すぎず、遠すぎない距離を保つこと。

側近や腹心の部下をつくり、何かにつれ数人で密談しているような

不透明な状態をつくり出してしまうと、妬みのもとになる。

不満からチームワークが乱れ、悪化すればいじめなどを生む原因となる。

また異性の部下に対しては、同性の部下と比較するとお互いに

理解しづらい点もあると考え、その分時間を余分にかけて対応するといい。

父母や教師のようなスタンスで、厳しさの中に愛情のある態度で臨むことである。

しかし人材活用の成功を真に望むなら、上司と部下という小さな枠

だけでなく、企業として「自社の人材は寝かさない、

くすぶらせない」という政策をつくることが必要。
 

日本企業の現状のシステムには、社員に不平等感を生じさせる

大きな問題がある。最たるものが年功であり、既得権の維持だ。

社員の生活を守る日本企業と能力主義を貫く外資系企業の仕組みを

ミックスさせた新たなスタイルを提案したい。
 

現状の不平等感は、管理職層の人だけが「ローリスク・ハイリターン」の

恩恵を受けることにある。左遷や減俸などの処分は存在するものの、

処分が出ることは少ない。リスクとリターンのバランスが崩れた

不条理な状態が、一般社員からの不満を募らせる。

管理職層に属する人は、会社の利益に貢献すれば、

実績に見合った上限なしの報償を得られ、昇進する。

しかし地位にあぐらをかいて職務を全うしなかったり、

ミスをした場合は、否応なしに降格、減給する。

既に役員レベルでは、退任が取り入れられている。
 

一般層は、対照的にローリスク・ローリターンとする。

大きな恩恵も得られない代わりに、安定して雇用と給与が保証される。
このように分けると、ボーダーラインを越える昇進は、

原則として双方の合意がなければ実現しない。

安定を望むのであれば、一般層にとどまればいい。

リスクがあってもやる、という覚悟のあるものだけが

管理職へとキャリアアップし、チャレンジする。
 

現在既得権を手にしている人からは反発されるだろう。

しかし、仕組みが浸透すれば、リスクとリターンのバランスが

釣り合うので、待遇による不平等感は少なくなくなるはずだ。
 

企業としても、人材争奪戦の激化時代に、各自の価値にマッチした

フェアな処遇をしないと、将来的な競争に打ち勝つことはできないと言えるだろう。