潜在能力をひきだす「コトづくり」
私たちは普段の会話の中で、何気なく「潜在能力」とか「潜在需要」
といった具合に、「潜在」という“枕詞”をつけることがよくあります。
この潜在という言葉を使うことで、まだ出し切っていない“伸びしろ”が
あることを暗に示そうとしているように思います。
また、「君たちは素晴らしい能力を持っているのだから、もっと頑張れよ」
という励ましの言葉でもあります。
人は元来、働き者で何かをしたくて仕様がない生き物です。
ところが、現実は明確な目標がなかったり、自分の置かれた環境に満足できず、
本来の能力を十分に発揮できず不完全燃焼に終わっていることが
多いのではないでしょうか。
一人ひとりの能力には大差なかったとしても、やる気のある・なしで
実質的な能力には何倍もの差が出てしまいます。
人は明確な目標を設定してやったり、
やる気を起こさせる環境を作ってやれば、
本来の力を出し切ってもっといい仕事をできるはずです。
一方、今後は少子高齢化がますます進み、
企業における若手の人材が減っていきます。
このような人手不足に対応するためにも、
人の潜在能力を上手に引き出し、社員一人ひとりの仕事の質を高め、
生産性を上げることが求められます。
人のマネジメントを「量」から「質」に転換
バブル期のように頭数を揃えることに企業が終始していた時代には、
企業のマネジメントは画一的で管理的でした。
つまり、量のマネジメントだったのです。
そのやり方は、当時は効率がよく生産性もそれなりに高かったかもしれません。
しかし、現在のような人材不足の中で経済成長レベルを保っていくには、
一人ひとりの生産性を高める質のマネジメントが求められます。
それは、個人または組織の潜在能力を新たな企業活力とする、
従来とは異なったマネジメントです。
例えば、雇用形態の多様化がそうです。よく出る話ですが、
女性のなお一層の職場進出や定年制度のあり方、
定年退職後の働き方などを見直さなければなりません。
こうしたことは議論しているだけでなく、実行に移すことが急務です。
企業の周囲には、まだまだ顕在化されていない人材が豊富にあります。
これは宝の山。
企業にとって、価値創造の源泉は人にほかなりません。
人を単なる労働力と考える「量の時代」の発想から抜け出さない限り、
潜在能力は宝の持ち腐れのまま発揮されずに終わってしまいます。
だからこそ、企業はもっと人に目を向け、人に軸足を置いた経営を
目指すべきではないかと私は思います。
教育や人づくりに力を入れることも、人が本来持っている能力の
“伸びしろ”を引き出すことにつながります。
ここで忘れてならないのは、人は誰しも本来優れた能力を備えているということです。
教育や人づくりでは、人に何かを「教える」とか人を「育てる」とかいう
他動詞の発想ではなく、人が「育つ」という自動詞で捉えることが望ましいのです。
やる気が起きる環境を与えてあげさえすれば、
人は教えずとも育てずとも、自然に育っていきます。
大事なのは、潜在能力を顕在化させる環境をつくることです。
そのためには何が必要でしょうか。
潜在能力の顕在化に最も重要なのは、人に対する「信頼」です。
経営トップが社員を信頼し、その姿勢を示せば、社員のやる気が湧きます。
「君たちならやれる」と、本気で信頼することから、環境は変わり始めるのです。
逆に「力の出し惜しみをしているのではないか」という疑いの姿勢が
感じられたら、本当に出し惜しみがはじまります。
人事制度などの形式がいくら整っていても、その本質的な姿勢が
職場の風土として根付いていなくては意味がありません。
ただし、個人の潜在能力が発揮されるようになったとしても、
それだけでは企業は強くなっていきません。
一人ひとりの見ている方向がバラバラでは、
せっかくの能力も集団の力にはならないからです。
個人一人ひとりの小さな力を集団の大きな力に変えてこそ、
企業は強くなるのです。
いま、世の中の風潮として“個”に目を向けがちですが、
企業の優劣を決めるのは、個ではなく集団の優劣なのです。
ここであらためて集団の力、そしてチームワークの大切さを確認したいものです。
人はチームで活動することで互いに刺激し合い、
結果として新しい気付きや発見・発明があり、同時に個人としても成長していきます。
さらに互いの存在を意識し、協調し、力を合わせれば大きな仕事も
こなせるのだということも実感できます。
チームワークによって個人が成長すると同時に、
集団としても大きな力を発揮できるようになるのです。
潜在(まだ生かし切れていない)能力は個人だけでなく、集団にも宿っています。
「コトづくり」がチームワークを発揮させ「潜在能力」を引き出す
そのために重要なのが「コトづくり」です。コトづくりとはチームの
リーダー(社長や部門長など組織の上に立つ人)が自らの夢や思いを語り、
目標を掲げ、その実現を目指してチームのメンバーを奮い立たせる仕掛け、
仕組みをつくることです。
目標といっても単なる数値目標では、人の気持ちは燃え上がりません。
大きな夢や熱い思い、使命感などが込められた目標にメンバー全員が共感し、
立ち向かってこそ集団の潜在能力が湧き出てくるのです。
もちろん、夢に酔ってばかりではその実現は叶いませんので、
数字の目標も必要です。
つまり、夢というアナログな部分と、数字というデジタルな部分のバランスが重要なのです。
バブル崩壊後、企業は立て直しを意識しすぎて財務中心の発想に
傾きすぎていました。結果的に人の存在がおろそかになり、
反動として社員の会社に対する忠誠心は薄れてきたように思います。
これでは潜在能力を発揮せよと言っても無理です。
また、いまの働き方にも問題があります。
仕事に追われ、毎日の残業残業では体も頭も疲れ切ってしまい、
せっかくの潜在能力も湧き出してきません。
こうした現状を反省し、人に軸足を置き直すことで個人や集団の潜在能力を
顕在化させる経営こそが、「新・日本型経営」の一つの姿ではないでしょうか。
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