大器晩成型中間管理職の野望 -8ページ目

ガンなんかに負けるな 2

我が弟から連絡が入った。


どうも親父は呼吸が上手くいかないらしい。


確かに 今日の朝も息が荒いなと感じていた。


ゆっくり寝ているように見えても


実は必死になって生きようとしているのかもしれない。


冗談でも言えるようになったら


「息するのが苦しくて死ぬかもしれないと思ったよ」 


なんて時が 早く来ることを祈る。


結局は直接のどに管を通して呼吸をするようにしたらしい。


がんばれ、とうちゃん。

ガンなんかに負けるな

親父の手術の説明も穏やかに始まった。


ちょっと引きつった笑いの親父。


内心 相当にビビっていたらしい。


でも先生を信じるしかないと誰もが思っていた。




翌日、予定通りの段取りをで手術室に向かう。


そのエレベーターに乗るのは


寝かされたままの親父、看護婦、弟、俺


母を含め他の付き添いは別ルートで手術室方面に向かう。


エレベーターの中で親父は看護婦に向かい


「うちの息子たち」と、小さな声で紹介する。




手術は始まった。


控え室で誰もが明るく振舞おうとしている。


予定通りの5時間の手術。


先生から摘出された部位を見せられ


予定通りの手術ができたことの報告を受け一同安心。


かすかな意識の中で看護婦に痛いところをアピールする親父。


「予定通り」の言葉を信じ、あとは病院スタッフに任せ各自解散することに。



3日目

母親と会社の休みをとっていた弟が様子を見にいくことに。


母親は携帯の使い方も知らないことから、弟とメールで状況確認する。


当然、院内は携帯電話使用禁止のため


暇を見つけては外に出て、情報発信してくれる 使える弟。


昼過ぎからのんびりムードが一変する。


どうも体内で出血が止まっていないようだ。


事前説明で数%の確率であり得ると説明を受けていたが


宝くじにも当たったことがないのに、まさかこんな状況で数%の一員になるとは。


結局 2時間の再手術。


今日もひたすら寝た状態。


台風の上陸による被害も心配なのに・・・。



4日目

昨日は台風が心配とのことで家に帰ってしまったが、


今日は家族に内緒で会社を遅刻して


出勤途中に様子を見に行く。


本来は面会時間ではないと思うがお構いなし。


病室は何やらバタついている。


先生も疲れた顔でいる。


しばらく病室前で待つ。


一連の騒動が落ち着いて、先生が歩み寄ってくる。


出血は止まったようだが、その他は昨日から小康状態とのこと。


病室を覗くと、管と機械に囲まれ親父が寝てる。


一人の看護婦が何やら作業中。


麻酔で寝ていると思っていたが、看護婦が一言。


 「声をかければ、手を握り返してきますよ」


ほら。 ってやって見せてくれる。


思わず親父の温かい手を握ると、かすかに握り返してくれたようだ。


親父の手を握るなんて何年ぶりだろう。 記憶にもない。


変り果てた姿とその手の温もりで涙がでてきた。


看護婦の前でも 我慢強い息子は涙がでた。


涙声にならないよう、精一杯の我慢で


耳元で「会社に行ってくるよ」と何事もなかったように振舞う。


元気になったらどこかに連れて行くよ。



親を大切に思うこと

親孝行って?


親が衰えていくことって?


今まで生きてきて、全然気にしたことなかった。


いつまでも元気で、威張って、わがまま言って


・・・ 頼りになる。


毎日が忙しく、会社での拘束時間も長いから


田舎に住んでいながら近所付き合いもないところをフォローしてくれる。


市役所で家主の交代をしてきたけど何にも知らない。


生活するって大変なんだと実感する。


いつまでも元気だと思っていたから親孝行なんて考えてもなかった。


良くテレビのインタビューで「親孝行しなくちゃ」なんて言ってるけど


その意味さえ良く理解していなかったんだろう。


でも家業をやめ、入院を控えるどこか寂しげな親を見ていると


誰かに言われることもなく


親孝行をしなかったことを無性に後悔する。


人間は皆 こんなことを思うようになるのだろうか。


親離れしていないと言われても仕方ない。


そんなことは誰がいっても関係ない。


幼少の頃 親と写っている写真を思い出す。


僕にも子どもがいる。


子どもの前では泣けないけど


今こうして書き込んでいるだけで涙目になる。


明日は入院だ。


王監督を見習え。 がんばれ とうちゃん。