「副大統領は選挙結果に影響を及ぼす能力を持っていないというペンス副大統領の結論」
ペンス副大統領の法律顧問グレッグ・ジェーコブは同時に、連邦議会の上下両院合同会議中における副大統領の役割に関する調査を行っていた。副大統領執務室(The Office of the Vice President)は、2020年10月26日に、そのテーマに関する予備的なスタッフ覚書を作成していた。ジェーコブは、その時、その件に関して選挙日あるいはその前日にペンス副大統領首席補佐官のマーク・ショートと議論をした。
これは、ジェーコブが選挙プロセスの中での副大統領の役割に関する覚書を書くことを要求されることとなった初めてのときではなかった。選挙前に、ショートは、ホワイトハウス内の誰かがトランプ大統領に選挙日の夜に早めに勝利を宣言することを推奨していたと、ジェーコブに説明した。もちろん、それは、トランプ大統領がまさに実際に行ったことである。ジェーコブとショートは、ペンス副大統領がそのようないかなる宣言に巻き込まれることも回避したいと思っており、ジェーコブは、そのような件にペンス副大統領が巻き込まれることがないようにするための理由として、1月6日における選挙人票の集計を主宰することをめぐる副大統領の役割に注目した。選挙日に、ジェーコブは、ショートにこの助言を反映した覚書を送付した。
その後、2020年12月7日に、「リンカーン・プロジェクト(Lincoln Project)がトランプ大統領に対する挑発的なあ発言を行い、「ペンス副大統領が1月6日の両院の合同会議中にあなたの政治生命にとどめを刺すだろう」と述べた。これがジェーコブとペンス副大統領の間の議論を促すことになった。ジェーコブは、1月の始めまで、両院合同会議中における副大統領の役割に関する調査を継続した。ジェーコブは、その件に関する彼の見解はその時まで十分に構築されたものではなかったと、特別委員会に告げた。
ジェーコブは、「1887年選挙人集計法」と合衆国憲法修正第12条の両方の詳細な調査と歴史的な分析を行った。修正第12条には、関連する1つの条文がある。「上院議長は、上院議員と下院議員の列席の下で全ての認証書を開封し、その後(選挙人の)票が集計されるものとする。」ジェーコブは、この条文が不適切に起草されており、選挙人票に関する紛争の解決について何も述べていないと結論付けた。
ジェーコブは、副大統領は選挙人集計法を遵守しなければならないという結論を出した。同法は、130年間遵守されてきており、「選挙人に関する争いがあったすべてのケースにおいて、争いは選挙人集計法の手続きに従って解決されてきた」とジェーコブは証言した。歴史と関連ケースを調査し、ジェーコブは、「副大統領は大統領選挙の結果に影響を及ぼすという性格の権限を有していない」と結論付けた。ジェーコブは、「自分が調べた文言、歴史そして率直に言って常識のすべてが、副大統領にはそのような権限はないということを確認した」と、述べた。
「トランプ大統領の仲間は、特定の選挙人票を集計しないことを副大統領に命じる裁判所命令を求める訴訟を提起した」
トランプ大統領の連邦議会議員の盟友の一人であるテキサス州選出下院議員ルイ・ゴーマートは、イーストマン理論を裁判で推進した。2020年12月27日、ゴーマート下院議員とトランプ選挙対策本部のアリゾナ州の偽選挙人の数名(アリゾナ共和党委員長ケリー・ワードを含む)が、テキサス州東部地区連邦地方裁判所にペンス副大統領に対する訴訟を提起した。ワードがその訴訟が提起された日の電話でマーク・ショートに説明したように、トランプ大統領はその訴訟について承知しており、その訴訟を承認した。「大統領が我々に了解したと言わない場合、我々はその訴訟を提起はしなかっただろう」と、彼女は、マーク・ショートに告げた。
その訴訟において、原告側は、裁判所に対して、5州からの選挙人の「競合する名簿」があったと主張した。彼らは、1887年選挙人集計法の一部が違憲であり、修正第12条はいずれかの州から提出された選挙人に関して連邦議会議員によって提起された異議を判定することに関する独占的な紛争解決の仕組みを含んでいると裁判所が判決することを要求した。ゴーマート下院議員は、基本的に、ペンス副大統領に対して選挙人集計法によって定められている手続きに従うことが禁止されていると裁判所が告げることを要求していた。ゴーマート訴訟の原告は、イーストマン説と極めて類似しており、「副大統領にはどの選挙人票を集計するかを決定する排他的な権限と独占的な裁量がある」と主張した。
ゴーマート訴訟はイーストマンが唱えたものと同じ理論を前提にしていたものの、イーストマンは、訴訟を提起するという決定に同意しなかった。イーストマンは、副大統領に対する訴訟は成功するチャンスが「ゼロに近く」、裁判所が「ペンスにはバイデンを認証した票を拒否するいかなる権限もない」と述べる意見を発出することになる「非常に高い」リスクがあると主張した。カーター判事が強調したように、イーストマンの理論は、ペンス副大統領が連邦議会あるいは裁判所からの許可を得ることを求めることなしに、この行動を起こすべきというものであった。もう一人の弁護士のビル・オルソンは、「ペンスは[選挙人集計法]によって制約されてる」という司法判断を得ることは、「1月6日戦略を完全に失敗させる」可能性があると述べた。イーストマンのスキームを強行することを提唱していた関係者は、そのスキームが違法であるという裁判所の判決が選挙を覆す計画をその途上で中止させることになるという高いリスクがあることから、それを連邦判事の前に持ち出すことを望まなかった。
イーストマン自身は、1月4日のアリゾナ州下院議長ラスティ・バワーズとの電話中に裁判所と法律順守に向けてのこの無頓着な態度を押し通した。
合同会議のわずか二日前のこの電話中に、イーストマンは、アリゾナ州下院議長バワーズがトランプ選挙人を認証するか、バイデン選挙人の認証を取り消すためにアリゾナ州下院を招集するよう圧力を行使した。バワーズ議長は、そうすることは彼が合衆国憲法とアリゾナ州憲法に対する彼の誓約を破ることになることから、彼には「そのような行動を起こすつもりがない」と説明することで、ジュリアーニとトランプ大統領による同様の懇願に以前に応じたように対応した。それにもかかわらず、イーストマンは、「それをただ実行し欲しい。あとは裁判所に任せよう」と依然としてバワーズ議に圧力を行使した。
最終的に、ゴーマート州下院議員の法的策略は失敗した。連邦地方裁判所判事は、同訴えを素早く却下した。同判事の判決は、最高裁判所によって支持され、連邦最高裁判所は、ゴーマートの上訴をそれ以上検討することなく、却下した。
「トランプ大統領とその選挙対策本部に助言を行っていた他の関係者もまた、合同会議での副大統領の役割を提唱していた」
ホワイトハウスの内部や外側のその他の関係者もまた、両院合同会議において副大統領に行為主体性があるという説を推進した。副大統領の役割に関する問題は大統領執務室内での12月の会議中でも話題になった。トランプ大統領あるいは彼の首席補佐官のマーク・メドウズのどちらかが、大統領人事局長のジョン・マッケンティーにその件に関してさらに調査する任務を課した。マッケンテイーは大統領の側近の一人ではあったが、弁護士ではなく、関連する経験も有していなかった。とは言え、「副大統領は選挙プロセスに伴う問題に取り組む大幅な裁量を有している」と主張した1頁の覚書を書いた。
これは、1月6日前にマッケンティーによって草案が作成された唯一の1頁覚書ではなかった。その後、副大統領が争われている6州(具体的には、ウイスコンシン、ミシガン、ペンシルバニア、ジョージア、アリゾナそしてネバダ)からの選挙人票の半分だけを受け入れることを想定した「中間路線」を提案した。マッケンティーは、これがトランプ大統領の二期目を実現するという好ましい結果を達成する一方で、州の投票権をはく奪することを回避する一つの方法であると描いた。マッケンティーは、この覚書を「これは、ペンスに逃げ道を与えることからおそらく我々の唯一の現実的な選択肢です」と書いた添え書きと共に大統領に提出した。マッケンティーは、この判断が[ペンス副大統領が]その当時彼に求められていた選挙人を単に拒否すること等を行わないことが極めて明白であったという彼の判断に基づいていたと、特別委員会に告げた。
両院合同会議において副大統領が果たすべき役割に関する計画のもう一人の提唱者は、トランプ選挙対策本部のために動いていた弁護士であるジェンナ・エリスであった。彼女は、副大統領には認証された選挙人票の集計を遅らせる権限があると二つの覚書の中で主張した。トランプ宛ての2020年12月31日付の最初の覚書の中で、エリスは、「現在、選挙人の代表団に関する争いのある」6州からの「いかなる票も」、ペンスは「開票 すべきではない」と助言した。「この争いは州法と合衆国憲法が遵守されているかということを疑問視するための十分な合理性と法的根拠を提供する」と、エリスは主張した。副大統領と連邦議会が「その後に緊急選挙議会を開催するために必要とすることになる州議会からの対応を待つことになることから」、10日間の遅延を提案した。「いずれかの州が適時な対応を行うことができなかった場合、その州からのいかなる選挙人票も開票され、集計されることはできなくなる。」ペンス副大統領は、裁量権を行使するか新しい前例を確立することにはならないが、単純に合憲的に任命された当局者からの説明を待つだけであると、エリスは主張した。87
エリスは、「合衆国憲法上の選択肢」という主題で2021年1月1日にFOXニュースのホストであるジャニーン・ピローにこの覚書の内容をEメールで送った。そして、2021年1月4日、エリスは、「ペンスの選択肢」という見出しで同じ内容をFOXニュースの寄稿者であるジョン・ソロモンに送付した。
エリスは、トランプの大統領の最初の弾劾審理とその他の訴訟においてトランプ大統領を代理した外部弁護士であるジェイ・セクロー宛ての2021年1月5日付の二つ目の覚書に取り組んだ。エリスは再び、ペンス副大統領には票の認証を遅らせる権限があると主張した。
エリスは、副大統領は、最初の争われている州(アリゾナ)の順番に至ったときに、「選挙人の認証の最終判定が行われていなかった」ということを根拠に「単純に集計を中止すべきであること」そして、「州はしたがって行動しなければならない」ということを推奨した。
セクロ―は明らかに同意しなかった。「誰かが、副大統領が単純に『私はこれらの選挙人を受け入れるつもりはない』、副大統領には合衆国憲法に基づきそうすることの権限があると考えている。私は、実際のところ、それが合衆国憲法が想定していることであるとは思わない。」と、セクロ―は、彼のラジオショーの中で述べた。セクロ―は、副大統領は単に儀礼的で手続き的な機能を果たすだけであるとも付け加えた。
さらに、ハーシュマンは、この覚書についてセクロ―と議論をした。彼らは、エリスが「この件に関する助言を行う、あるいはトランプ大統領のチームが裁判所に提起しつつある異議申し立ての訴訟を行う資格や経験を持っていない」ということに同意した。ハーシュマンは、セクロ―がその覚書を大統領と共有したとは考えなかった。
(「5.2 トランプ大統領と彼の仲間は、1月6日の連邦議会での合同会議の前に副大統領に公然・非公然の激しい圧力を行使した」に続く)