6.14「ところで、私はみんなと一諸に行進すべきだ。」

トランプ大統領は、彼の支持者たちがエリプスから連邦議事堂まで行進する間、自身が個人的に支持者たちに現場で同行することを望んでいた。スタッフやイベント主催者カトリナ・ピアソンとの1月4日の会議で、トランプ大統領は、彼の支持者たちと一緒に行進したいという彼の望みを強調した。「ところで、私はみんなと一種に行進すべきだ」と、トランプ大統領が述べていたことをピアソンは、思い起こした。ピアソンは、トランプ大統領の述べたことを深刻に捉えなかったものの、彼が間違いなく参加者と一緒になりたかっただろうということを知っていた。ピアソンは、トランプ大統領が最初に車で立ち寄りを行い、次は、遊覧飛行を行ったことを指摘した。それはワシントンにおける2020年11月と12月の抗議についての言及であった。これらの先行したイベントの間、トランプ大統領は、彼の支持者たちにはっぱをかけるために、特別出演をした。いまや、1月6日が近づくにしたがって、トランプ大統領は再び彼の支持者たちが連邦議事堂で行進することから、現場で参加したいと思ったのだ。

大統領顧問たちは、そうしないようにと大統領を説得しようとした。ホワイトハウス上級顧問のマックス・ミラーは、大統領の安全に対する懸念から「その考えを直ちに拒絶した。」ピアソンは、これに同意した。しかし、トランプ大統領は固執し、左翼の反対抗議者たちによる想定される何らかの脅威から彼と支持者たちを護るために1万名の州兵を展開するというアイデアを提案した。ミラーは、再び大統領のアイデアを拒否し、そのイベントに州兵は必要ではないと述べた。ミラーは、その件ついてはさらなる会話はなかったと証言した。会議の後、ミラーは、ピアソンにテキスト・メッセージを送信して、述べた。「州兵と 行進のアイデアをつぶしたのはよかった。」すなわち、トランプ大統領は、少しの間、州兵に連邦議事堂への彼の行進を警備させることを検討したのであった。トランプ大統領は、連邦議事堂を警護する、あるいは両院合同会議の手続きを確保することを州兵に命じることはなかった。

大統領顧問たちは、大統領本人が行進することを説得して辞めさせたが、大統領の支持者たちが行進することを理解していた。集会に関するピアソンのアジェンダは、集会の後に抗議者たちが連邦議事堂まで行くという大統領の計画を反映していた。しかし、トランプ大統領は、第7章でさらに論じられているように、支持者の行進に本人が参加するというアイデアを断念することはなかった。

6.15「POTUS(合衆国大統領)は、狂人たちが好きだ。」

カトリナ・ピアソンは、エリプスでの集会の計画を手助けするにあたり、もう一つの問題に直面した。「盗みを止めろ」運動は、1月6日のイベントを促進することにおいてけた外れの役割を果たした。そして、その日が近づいてくる中で、それを主導している連中は、おそらくはトランプ大統領と同じ演台の上で第一級の演説を行うことを欲していた。ロジャー・ストーン、アレックス・ジョーンズそしてアリ・アレキサンダーらが全員、重要な演説を行う時間を狙っていた。ピアソンは、彼らが問題であることを知っていた。

特別委員会に対する彼女の証言の中で、ピアソンは、ジョーンズとアレキサンダーがジョージア州アトランタの2020年11月抗議の中で顕著な役割を果たしたことを含むいくつかの懸念を挙げた。この抗議は、普通の抗議ではなかった。「ジョーンズとアレキサンダーは、ジョージア州の首都で扇動的な発言を行っていた」と、ピアソンは説明した。ジョーンズとアレキサンダーが「州知事公邸を取り巻いたこと」や「連邦議事堂内に入ること」はピアソンを躊躇させた「ようなたぐいのこと」であったのかと特別委員会で問われ、彼女は、「まさにそのとおりでした」と回答した。ジョージアでの抗議の後、「盗みを止めろ」運動の組織化を手助けしたクレマーズ親娘は、ジョーンズとアレキサンダーの二人とは距離を置いたと、ピアソンは説明した。

しかし、さらなる問題があった。トランプ大統領は、1月6日のイベントに「盗みを止めろ」運動の指導者たちを参加させたがっていた。ピアソンがカイリー・クレマーに送ったテキスト・メッセージの中で述べたように、「POTUS(合衆国大統領 )は、狂人たちが好きだ。」ピアソンは、トランプ大統領が「彼を公然と徹底的に護った人々を愛した」ことから、これが事実であると信じたと述べた。しかしながら、大統領が彼らを「徹底的に」擁護したことは、明らかにピアソンを困らせた。

ピアソンは、ストーン、ジョーンズそしてアレキサンダーを依然として含めている登壇者のリストをスリムにしようとした。当初、彼女は、「最初の狂人名簿」を承認したコミュニケーション担当の副首席補佐官ダン・スカビーノによって拒否された。彼女は、イベントに「狂人たち」が参加する可能性、彼らのジョージアで果たした扇動的な役割そしてワシントンDCにやってくる人々が連邦議事堂で抗議することを計画していたことに懸念していた。ある時点で、彼女は、スカビーノのボスであるマーク・メドウズにテキスト・メッセージを送信し、「事態がかなり異常になっており、私は、確実に一定の指示が必要になっています」と書いた。

メドウズは、ピアソンに対して、状況をコントロールして、問題となる登壇者が現れる可能性を排除すべきだと告げた。ピアソンは、そうすることに同意した。しかし、大統領が、問題であり続けた。1月4日の彼らの会議中、ピアソンは、激しやすい可能性のあるこれらの人物たちのエリプスでの役割を最も小さくするようとトランプ大統領を説得しようとした。ピアソンは、彼らをイベント前夜にフリードダム・プラザで計画されていたイベントか、1月6日のワシントンDC における別のステージに登壇させることを提案した。彼女は、「過激派は主要な舞台に上げないようにしましょう」と、大統領に告げた。そして、「他の演説者たちに打撃を与える可能性のある重罪犯たちを登壇させないようにしましょう」と、大統領に助言した。

トランプ大統領は、依然として彼らを顔ぶれから全員排除することに乗り気ではなかった。大統領は、1月5日に登壇の機会をストーンに与えるようにピアソンに指示を出し、アリ・アレキサンダーに関するさらなる情報を求めた。スカビーノと議論した後 、トランプ大統領はまた、アレキサンダーに登壇機会を与えるようにと要請した。トランプ大統領は、大統領あるいはメインイベントと関係のないステージにアリ・アレキサンダーを登壇させるように指示した、とスカビーノは書いた。

最終的に、ストーン、ジョーンズそしてアレキサンダーという「盗みを止めろ」運動の指導者たちは1月6日のエリプスでの演壇には登壇しなかったが、彼らは、大統領のアレキサンダーに関する要望と矛盾することなく、他の計画されたイベントで演説を行った。「大統領の期待は、何か親密なイベントを開催させ、その後すべての人たちを連邦議事堂まで送ることだ」と、ジャステイン・カポラーレとテイラー・ブドウイッチ宛てのテキスト・メッセージの中でピアソンは説明した。カポラーレは、特別委員会に対する彼が最初に提出した文書の中でこのテキストやその他を削除した。そして、彼は、それらの事実を他の証人が明らかにした後になって明らかにした。

しかしながら、トランプ大統領に加え、その他の扇動的な声に対しても、エリプスのステージでの時間が与えられた。特別委員会は、トランプ大統領の補佐官らがジョン・イーストマンやルドルフ・ジュリアーニの二人が選挙不正関する嘘の主張を行っていたことを理由にこのような人物を登壇させることについて大統領に警告を与えていたことを把握した。この二人は、もちろん1月6日に最終的に大統領とステージを共有することとなった。メドウズ自身が、彼らが演説を行うことが許されるべきであると指示をした。


6.16 2021年1月5日:「トランプ砦」

「盗みを止めろ」連合は1月6日の「エリプス」でのステージで演説をする機会を与えられなかったものの、その指導者たちは、前日に多くの発言する機会を与えられた。そして、彼らは、両院合同会議の前にワシントンDCで群衆を激怒させるために彼らのプラットフォームを利用した。アリ・アレキサンダーは、連邦議事堂の前で 「マムズ・フォア・アメリカ」が主催したイベントで演説を行った。アレキサンダーは、彼の登壇は水面下では否定されていたものの、次ぐ日にトランプ大統領と同じステージに立てることを誇りに思うと主張した。

「我々は、反逆しなければならない。私はワシントンDCを去ることになるかどうかさえも分かっていない。我々は、ここを「トランプ砦」にするかもしれない。いいか?」アレキサンダーは、連邦議事堂の前に立って演説した。「我々はあなたのために闘い続けるつもりです。大統領閣下」アレキサンダーは、彼のツイッターで、「トランプ砦」や「#OccupyDC(DCを占拠しろ)」のようなフレーズやハッシュタグを使い、トランプ大統領の支持者がワシントンDC地区を占拠すべきであるというアイデアを拡散した。

アレックス・ジョーンズとロジャー・ストーンは、連邦最高裁判所の前で「バージニア・ウィメン・フォア・トランプ」主催の別のイベントで演説を行った。「ワン・ネーション・アンダー・ザ・ゴッド」という名称の祈りの集会であったあったそのイベントは、アラン・ホステッタ―とラッセル・テーラーが運営する「スリー・パーセンターズ」に関連しているグループである「アメリカン・フェニックス・プロジェクト」が共同で主催した。

ジョーンズは、選挙が盗まれたことに関する彼の主張を繰り返し、参加者は「悪魔の世界政府」に対して立ち上がったと主張した。ストーンは、「盗みを止めろ」を唱えることを主導し、「選挙不正の証拠は単に増えているだけではなく、圧倒的であり、切実である」と主張した。「トランプ大統領は、合法的に投票された票の過半数を勝利しており、選挙に勝利した」と述べた。ストーンの発言によれば、西洋文明の運命そのものが危機に瀕している。「はっきり言おう。これは、共和党員と民主党員との戦いではない。リベラルと保守派との戦いでもない。これは、アメリカ合衆国の将来に関する戦いである。それは、我々が知っているところの西側文明の将来に関する戦いである。それは、光と闇の間の戦いであり、信心深い人々と無神論者たちとの戦いである。それは、善と悪との間の戦いである。そして我々は決して失敗しない。敗北したならば、我々は、数千年間の暗闇に踏み入れることとなるだろう。」

ストーンは、「我々は暴力を否定する。そして左翼の連中は暴力的である。」と主張し、「我々が終わりだというまでは何も終わらない。そして勝利は我々のものだ。」と言い張った。テイラーとホステッタ―の二人とも演説を行った。ホステッタ―は、群衆に「我々は戦争中である。」と告げた。テイラーは、「戦い、血を流すこと」を約束し、「子に負選挙が正されるまで愛国者が我々の平和な人生に戻ることはないだろう。」と誓った。

また長い集会が、ワシントンDCのペンシルバニア通りのオープン・エアー・スペースでも開催された。そこは、ホワイトハウスと連邦議事堂との間を一直線に結ぶ位置にあり、抗議を行う象徴的な場所である。ストーン、ジョーンズそしてアレキサンダーは、全員1月5日の夕刻に「フリーダム・プラザ」に姿を見せた。

ストーンは、その日の速い時間に述べた終末論的な彼の話を繰り返し、集会参加者がこの国の将来に関する「暗闇と光」との間の壮大な戦いに巻き込まれていると主張した。「彼らには1776年(訳注:アメリカの独立宣言の年)は常に選択肢であることを知って欲しい。ディ―プステートで堕落するこれらは、我々が望んでいるものを我々に与えるか、さもなければ我々はこの国を閉鎖する」と、アル・アレキサンダーは述べた。アレックス・ジョーンズが登壇したとき、彼は、「それは、1776年だ」と叫んだ。
その晩のもう一人の演説者は、マイケル・フリン陸軍中将(退役)であった。フリンも、群衆に向かって告げた。「明日、明日だ。私を信じて欲しい。我々が今晩立っている土壌に立っている、そして明日もこの土壌に立っているアメリカ国民の皆さん、これが、我々が戦ってきた、我々が求めて戦った、そして将来において闘う土壌だ。」フリンは、連邦議会議員に対して話かけて、述べた。「今夜弱いと感じている諸君、体内に道徳心を持ってない諸君、今晩それらをわずかでも持って欲しい。」


6.17「我々は、一緒に盗みを止めるのだ」

1月5日の夕方、トランプ大統領は、次ぐ日のエリプスで行うことになっていた演説の編集を行った。スピーチライターのチームは、その前日に彼の演説について作業を開始した。スピーチライター・チームが懸念していたにもかかわらず、ジュリアーニ等からの根拠のない主張が演説原稿に盛り込まれた。1月5日に配布された当初の演説原稿は、群衆が連邦議事堂に行進することを強調した。ホワイトハウス内の他のメンバーから聞いたことに基づき、スピーチライター・チームは、トランプ大統領が彼の演説を集会参加者に対して連邦議事堂まで行くように告げるために利用するだろうと予想した。

その晩、トランプ大統領は、主に彼のスタッフメンバーとトランプ大統領の個人的なツイッター・アカウントの担当者であったホワイトハイス副首席補佐官のダン・スカビーノから成る彼の広報チームで即興の会議を行った。ひどい寒さにもかかわらず、大統領は、「フリーダム・プラザ」にいる彼の支持者たちの歓声と音楽とが聞こえるように、「ローズガーデン」側のドアを開いておくようにスタッフに命じた。「フリーダム・プラザ」で奏でられていた音楽は、非常に大きな音であったことから、「大統領執務室内が震えているのを感じるほどであった。」

トランプ大統領はそれを聞きつつ、ツイートを行い、ある時点で大統領執務室から彼らの声を聞いていると支持者に伝えた。彼のスピーチライターたちはこれらのツイートを、その晩のさらに遅くに配布された演説の第二稿に反映させた。次の文言が両方のツイート・フォームに現れ、演説に採用された。「ここにいる我々全員は、我々の選挙の勝利がつけあがった過激な左翼民主党員によって盗まれるのを見たいと思わない。我が国はもう十分だ。彼らはもうこれ以上奪いことはできない。我々は、一緒に盗みを止めるのだ。」

スタッフとの話をする中で、トランプ大統領は、「連邦議会が彼の有利に何らかの行動をするであろう」ということに依然楽観的であるように思われた。その会議に参加したホワイトハウスの写真家は、翌日自分が連邦議事堂まで行くべきであるとトランプ大統領が再度述べており、そこに行くまでにベストのルートについて質問していたことを思い起こした。大統領は、「我々がいかにRINO(名ばかりの共和党員)に正しいことさせ、明日を素晴らしい日にすることができるのか」に関するアイデアをスタッフにたっぷりとばらまいたのだ。その晩、大統領執務室に居たサラ・マシューズ副報道官は、連邦議会の共和党員議員に対して、彼らが選挙を認証するよりも選挙人票を州に送り返すことをトランプ大統領が欲していたと理解した。マシューズは、だれもトランプ大統領の発言に対して当初発言をしなかったのを思い起こした。それは彼らがトランプ大統領の発言を「処理」しようとしていたからであった。

最終的に、ディーレは、選挙が盗まれたという大統領の主張ではなくて、大統領の政権の業績に大統領の演説の焦点を絞るべきであると提案した。しかし、トランプ大統領は、ディーレに対して、彼らが多くの実績を成し遂げた一方で、群衆は選挙が盗まれ、不正が行われたことを知っているので、翌日には群衆にはハッパがかり、彼らは怒るだろうと告げた。トランプ大統領は、群衆の発言を聞くことができたので、彼らが怒っていることを知っていた。もちろん、大統領は、彼らの怒りをたきつけたことに他の誰よりも責任があった。
トランプ大統領は、その日の晩の終わりに、翌日の集会に何名が参加することになるかをある補佐官に尋ねた。その補佐官は、よくわからないと回答したが、親トランプの人たちがワシントンDCに向かう飛行機でスローガンを唱えているのをツイッターのビデオで見たと、大統領に告げた。トランプ大統領は、それをスカビーノと共有するように告げた。

「我々は彼らにあなた方の声を黙らせることを許さない。我々は、それを起こさせない。私はそれを許さない」と、トランプ大統領は、「エリプス」の演壇から群衆に語り掛けた。彼の支持者たちは、「トランプのために闘え(fight for Trump!)」と歓声を上げ、大統領は彼らに感謝した。

トランプ大統領は、彼の支持者が怒っていたことだけでなく、またそのうちの何名かが武装していたことも知っていた。彼は、ときにアドリブを述べ、意図的に彼らの憤りをさらに掻き立てた。ある時点で、トランプ大統領は、「そして我々は戦う。必死で闘うのだ。そして、あなたたちが必死で戦わなかったなら、あなたたちはもはや国を持つことはなくなる。」と、述べた。「戦う」という用語は準備された原稿には2回しか現れなかった。トランプ大統領は、「エリプス」での彼の演説中にその言葉を20回発し続けたのだった。

トランプ大統領は、連邦議会の両院合同会議が開催される日に武装した過激派と陰謀論者を含む群衆をワシントンDCに招集した。その後、トランプ大統領は、その同じ群衆に対して連邦議事堂まで行進し、「戦え」と告げた。群衆は、明らかにそのメッセージを受け入れた。


(「第7章 187分間の職務怠慢」に続く)