5月8日、毎日新聞は、共同通信からの配信として、「トランプ氏支持率最高に 46%、ロシア疑惑や好況影響か」と題する記事を掲載しました。その内容は、以下のとおりです。
「毎日新聞2019年5月8日 08時24分(最終更新 5月8日 10時26分)
米世論調査会社ギャラップは7日までに、トランプ大統領の支持率が46%となり、ギャラップによる大統領就任以来の調査で最高を記録したと発表した。調査期間は4月17~30日。ロシア疑惑捜査報告書の公表を受けたトランプ政権による「勝利宣言」や、好調な経済が影響しているとみられる。
共和党支持者の支持率は91%で、2018年11月の92%に次ぐ高さ。民主党支持者も過去最高だった17年4月と同じ12%が支持すると答えた。無党派層の支持率は37%。全米の成人1024人を対象に調査した。(共同)」
この記事を読んで皆さんはどのような印象をお持ちになったでしょうか。端的に言って、モラー別検察官によるロシア疑惑と大統領による司法妨害についての捜査報告書が一部未開示の状態ではあっても公開されたことで、特別検察官の捜査が終了し、トランプ大統領が勝利し、一件落着したことで、支持率が回復したのだと受け止めているのではないでしょうか。
しかし、実際には、この報道はギャラップ社がこの結果を発表した際に指摘している極めて重要な事実を端折った形になっています。そのことを知らずにこの報道だけを読んだ読者は、実際にアメリカ政治で進行している事実を知らないまま誤った印象を持つことになってしまいます。ギャラップ社のこの世論調査の結果についてのプレスリリースには、以下のコメントが付されています[i]。
“The latest rating extends theupper limits of President Donald Trump's narrow approval rating range by onepercentage point, from his previous range of 35% to 45%. In addition to theinitial interpretation of the Mueller report, which Trump claimed vindicatedhim from charges that he had colluded with Russia, the economy has offered severalreasons for Americans to look more favorably on Trump. These include a strongjobs report on April 5, news that U.S. gross domestic product increased by 3.2%in the first quarter, and U.S. stocks reaching new highs.
More negative news for Trump about theMueller investigation has appeared since Gallup's latest field period ended,including revelations that Mueller had disputed Attorney General William Barr'ssynopsis of the report, claiming that he had misled the public. This revelationhas led to questions over Barr's honesty in recent days as well as demands fromsome Democrats that Barr resign -- but any public reaction to that would not bereflected in the latest approval rating.
(拙訳:「直近の評価は、ドナルド・トランプ大統領の狭い支持率の範囲をこれまでの35%から45%という範囲からその上限を1パーセントポイント引き上げた(筆者注:46%へと)。ロシアと共謀したという容疑を晴らしたとトランプが主張するモラー報告書の最初の解釈に加え、アメリカ国民にトランプについてより好意的にみさせるいくつかの要因を経済が提供した。これらの要因には、4月15日の力強い雇用統計、米国国内総生産(GDP)の第1四半期おける3.2%伸び、さらに新高値を付けている米国の株価がある。
モラー特別検察官がその報告書についてのバー司法長官の梗概(筆者注:3月29 日に連邦議会と国民に公表されたバー司法長官による4頁の書簡)に異を唱え、バー司法長官が国民を誤解させたと主張していることをはじめとする、モラー捜査に関するトランプにとっての不利なニュースは、ギャロップの最新の調査が行われた期間終了後に発生した。このことが明らかになり、ここ数日間では、バー司法長官の正直性についての疑問が提起され、一部の民主党議員からのバーに対する辞任要求が行われているという事態になっている。しかし、これらに対する国民のいかなる反応も、直近の支持率の評価に反映されていない」)
要するに、この世論調査と同時並行的にかなり重要な問題が発生しているが、この調査はそれを反映していないものであることをギャラップ社がはっきりと表明しているにもかかわらず、共同通信とその配信を受けた毎日新聞は、日本の読者にその事実は伝えてはいません。この記事は、日本の読者に誤解を招くものとなっており、その結果、読者がモラー報告書以降より激しくなってきている連邦議会民主党とトランプとの間の対立について見過ごすことになりかねないという効果を持っていると思われます。
ちなみに、以前にも本ブログでご紹介したことのあるクイニピアック大学の5月2日発表の世論調査(4月26日から29日の間に実施、全国の有権者1044人が対象)ではどのような結果になっているでしょうか。
トランプ氏の大統領としての支持率は、支持は41%(前々回の3月5日は38%)、不支持は55%(同55%)という結果で、支持率は3%ほど改善しましたが、不支持は相変わらずという状態でした[ii]。トランプ大統領の支持率がこの期間中にギャラップ社の調査も含めて改善したことの背景には、バー司法長官による巧妙な世論誘導の影響があると思われます。
今後のアメリカの政治においては、モラー報告書の全面的開示要求(下院司法委員会)、バー司法長官に対する議会侮辱決議(下院)、財務省に対するトランプ氏の納税申告書の開示要求(下院歳入委員会)、ホワイトハウスによる不適切なセキュリティクリアランスの問題をめぐる証人喚問要求(下院監督・政府改革委員会)等、様々な分野での下院民主党による全面的な攻勢が活発化し、トランプ大統領に対する追及が激しくなり、弾劾の動きも再燃する可能性すら考えられます(これまで弾劾について慎重な発言を繰り返してきたペロシ下院議長は、5月8日のワシントン・ポスト紙のライブイベントでのインタビューに答えて、トランプ大統領が自ら弾劾を招く妨害行為を日々行っていると批判しました[iii])。