浩介「しばらく預かるって言って来たんだけど――しばらくってどのぐらい? 普通。1週間? 1ヶ月? 数ヶ月?」
有希「うーん、まぁ半月以上?」
浩介「だよな、せいぜい」
有希「なんてお母さん」
浩介「1週間いればって」
有希「ふーん」
浩介「正確には1週間経ってない。5日。それを都合よく――まぁそんなもんだ、みんな(佳代を見る)自分にいいように解釈して、思いたい方に話をつくって、だから食い違う。揉める。こじれる。他人も自分も結局――それだけわかるようになればいいよ。あとの勉強はいい。あとのはお飾り、おまけみたいなもんだ」
有希「そんなことないよ」
浩介「大事なのはそれくらいで」
有希「それじゃ食ってけないよ(佳代に)帰ったらちょっとやろうね勉強。やらないと私らのせいにされっから」
佳代「うん(目を伏せる)」
●夜の海
暗闇。雨はやんでる。灯台の光が見える。潮騒。それが遠のき、
女子生徒Aの声「なんかムカつくんだよね、優等生キャラ? 演じてる感じ?」
●佳代の中学校
昼休みの廊下。生徒たち。
女子生徒Bの声「わかるわかる。前のめりなんだよね、なんか」
●佳代の教室
佳代がひとり席にいる。文庫本を読んでいる。
女子生徒Aの声「ほら体育祭で負けた時もさ、しょうがないよがんばったよとか言うけど自分だってミスあったじゃん」
女子生徒Cの声「ドンマイとかね。完全に私らのミスって言いたげな? 上からの感じ?」
女子生徒Bの声「そうそう。どの立ち位置で言ってんだよって」
女子生徒Aの声「ウザいわぁ」