『風立ちぬ』観てきました。感想をちょっと書きます。これはネタバレ云々というタイプのストーリーじゃないとは思うけれど、内容が知りたくない人は映画を観てから読む感じでw
僕の感想としてはいつものジブリより良かったと思うし、想像していたよりずっと完成されていたなという感じ。
技術的なことを考えても、これは流石という他にない。シンプルな話ではあるけれど、精神構造というか、見た人がどう考えるかというパターンは無数にあると思う。
そして、これは深い読解の出来る人には非常に苦しいという一面がある映画だと思う。
僕は先に述べたとおりこれを肯定的に捉えたけれど。否定的な捉え方をしている人の気持ちも解らないでもない。
まあ例外として「改憲否定派」を明言した監督がまるでゼロ戦開発者を犠牲者のように描くのはどうなのかとかいう話が上がっている。コレに関しては僕は正直「いいすぎ」すなわちあまりに主観的に過ぎると思う。開発者が戦争責任や犠牲者を生んだ責任を負うべきなんて話は僕は納得がいかない。そもそも論の結果論みたいな、ちょっとちぐはぐで頓珍漢な考えだと思ってるしね。
まあそのレベルの極端な話は置いておいて、まあそこまでいかない否定的な意見っていうのはある意味「中立的」に観れていて、凄いと思う。ジブリ映画、宮崎作品、そういう視点ではどうしても誇れる日本文化の巨匠の作品なのだから「善い」ものであるという先入観があるだろうしね。
この「物語」では、夢を追うために、あるいは美しいものを求めるために、心の面でも物質的な面でも犠牲が生じていることは確かだと思う。ピラミッドの話が出てくるけれども、才能ある者が夢を追う一方、他の者が苦しんでいる。そういう背景が常にある。
戦闘機一つ作る金を分配すれば当時の貧しい人間は何人でも救える、だとか、仕事に傾心しなければ病気の妻にもっと優しくできる、だとかね。
だからこの話の本質は、僕には「“才能ある者が夢を追う一方、他の者が苦しんでいる”ことを覚悟して夢を追ったということにどう感じるか」だと感じた。
そういうある種の残酷さは、いくらでも見つかった。
二郎は菜穂子を褒めるときに「きれいだ」としか言わない、鯖の骨の曲線に美しさを感じる、飛行機に美しさを感じそれを求める、この辺りを見るとただただ美しさが全ての薄情な人間のようにも思える。
妹を待たせておいていつもそっけない感じであるのもそうだし……思えば作中でも二郎がそういう性格であることは十分に描かれてる。
ただそれを酷評したいのだったら、それが「描くべきじゃなかったミス」だった場合のみだと僕は思う。あそこまで、一部の人間には非常に解りやすいくらいに「残酷さ」を際立たせて、その一方で非常に優美な雰囲気とストーリーもぶつけているのだから、僕はアレも含めて作品としたかったのだと思う。心的「リアル」というか、単純に感動するストーリーにしたかったわけではないし、監督自身作りたいものを作ったという色が強い作品だと語っているのだから、おそらくそこまで解った上で何を感じるかが求められているのではないか。
だから否定的見解も的を射ているし、全部含めて良しとする見解も的を射ているんじゃないかな。
極論や酷評は、表面的な感じ方に身を任せているんだと思う。これまでのジブリ作品は感じたままに自由に、でいいと思うけれど今回に関しては理解することが前提じゃないかな。最初から分析しようと思ってみた人には、是非はともかくそれぞれの見解があると思う。
そしてその見方を僕は強く勧める。
僕にとってはとてもいい映画でした。
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