『慟哭』レビュー | 哲学のプロムナード

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慟哭 (創元推理文庫)

著者: 貫井 徳郎


 

内容(「BOOK」データベースより)

連続する幼女誘拐事件の捜査は行きづまり、捜査一課長は世論と警察内部の批判をうけて懊悩する。異例の昇進をした若手キャリアの課長をめぐり、警察内に不協和音が漂う一方、マスコミは彼の私生活に関心をよせる。こうした緊張下で事態は新しい方向へ!幼女殺人や怪しげな宗教の生態、現代の家族を題材に、人間の内奥の痛切な叫びを、鮮やかな構成と筆力で描破した本格長編。


・レビュー

端的に言って完成度の高い作品。
ミステリとしてはそのトリックを見破ったとしても面白い。
少し前に読んだある小説のお陰でトリックは完全に看破したが、衝撃こそ減ったものの、内容が良かっただけに拍子抜けした感じはなかった。
複数のテーマとそれぞれのテーマにおける人間の心理の描写は感嘆する。
身近な感情から非日常的な感情まで非常に上手く描写されていて、最後の章は感情移入して登場人物の気持ちが伝わってくる。
これこそ「小説」である。