俺が選ぶライトノベル100選」のスレより、ライトノベル読書寸評。
あらすじはamazonから引用。

こうして彼は屋上を燃やすことにした
ガガガ文庫

あらすじ
第5回小学館ライトノベル大賞・ガガガ大賞受賞!!

彼氏にフラれた私・三浦加奈は、死のうと決意して屋上へ向かう。
けれどそこで「カカシ」と名乗る不思議な少女、毒舌の「ブリキ」、ニコニコ顔の「ライオン」と出会う。
ライオンは言う。「どうせ死ぬなら、復讐してからにしませんか?」
そうして私は「ドロシー」になった。
西の悪い魔女を殺すことと引き替えに、願いを叶える『オズの魔法使い』のキャラクターに。
広い空の下、屋上にしか居場所のない私たちは、自分に欠けているものを手に入れる。
第5回小学館ライトノベル大賞・ガガガ大賞受賞作。
心に残る、青春ジュブナイル。


 オズの魔法使いが下敷き。てにをはが少し甘い。ガガガ大賞受賞で、近年まれに見ぬジュブナイルラノベ。ミミズクより少し劣るけど、魅力的な小説。スタートは弱いものの、終盤の吸引力は強い。ガガガにはこの手の小説を手がけた編集者が居ないのでは? そう思えるくらい、突き抜け方の惜しい作品だった。筆力は低いがセンスを感じさせる尖った作品だった。

キャラクタ B
オリジナリティ B+
ストーリー B-
筆力 C
完成度 A-

総合7/10点
こうして彼は屋上を燃やすことにした (ガガガ文庫)こうして彼は屋上を燃やすことにした (ガガガ文庫)
(2011/05/18)
カミツキレイニー

商品詳細を見る



キミとは致命的なズレがある
ガガガ文庫

あらすじ
第5回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞!!

海里克也は保健室で目を覚ました。なぜここにいるのか?
保健医の鏡司によると、階段で転んで気を失っていたらしい。……覚えていない。
十歳のとき、大きな事故で両親と記憶を失ってしまった克也には、ここ数年の記憶しかない。また記憶が消えてしまったのだろうか。
「見えないモノが見えてないか?」そんな司の問い掛けにドキリとする。
――自販機の陰から伸びる少女の姿態――突如現れ克也を責める不幸の手紙――少女の死の映像と命を狩る指の感触。
これは幻覚? それとも――?



 ジャンルはライトノベルミステリ。新しい形、手法でのミステリを意識しすぎたのか、少々複雑(煩雑?)になってしまっていた。そう感じるのは、問題と解決とのスパンが開きすぎていたからかもしれない。
 最後の精神科医の手記のようなものでのネタバレは、わかりやすいが安易だった。物語の上で解決を伝えられるかが、この小説の壁だったように思う。筆力はまずまず。もう少し削ったほうがテンポがいいかな、という部分もある。「殺す」の考え方がやや甘い。もう少しカタルシスがあれば、ライトのベルとして成功したかもしれない。

キャラクタ B-
オリジナリティ A
ストーリー C
筆力 B-
完成度 B
総合6/10点
キミとは致命的なズレがある (ガガガ文庫)キミとは致命的なズレがある (ガガガ文庫)
(2011/05/18)
赤月 カケヤ

商品詳細を見る



シロクロネクロ
電撃文庫

あらすじ
「オレは死ぬ前に一度くらい、女の子とえっちしてみたかったんだよおおおッ!!」そんな強い未練を糧に普通の高校生・不二由真は不慮の死からゾンビとして蘇った。彼を蘇らせたのは善い屍霊術師・シロネクロの美少女、高峰雪路。彼女は秘宝“死者の書”を悪い屍霊術師・クロネクロに狙われ、巻き添えで由真が死んでしまったことを教える。そして、由真を守るために「一緒に暮らしなさい」と命じるのだった。その言葉に喜ぶ由真だったが、欲望を満たすと成仏してしまうためえっちな行為は禁止と知って悶絶する。女の子との楽しい共同生活のはずが、さらなる大波乱に巻き込まれてしまい!?第17回電撃小説大賞“大賞”受賞作。



 多方面で「酷い」と噂される小説。酷いと言われるわりには酷くはない。小説としての評価と物語としての評価はまた別だということなのだろう。
 筆力はないように見えてある。舞城のような文体(引き合いに出すのは心苦しいが)でスピード感がある。擬音をわざとらしく使っている点が鼻につくも、それがスピード感を演出する不可欠な要素となっている。
 物語のスジは、いままであったネクロマンシーの焼き直し。にもかかわらず充実すると死ぬ+エロい妄想で回復という凄まじい設定のため面白い。おまけに、相手が死ぬ時にその相手の意識が主人公に流れ込むという特典付き。これはかなり好得点。コメディ小説なのに、カタルシスを覚えることに驚き。 難癖をつけるなら、ストーリーが普通なことくらいだった。

キャラクタ 主人公A ヒロインはC
オリジナリティ B+
ストーリー C
筆力 B+
完成度 A-

総合8/10点
シロクロネクロ (電撃文庫)シロクロネクロ (電撃文庫)
(2011/02/10)
多宇部 貞人

商品詳細を見る



[映]アムリタ
MW文庫

あらすじ
(第16回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞 受賞)

天才、最原最早。彼女の作る映像には秘密があった。付き合い始めたばかりの恋人を二週間前に亡くした彼女にスカウトされた二見遭一は、その秘密に迫るが――。
芸大の映研を舞台に描かれる、異色の青春ミステリ!



 MWということで、キャラ立ちはラノベのものとはまるで違う。一般小説的であるにもかかわらず、描き方はラノベ的手法であることが、この賞の微妙な所。
 筆力は高い。違和なく文章が頭に入るレベル。物語を色づけする映画の話もよい。
 日常ミステリなのかと思ったら、謎解きが出てくる。この謎解きが微妙。この謎解きのない結末が望ましいように思えた。ラノベとして考えるなら高得点。一般として考えるなら微妙だ。
 一般としての評価かラノベとしての評価か、判断に困る位置にある文庫だ。一般として読むなら少し物足りないし、逆にラノベとして読むには少し刺激が足りない。バランスが非常に難しい文庫かと思う。

(余談だが、死んだと思っていた先輩は実は主人公で、実は全員最早に操られていた、というオチだったらミステリとして最高だった)

キャラクタ B-
オリジナリティ B-
ストーリー A-
筆力 B
完成度 C
総合得8/10点
[映]アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1)[映]アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1)
(2009/12/16)
野崎 まど

商品詳細を見る



ALL YOU NEED IS KILL
スーパーダッシュ文庫

あらすじ
「出撃なんて、実力試験みたいなもんじゃない?」敵弾が体を貫いた瞬間、キリヤ・ケイジは出撃前日に戻っていた。トーキョーのはるか南方、コトイウシと呼ばれる島の激戦区。寄せ集め部隊は敗北必至の激戦を繰り返す。出撃。戦死。出撃。戦死―死すら日常になる毎日。ループが百五十八回を数えたとき、煙たなびく戦場でケイジはひとりの女性と再会する…。期待の新鋭が放つ、切なく不思議なSFアクション。はたして、絶望的な戦況を覆し、まだ見ぬ明日へ脱出することはできるのか。



 スーパーダッシュ文庫から出ているのに、ライトノベルじゃない。内容はループ+ミリタリ。普通の素材なのに調理方法がすごく巧い。過説明にもならないし、省説明にもならない。尺もきちんと考えられている。マルドゥック的立ち位置でハヤカワから出たほうが納得できたかも。編集部はこれだけの作品をよくコントロールできたな、と思う。現代魔法の作者だとは思えない内容。マルドゥックを読んで以来のSF作品における激しい興奮を味わった。すばらしい作品だった。

キャラクタ C
オリジナリティ C+
ストーリー A
筆力 A
完成度 A

総合10/10点
All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)
(2004/12/18)
桜坂 洋

商品詳細を見る


おまけ

鬼物語
講談社BOX
あらすじ
アニメ「傷物語」劇場映画化、大・決・定!
阿良々木暦の影に棲む吸血鬼・忍野忍。彼女の記憶から呼び覚まされた、 “怪異を超越する脅威”とは…!?
美しき鬼の一人語りは、時空を超えて今を呑みこむ―!!



 冗長的。最近の西尾作品は持ち味である「無駄」におもしろみが無くなってきている。おおよそ3割は面白いのだが、ワナビ(小説家志望)じゃないんだから……。プロ作品としてどうなのか? 疑問に思う。しかしラストの50ページはやはり、西尾だな、と唸らされる展開が待ち受けている。びしっと締めるところは締めるぞ、と。こここそがワナビとの違いか。

(評価なし)
鬼物語 (講談社BOX)鬼物語 (講談社BOX)
(2011/09/29)
西尾 維新

商品詳細を見る



つづく
俺が選ぶライトノベル100選」のスレを9月半ばに見て、推すなら読んでみようと思い立って実行してみた。

 ここに提示されている作品だが、私が既に読んでいるものもある。表紙が生理的に受け付けずどうしても読めないものもある。それに関しては100選から外れて貰うこととなった。

 まず評価だが、読んだ後の寸評に、キャラクタ・オリジナリティ・ストーリー・筆力・完成度、総合得点を付ける、ガガガ小説大賞寸評フォーマットを取っている。
 採点は私の過去のライトノベル読書履歴からの相対評価となる。

 総合得点の目安としては以下の通りとなっている。

1~3点=人前で読むと笑われる作品。小説としての最低ラインをクリアできなかったラノベ。

4~6点=小説としての最低ラインをクリアした作品。独自のオリジナリティを感じられるのはこの辺りから。6点に向かって人に紹介しても(一応)恥ずかしくないレベルとなる。

7~8点=非常によくできた、ラノベ界を引っ張るに相応しい作品。新しいラノベの流れが生まれる。そう感じさせられる作品レベル。

9~10点=滅多にお目にかかれない作品。一般文芸でも十分通用する筆力と構成量。十代にも通用するリーダビリティを持っており、文章は平易で読みやすい。十代の世界観価値観を一変させるほどの潜在力を秘めた作品。

 まだ100冊読み切っていないが、寸評が十分溜まってきたので、随時更新していこうと思う。
 今日はねごとカロンを紹介します。

 ねごとは【第1回閃光ライオット】において、審査員特別賞を受賞してから二年後の2010年にデビューしたガールズバンドです。


  早速話が脱線します。


 今年で四回目になる閃光ライオット。過去の受賞者で秀でたアーティストをピックアップいたします。
 第一回ではGalileo Galileiがグランプリを受賞。
 第二回では関取花が審査員特別賞を受賞。
 第三回ではNaked blue starが準グランプリを受賞。

 ……おわかりいただけましたでしょうか?(もしわからなければ、動画サイトでの視聴をお勧めします)
 閃光ライオットでは毎年1組以上、とんでもない才能を秘めていそうなアーティストが、必ず現れるのです。
 閃光ライオットは現在のアマチュアバンドの賞において、私の中ではもっとも評価の高い賞なのです。


 話を戻します。


 さて、審査員特別賞を受賞したねごとですが、演奏は非常に残念で、とてもうまいとはいえません。
 ですがそれは基礎的なスキルが不足しすぎているからではなく、目指しているポイントがあまりに高レベルだからなのです。

 ボーカルはほんのり椎名林檎風味で、心地よいハスキー具合です。息が抜けるときに甘くかすれるのがなんともいえません。

 リズムはスリップビート気味で、けど完全にスリップしない。この不安定なビートがカロンの曲の雰囲気に非常にマッチしている。

 メロディは一度聞けば覚えられるくらいキャッチーです。

 ボーカルの音の隙間に入ってくるキーボードの音色も魅力的です。

 もったいないのが、ギターとベースが、ボーカル・ドラム・キーボードに完全に押されてしまっているということ。もう少しやりようがあるのに、と思ってしまう。

 個々のスキルに関しては、プロとして活動する中で十分にレベルアップできる部分なのでまったく心配はしておりません。
 逆に、一番心配なのがチャットモンチーやいきものがかりのように、デビュー当時にあったはずの遊びがなくなってしまうこと。そこだけはなんとしてでも、守り抜いてもらいたいです。

 ねごとは10年代前半で一番天才的な新人アーティストです。

 (いささか早すぎる評価ですが……。けれどそれくらいの潜在能力はあります。)