薬缶が僕を呼んでいた。挽き終わった珈琲豆で珈琲を入れた。珈琲豆から入れた珈琲は一味違った。





夏と言えば、夏海の誕生日は夏が終わりかけた時期にあった。夏海の誕生日を知ったのは高校一年の時の、僕の誕生日が過ぎてからだった。夏海の誕生日は八月二十六日だった。


高ニの夏休みも終わりに近づいた頃だった。僕は誕生日プレゼントを渡すために、夏海の家に行こうとした。自転車の前かごにプレゼントをいれ、家を出発した。夏の終わりと言っても、まだ夏の暑さが残っていた。僕は自転車を走らせた。蝉の鳴き声が何処からか聞こえた。橋を渡り、通いなれた道を走った。夏海の家が小さく見えてきた。
’もう少しだ’
僕は心の中でそう想った。胸の鼓動が少しずつ高鳴り始めた。やっと夏海の家の前に着いた。自転車を降り、塀の所に自転車を停めた。僕は右手で夏海の家の呼び鈴を押した。
‘ピンポーン’
胸の鼓動がまた少し強くなった。
「はーい。」
夏海の声だった。夏海はインターホンのカメラで僕の顔を確認したのかすぐにこう言った。
「あっ、少し待ってて。」
「うん。」
階段をかけ上る音が聞こえた、そして、すぐにかけ下りる音がした。夏海は玄関から出てきた。夏海の右手には僕のハンカチが握られていた。
「これ、ありがとう。」
「アイロンかけてくれたんだ。」
「うん。」
夏海はニコッとした。
「今日は、どうしたの?」
「今日、夏海の誕生日でしょ?」
「うん、そうだけど。憶えていてくれたんだ。」
夏海は驚いた顔から、笑顔に変わった。
「これ、プレゼント。」
僕は右手に持った紙袋を差し出した。
「ありがとう、見ていい?」
「うん。」
夏海は笑顔で包みを開けていた。中にはハート型のネックレスが入っていた。
「ありがとう。」
嬉しそうな夏海の顔を見て、僕はとても嬉しかった。
「つけてみる?」
「うん。」
僕は夏海の首にネックレスをつけてあげた。
「どう?」
「可愛いよ。」
夏海の顔が少し赤くなった。
「エヘへ。」




無料カウンター