ある日、僕は夢から醒めた。何処か優しい空気が僕を包み、心地良い匂いがした。鳥が囀り、木々が揺れている。何だか、いつも日常で起こっている事なのに、此処には懐かしさが込み上げていた。窓の外を見ると、庭先にある桜の木の枝が風に揺れ、花弁が散り行くのが見えた。そうあれは三年前・・・





僕は桜の木の下に立ち、桜の花弁が風に吹かれ少しずつ散って行くのを見ていた。そう想えば、去年の春、この桜の木の下で夏海を見たのが僕らの出逢いだった。


「おはよう。」
僕の後ろから声がした、僕はすぐにわかった、それが夏海の声だと言う事に。振り返ると想ったとおり夏海がいた。
「おはよう。」
僕は少し笑い夏海にそう言った。夏海はそっと微笑み返してくれた。
「懐かしいね。」
「うん。」
「去年だったよね、私たちが出逢ったの・・・この桜の木の下で。」
「うん、そうだったね。」
僕は去年の出来事を想い出していたのかもしれない・・・。僕は夏海の横顔を見てから、長い髪を見ていた。風は静かに桜の木の枝を揺らしていた。
「そろそろ行こうか?新しいクラスが気になるし。」
夏海がそう切り出した。
「うん、そうだね。」
「一緒のクラスになれるといいね。」
夏海はそう言った。僕は嬉しくて、笑顔が零れていた。
「確率は4分の1だね。」
僕らの学校は一学年四クラスだった。
「なんか現実的な答えだね。」
「エヘへ。」
「それ私の。」
夏海は怒った口調で言ったが、顔は笑っていた。
「エヘへ。」
夏海は下を向いた。そう夏海には“エヘへ”と笑う癖がある。僕はそれが可愛らしく想えた。


僕と夏海は昇降口に着いた。そこは多くの生徒で溢れていた。昇降口を入ってすぐの所にある壁に、新しいクラスが書かれた紙が貼ってあった。僕は夏海より先に、夏海とまた同じクラスであることがわかった。僕は嬉しかった。夏海は目を細め、一生懸命その紙を見ていた。夏海は僕より少し目が悪かった。同じクラスになれたと言う事を夏海に教えてあげたかった。けど僕は、あえて夏海が気づくまで黙っていた。
「あっ、」
僕は夏海の方を向いた。夏海は笑顔で言った。
「また同じクラスだね。」
夏海は本当に嬉しそうだった。
「うん、よろしくね。」
「エヘへ、よろしく。」
僕は夏海と一緒に新しい教室に向かった。教室には見慣れた顔の人と、そうでない新しい顔の人がいた。まだぎこちない感じの教室は何処か新鮮に見えた。僕の席は一番後ろの席だった。また隣の席には夏海がいた。




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