もはやこれ以上、〈時〉が延ばされることはありえない。
 ここに純白の〈虚無〉がある。
 僕はこの〈虚無〉の白地に天地を創造しくりひろげよう。
 そしてこの〈虚無〉に僕の創造した天地のすべてを帰そう。
 〈ねむりびと〉に〈夢〉を見させるために。
 そして〈ねむりびと〉の〈夢〉を暴くために。
 それが僕のなすべきこと。そしてそれが僕のしてはいけなかったこと。
 これは僕と僕との〈間〉の孤独な戦い-終わりのないハルマゲドン。

 こうして僕は〈時〉を創った。そして僕はその〈時〉と戦う。
 ここに書かれることはやがてついには〈虚妄〉となり
 この空中楼閣は一瞬にして水泡に帰する。
 だが、はるかな神のつくりませしこの世界も
 やがては〈虚妄〉となり一瞬にして無に帰する。

 とすれば二人は無のなかで
 ついには一人となる〈時〉の鏡に映る双子である。
 だからこそ神は僕にのりうつる。
 これとてもはるかな神の創造の業の一部をなすのだから、
 神の業をここに転倒する僕の業も、
 神への挑戦のようでいて実は神の意にかなっている。

 僕が神に僕を見るように、神も僕に神を見るだろう。
 僕はこのようにして神の審判とけりをつけるために
 最後の戦いに踏み出したのである。
 だから、この虚幻のハルマゲドンは真実のハルマゲドンである。

 僕が徹底的にここで僕自身と独り相撲を演じることは、
 それ自体が神と最後の最後まで闘争することに他ならない。
 そして僕が徹底的にここで僕自身と独り相撲を演じることで、
 神もまた徹底的に神自身と独り相撲を演じ始める。

 そうすると僕たちはどんどんお互いに似てくる。
 僕が僕にどんどん近づいてゆけば、神も神にどんどん近づいてゆく。
 するといつかはくるりと神と僕は入れ替わってしまう。
 そしてついには見分けがつかなくなる。
 そしてそれは今ここにおいて既にそうなのだ。

 狂おしいことだ。
 人は〈無〉から〈虚妄〉を創造しなければ神には至れないというのは。
 そしてその〈虚妄〉こそ神と僕との戦いによる契約であるということは。
 〈僕たち一人〉にとって
 ここに書かれる〈虚妄〉の他に真実はありえないということは。
 そして僕と神と僕の間にあるすべての
 やがて僕と一人になる人々とこの全宇宙の存在が
 この〈虚妄〉の国の内にあるということは。