80年ぶりに近々爆発が予測されている、かんむり座の反復新星 T CrB(かんむり座T星)図1)ですが、ニュースやSNS、あちら、こちらで、もう爆発か!爆発寸前!とかで賑やかになっています。1等級まで明るくなった、1975年の白鳥座新星(V1500 Cyg)の驚きは今でも忘れませんが、今回、明るくなっても極大で2等台、おそらく可視可能なのは3等前後とすると、北極星がやっとみえる所では眼視で確認するのは難しいと思います。双眼鏡があれば確実ですが、一般の人がそこまでして見る天文現象とは言えないでしょう。

【図1.かんむり座T星の位置】


 

 実際、今夜かもしれませんが、爆発周期だけでは、早くて、2025年3月±4カ月か、遅ければ、2026年12月±4カ月かもしれません。もう、世界各地で24時間近いモニターがされていると思うので、増光あればどこからか、アラート発信があるでしょう、それを受けてから数時間内なら間に合うかもしれません。昨年の減光(図2)が、先回1946年の爆発から約8カ月前の減光(図3)とパラメータ変化が類似しているので、今年の4月±4カ月に爆発予想がされていますが、今の変光、変動をみていてどうなのでしょう? 表題にあるように「うるさいよ かんむり座Tは おかんむり」になってだんまりを続けているのかもしれません。予想がどこまでモデル化されていて、それに合致できるシミュレーション計算、特にCFDが構築されてのものなのか、シロートしていないのでシロート天文ファンにはわかりません。

【図2.昨年からのライトカーブ VSOLJより】


【図3.1946年前後のライトカーブ】

 


 さて、先回爆発を日本人の方も発見していますが、関連する記事を天文ガイドから見つけました。(図4*転載の許可はとっていません、そうえば、編集部の秋山さん、お元気でしょうか) 内容は、当時の東京天文台「下保茂」先生の変光星関連の記事です。表題は、「要注意天体ー反復新星 かんむり座新星の爆発」で、その一部に、1946年、当時学生だった浜松の「斉藤馨児」さんが発見を下保先生に報告された内容です。興味あるの部分は、このかんむり座新星の再爆発がトリガーになって、ソ連のクカルキン教授(ソ連モスクワ大学、ソ連天文局の変光星部門の責任者)の論文が注目され、現在の変光星カタログであるGCVS(General Catalogue of Variable Stars)の第一版が、1948年に出版された?ということです。まさに、かんむり座T星は変光星カタログの星ですね。

 

【図4.かんむり座新星の爆発  天文ガイド197?年】


 

 もう一つ、以前このブログで、「寝床で 80年ぶりの新星爆発を捉える? かんむり座T星」という題で、公開されているライブカメラ画像の活用について紹介しました。名古屋市科学館が提供している木曽観測所での撮影画像や、国立天文台岡山観測所のライブカメラ画像です。爆発すればこの画像からとらえることができます。
 今回は、教育用に活用されている、アメリカの「MicroObservatory Robotic Telescope Network」、ロボット望遠鏡の利用です。これは、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターによって開発され、マサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード大学天文台やアリゾナ州アマドのホイップル天文台など、天体物理学センターに所属する天文台に設置されています。デフォルトの観測メニューの中に「かんむり座T」があるので、撮影のリクエストをすれば、翌日には撮影画像がメールにて送付されてきます。もちろん無料です。先日依頼し返信された7月1日の画像がこれです(図5)。ダーク画像もあるので処理をして、色指数の低い星のV等級を比較星にして測光した結果、光度は9.42等でした。CCDのノーファイルターなので、眼視光度よりかなり明るいですが、平常光度域であることはわかります。(図6)公開で教育用なので常用はできませんが、梅雨時にリクエストしてみるのも良いかもしれません。

 

【図5.撮影、送付されたかんむり座T画像】

 

【図6.自前エクセルで光度計算】