ゴールデンエイジ | 不思議、大好き!

不思議、大好き!

文章はすべてフィクション。ほぼ1話完結。

目覚まし時計がなった。部屋は光に満ちていた。そんな中で目覚める。

時計は家を出るまでの時間を伝えていた。枕元には紺のズボンと靴下、ストライプの半袖が置いてある。はじめに靴下をはいて、着替える。

今日の学校のことを考えながら、身支度を済ませる。男友達と笑い声、含み笑いの女の子たち。ラップビートな高校生活が聞こえてきた。

あと一時間後には今日も間違いなくご機嫌な一日を迎える。待ち遠しいというほど遠い時間ではないが、心が騒いだ。すると、トースターから威勢の良い音が飛び出してきた。

トーストにバターをぬって、それをグレープジュースで流し込むと、スクールバッグを肩に引っ掛けてドアを開けた。

ローファーの歩く音が、晴天の中に響く。焦ることはないんだ。青空を眺めながら歩調を緩めた。

何者にも縛られてはいなかった。両手を広げて待ち構える今日という日に、ゆっくり近づきさえすれば良いんだ。ズボンのポケットに手を突っ込んで、すかした調子で歩みを進める。

学校では、授業に退屈しては居眠り、時折話す教師の脱線話を聞き込み、休み時間にはくだらない話に花を咲かせた。

お昼は食堂に駆け込み、焼きそばパンを買ってコーヒーを手間なく買って、友達との会話を弾ませる。

夕方からは雨が降り始めた。

教室の窓から正門を眺める。

まだ来ない、まだ来ない。まだだ、まだだ。自分に言い聞かせる。

担任がホームルームで明日の確認をしていた。そんなの聞かなくても分かる。窓から正門を眺め続けた。

ホームルームが終わりかけた頃、正門の隅に、モノクロの水玉が描かれたビニール傘が見えた。片手で自分の傘を持ち、もう片方に大きめの傘を持っている。パッと心に閃光が走った。

急いでスクールバッグを肩に引っ掛けて、帰りの挨拶もテキトーに、階段を駆け下りる。

玄関から正門までの直線をダッシュ。程よい雨が身体の熱気を冷ます。目の前の彼女にドンドン近づいていく。

微笑みと微笑みが交差する。整った小さな顔が瞳いっぱいに映った時、身体が浮き上がるような満たされた感覚に包まれる。何より、自分をこんな笑顔で迎え入れてくれる人が居ることに、心を焦がした。

彼女は自分の傘を閉じて、もう片方の大きな傘を開いた。一つの傘に2人が並ぶ。この空間は誰にも破ることはできない、そう強く思った。

そして、繋がれた手は堅くて、どんなことがあっても離されることなんかない。

二人で一人。互いの皮膚は融解して、互いが互いに混ざり合おうとする。魂が溶け合うほど。

薄い雨雲は空を覆って一面となり、時はおそろしくゆっくり流れた。でも、この小さな空間では様々な甘い思いや出来事が起きていた。繋がれた掌から言葉以上に互いの思いを交信させていた。

二人が歩む前途にはいくつもの困難が待ち受けているのだろう。大人はこぞってそう言った。でも、何もかも上手くいく。

そう強く思えた。

繋がれている限り。

どんなときも銀の裏地を歩むことができる。





そうして一日が終わり、また一日が始まる。



リリックに、ピースフルに。