告別
夜勤明け、帰宅、3分で風呂を出、着替え、黒ネクタイを締めてお別れに行く。
本当に最後のお別れ。
車をゆっくり飛ばして、着く、巨大なカプセルホテルのような施設。平行して行われている葬儀。陽気な彼に似合わぬ悲しみの演出が始まる。退屈。隣で利用者が頑張って黙っている。坊主の読経だけが妙に上手い。彼はどんな気持ちでこの空気を見ている?
・・・しかし、顔を見れば即現実を知らされる。
見てなどいない。彼はいない。もうどこにもいない。
死ぬというのは、いなくなるということなのだ。当たり前なのだが、その蝋人形のような顔を見て初めて、それを実感したのだ。
後ろで彼の同期の人たちが泣いている。お母さんがこらえている。お父さんは悔しさを滲ませている。俺はただただ呆然とする。
草葉の陰にすら、彼はもういない。
霊を信じるか否かは論外である。単純に、どのみち感じることのできない俺にとって、死は「無」なのだ。
もらい涙、少し溢れかけた。が、しかし、やはり悲しみではなかった。それよりも、不条理だとか、現実だとか、そういう本当になによりも恐ろしいものを直視して、ただ、呆然とした。
運命は、あるかもしれない。
しかし、不条理も間違いなく、ある。
どちらかではない。
俺は訳あって今ここにいるが、明日死ぬかもしれないその「死」というやつに関しては、訳などいらないのだ。少なくとも本人にとっては。
全てはその「死」を見届けた者の方に委ねられているのだ。
・・・さて、この「死」、「無」を、どう消化すべきか?