ビビルマン
バク宙失敗して頭から落ちて、そこに膝が落ちてきて、鼻に当たった。
はなぢが出た。
10年ぶりくらいかしら、はなぢ。
自分は鼻の粘膜弱くて、よく鼻づまりになるくせに、鼻血はめったに出ないのだ。
・・・そんなことはどうでもいいのだ。
バク宙、補助の人が付いていたからよかったものの、付いていなかったら死んでた。首が変な方向に曲がって死んでた。くにゃ・・・って。
前にも頭から落ちていて、その後しばらく練習してなかったら、まったく出来なくなってしまったのだ。
怖いのだ。
足が地面から離れた瞬間、体が硬直してしまう。
頭では覚悟を決めて跳んだつもりでも、体が恐怖を克服していない。
もともとビビリだから、失敗のイメージが焼きついてしまうと、もう大変。
ただのビビリでは済まなくなる。そりゃもう、ビビルマンになっちゃう。ビビルチェーンジ!・・・してしまう。
もちろんビビルチョップはパンチ力である。
ただのビビリだけじゃなく、イップスみたいなのもあると思う。
もともとスポーツに関しては、自分はそういう傾向が強い。
例えばサッカーをしていると、ボールを持った瞬間頭が真っ白になったり、ゴール前1メートルのところからのシュートを外したり・・・ってことがよくあった。
バスケをすればフリースロー20本連続で外したりした。
子どもの頃、「運動神経いいグループ」に属していた人にはわからないと思うが、スポーツできないというレッテルを貼られるということは、小中学の男子にとっては、「お前はクラスにいる価値が無い」と常に言われているようなものなのである。
開き直って・・・あるいは最初から自意識の薄いやつで・・・オタクグループに入ってしまえるようなやつは楽である。
しかし自分のように無駄に男の子らしい男の子・・・強さに憧れるような男の子にとっては地獄である。
どんなに勉強できても、工作がうまくても、そんなこと関係無い。サッカーが下手、バスケが下手、野球が下手・・・・・・イコールダサい。これでおしまいである。
だからたまに自分にボールが回ってきちゃったりすると、「パスしろ」という声がすぐに聞こえてくる。「お前はシュートを打つな」ということである。
焦りと屈辱と恐怖で頭が真っ白になる。
そのうち声が無くても、ボールを持っただけでそうなるようになる。
それが物心ついた幼稚園の頃から、高校まで続くと思ってほしい(高校でさえ、運動神経が悪いと日々辛酸を舐めなければならない。オタクに走るか笑いに走るか・・・それが無理なら居場所は無い)。
15年間分の壁がそこにある。
初めてバク転やって・・・できちゃった時は、その壁が壊れてなくなったかと、思った。
しかし、何度かやるうちに、怖さがわかった。わかってしまった。
15年分は伊達ではない。一度失敗したら、もう自分に自信が持てない。
本当は自分は運動神経悪くないのである。それは知っている。本当に悪かったら、いきなりバク転やらハンドスプリングやら、できるわけがないのだ。
しかしちょっとでも自信が揺らぐと、そのちょっとの亀裂から不安がなだれ込んでくる。
そしてビビルマンに変身するのだ。「ビ・ビール!」って。
もちろんビビルイヤーは地獄耳である。
・・・あ、なんかもうまとめるのがめんどい。終わり。