奇せずして与えられてしまった人生を
生き抜いていくしかなくなってしまった
少女二人のお話です。
（色付き文字 本文引用）
あたしは
死んだ女の子の代わりに
なりすまして
幸せに暮らすんだけど
いったい誰がその子を
殺してくれたのかと
ある日考えてみたら
それはアリスだったの
ああ そうか
“アリスだったのかって”
そう思ったら
少し
アリスのことを
好きだと思った
そのあと
少し
悲しくなって
アリスに逢いに行ったら
アリスも泣いていたの
あたしはアリスが
泣くところなんて
初めてみたような気がして
どうして泣いているのか
何度も聞くと
やっと こう言ったの
あたしは
動かない回転木馬だから
壊れた遊園地だから
だから ずっと ここから動けない
誰かが鍵をかけたの
それが きみの
“バツ”だからって
物語は、
少女達の運命を変えた
子ども達の遊び場だった
古い小屋、
岩盤事故で潰れた
小屋の光景の断片を
繋ぎ合わせるように続いていく。
あの頃
アリスの与える空気が
みんなから優しさを消していた
だってあの子たちは
アリスのようになりたかった
きれいで
わがままで
幸福で
なんでもできる
残酷な
特別な女の子
事故が起きた時
小屋には鍵がかけられていた。
鍵をかけたのは…。
アリスが鍵を…
誰もあんなことになるなんて
思わなかった
アリスが…
小屋の中には
横穴があったかもしれない。
小屋の裏側に出られるように。
こっちに来てごらん
こっちよ こっち
ほら この部屋はね不思議なのよ
こんなところにも出口があって
見て
“今 なんの話していたの？”
“別になんにも”
“なんにもしてないよーね？”
小屋の中にいた子ども達は
死んでしまった。
一足遅れて小屋についた
ふたりの子どもが助かった。
見つけることのできなかった
ひとりの少女の遺体。
あの子は 誰かに
つき落とされたんじゃないの
川へ
アリスは遊びが好きなの
あたしをからかうのが好きなの
そしてあたしは鍵が欲しかった
アリスが怖い
どうしよう アリスが怖い
遺体の見つからない妹のため
手掛かりを探し続ける兄。
この兄と、ふたりの少女を巡るやり取りが
物語を引っ張ってゆく。
今 アリスはおかしいのよ
何を言い出すかわからないのよ
お願いアリス
信さんだけには言わないで
本当のことを
物語を貫くのは、
閉ざされた森の中の闇だ。
この闇から逃れようと
少女は必死にあがく。
あの暗闇が
どんなに怖かったか
水の音と
枝の揺れる音
どんなに怖かったか
物語のエンディングで
秘密は永遠に鍵をかけられて終わる。
鍵をかけられたままの
心を置き去りにして。
開けることのできる鍵を
水の底に沈めたのはアリス?
それとも…。
永遠にかけられた鍵
鍵をかけた 闇の記憶
窓のない
優しい檻
君のことならどんなことも
知っているよと
あなたが言う
切れ切れな記憶の隙間から
差し込む光
あなたの姿
行方知れずの道ゆきの
梢が揺れて
翳る月
心に隠した秘密が阻む
愛さえも
こぼれてゆく
少女の頃の記憶
鮮やかな花の色に
よみがえり
愛おしくて
せつなくて
♡ Have a nice day ♡
♡ 素敵な一日でありますように ♡
