目が覚めて、ここが何処だかわからない。
ぼんやり起き抜けの頭を巡らす。
絢子の目に、マンションの天井が映る。
白い壁紙がぼんやり見えてくる。
ごく普通のマンションの部屋だ。
隣で寝ている宏が、絢子の体に手を伸ばす。
ここは宏の部屋だと、絢子はほっとする。
宏が心配そうに絢子の顔を覗き込んでいる。
起き抜けの体の気怠さが酷い。
首から背中にかけてずしりと重い
強張った体の力を抜いて息を吐く。
長いため息みたいに聞こえる。
「また、うなされていたよ」
と宏が言う。
ああ、そうだ、
またあの夢を見ていたんだと、
絢子は寒々した気持になる。
夢に引きずられるなんて馬鹿げてる。
もう、子どもじゃないんだと絢子は思う。
思い切りよくベッドから立ち上がり、
丈の長めの分厚いセーターを着込み、
窓の向こうを見た。
昨日から降り続く雨が窓を濡らしていた。