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インドでは、2008年から09年にかけて遺伝子組換え作物によって前代未聞の農民の大量自殺という事件が引き起こされた。

現地を訪れたイギリスのチャールズ皇太子はあまりのことに、世界に向けて遺伝子組換え作物の危険性を訴えたほどである。

インドにおいては穀物の収穫量が飛躍的に伸びるとの宣伝文句につられ、従来型の種子を使わず、遺伝子組換え種子を導入する農家が急速に増えていたのである。
すでに数百万人の農民たちが小麦、コメ、トウモロコシなどさまざまな作物に遺伝子組換えの種子を使うようになっている。

問題はこうした遺伝子組換えの種子は従来の種子と比べ値段が高く、場合によっては100倍以上もする。
しかし、病害虫に強く収穫量も増えるために十分投資効果があるといわれ、多くの農家が借金をして、これらの種子を購入するようになった。

結果、ニューデリーやムンバイという大都市周辺のみならず、ナグプールなど中央インドにおいても遺伝子組換え作物は急速に利用が進んだ。
「魔法の種子」というキャッチコピーが受けたせいで、次々と農家は将来の高収入を期待し借金を重ねたのである。
インドでは瞬く間に、遺伝子組換え作物の農地は1,700万エーカーに急拡大を遂げた。

ところが、期待したように実を結ばない種子が相次いだのである。
従来型の種子であれば、翌年再度植え付けを行なえば、実を結ぶ可能性はあったのだが、遺伝子組換え種子の場合には実を結ぶのは1回だけである。
毎年新たに種子を買い続けなければならないように、種子の構造を遺伝子レベルで操作してあるからだ。

宣伝通りに収穫量が上がれば農家も借金返済に支障はなかったと思われるが、遺伝子組換え作物の育て方は意外に難しい。
病害虫や干ばつに強いと言われているが、化学肥料を大量に投入しなければ、期待されたような収穫が得られないという側面もある。
結果的には2008年、多くのインドの農民たちはかつてない異常事態に直面してしまった。

すでに12万5,000人もの農民たちが自殺したと報道されている。
借金とりに追い立てられ、あるいはようやく実を結んだ穀物を試しに家族に食べさせたところ病気になってしまうというような事態が原因で、自ら命を絶つという悲惨な状態に陥ってしまった。

この事態を間近に見たチャールズ皇太子は、すぐさま声明を発表した。