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作詞や作詩、たまに小説書いたり論文書いたりしてます

うしろをふり返った
真白な雪道 足跡がある

遠くにぼんやりと
あったかい燈火 思い出がある

もどろうか
もどろうか
懐かしさに胸がきゅっとなる
足跡を辿りたくなるが
それはいけない

できるのは 新しい道を切り開くだけ

うしろをふり返った
なんどもなんども 過去思い出す

もどろうか
もどろうか
懐かしさに胸がきゅっとなる
戻るのができないからこそ
うつくしいんだ

さようなら 強くなって歩き出さなきゃ

さようなら
さようなら
「幼女戦士ミルクちゃんが一番」
「何言っているの、御月。やっぱり愛輝くんの魅力には勝てないわよ」
「御月さん、仔那珂さん、私はやっぱりコスプレに魅力を感じますよ」
「唯、今はフィギュアの話をしているの!」
「そうそう」
「むぅ、でもコスプレの楽しさには勝てません。そうですよね、蓮見さん?」
「俺に振るな」
 五人はいつもの調子で会話を弾ませる。店内に響き渡る声の大きさで。
 九月十一日午後十一時十五分、俺達はいつものようにいつものメンバーで秋葉原に訪れている。会話も俺には到底理解出来ない話の連続だ。しかし、気分は悪くない。
「でもコスプレは不滅ですよ」
「ホント、お前萌文化が好きになったよな。コスプレイヤーになりやがって」
 今日の唯は堂々とゴスロリ服で店内にいる。
 でもこいつは成長したと思う。お馴染みの店らぶ☆メイでもしっかり仕事をこなしている。俺達とも友達のように接している。まあ彼女は口を酸っぱくお試し期間と言ってくる訳だが。そして相変わらず敬語は変わらない。
「そう言えば蓮見さん、女装最高に似合っていましたよね? もう一度女装して下さいよ。私太鼓判です」
「唯、俺はもう一生女装しないぞ」
「えー、つまらないです」
 唯がつまらなさそうに嘆くが、勿論俺は光河のように女装趣味を持ってはいない。
「和磨、和磨、あんたも見なさいよ。この愛輝くんのフィギュア。最高に可愛いでしょー、本当に欲しいんだけど。今すぐレジに持っていこうかな」
 仔那珂は前も好きと言っていた愛輝とやらのフィギュアに釘づけになっている。
「別に良いけど……それ買ったら他の物買えなくなるぞ」
「うーん、そうだけど………」
 そう言われ仔那珂は愛輝のフィギュアと他の物を比較する。
「うーん、これとこれでは……」
 仔那珂も変わったよな。BLへの愛情は会った時よりも激しくなっている。まあその変は流しておこう。それよりも俺が嬉しい変化は別の所にある。それは仔那珂が前以上に優しく笑ってくれることになった点。学校でも前以上に傲慢な姿勢ではなく、柔和になった気がする。
「よしっ、やっぱり愛輝くんのフィギュアを買う。分かった和磨?」
「ああ」
 別に俺の承諾はいらないぞ。仔那珂。
 余談だが、まだ俺は仔那珂の兄にホモ野郎の烙印が押されている。それにあのお兄さん仔那珂が俺と遊ぶ度に「襲われていないか?」「怪我をしていないか?」とやたら気にするらしい。ホントに余談です。ありがとうございます。
「仔那ちゃんが買うなら私も買おうかな。ミルクちゃんのフィギュア」
「うん、それが良い! それが良い!」
「うん! じゃあ私も買うよ。このミルクちゃんフィギュア。すいませーん、フィギュア買いたいんですけど」
『ああ、はい。少々お待ち下さい』
 仔那珂と御月が店員さんに頼んでフィギュアケースからフィギュアを出してもらう。秋葉原では高価な物や価値があるフィギュアはケースに入れられている。
 二人も変わったけど御月も結構変わったよな。前よりずっと積極的になったよな。仔那珂のことも前のさん付けとは違って仔那ちゃんと親しく呼んでいる。夏休み明けの学校でも俺達以外の友達が出来たとのメールも送られた。本当に御月は変わったよ。
 俺が三人の成長に感心していると仔那珂は驚くことを口にした。
「和磨って変ったわよね。あたしは全然変わっていないのに。取り残された気分」
 それに同意する御月。
「私もそれ思ったよ。和磨くん前よりずっとオタクに対して柔和になった」
 仔那珂が変わっていないと思っている点も驚きだが、もっと驚きなのは自分が変わったという点。いつも通り接していると思うんだが。
「俺そんなに変わったかな?」
 自分自身に指をさして聞く。すると二人は大きく頷いた。さも当然のように。
「変わっているよ。だって前まではオタクを白い目で見ていたでしょ。分かっていないかも知れないけど顔に出ているんだよ」
「御月の言うとおりよ、和磨。もしかしてあんた何かに目覚めたの?」
 ニヤニヤしながら仔那珂が俺に問う。
「別に何も目覚めてない」
「正直に言っていいのよ」
 仔那珂はまだニヤニヤしている。それも冷やかしの念が籠っている笑い。
「だから目覚めていないって」
「つまらないわね」
 …………………全く、何を考えているんだ。仔那珂は。
 でも今思うと俺は変わっているのかもしれない。昔はオタクと呼ばれる人間を毛嫌いして見るだけで避けていた。でも仔那珂と御月に出会ってからオタクにも良い人がいるんだなって知った。それから唯と出会ってまた友達が増えて毎日がより楽しくなった。
 俺はいつしか心を開いていた。
 昔嫌いだったオタクに。
 そして嫌いだったオタクは好きに変わった。
 それは大きな違い。好きと嫌いでは百八十度変わってくる。
「そろそろ腹も減ってきたし、らぶ☆メイにでも行くか」
 三人のオタクに話しかける非オタク。
「和磨、珍しくタイミングが良いわね。あたしもお腹空いていたのよ」
「私も」
「恥ずかしながら私も同意です」
「よし、じゃあ行くか」
 そして三人は同意する。

 三人と過ごして楽しい日々は変わらない。しかし、俺の根本も変わることは無い。
 俺は非オタクであってオタクではない。
 でも俺は少しタイプが違う非オタク。オタク好きの非オタク。
 しかし、そんな矛盾など無関係で俺は沸々と満足感が溜まっていく。
 だから非オタクの俺は気分よく店を出て叫んだ。


「あー、秋葉原最高!!」