南極の気温はマイナス50℃というのは本当? | ひとも地球もサステナブル!

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今日は地球温暖化に関して、
特に多い質問について解説を
試みたいと思います。


以前から、次のような質問が
多くありましたが、昨日また
いただきました。

「南極の気温はマイナス50℃
くらいだから、少しくらい温度が
上がっても氷は溶けない。
そして
南極大陸の降雪が増え、
氷がむしろ増えるので海面は
低下する」
と聞いたことがあるのですが、
実際はどうなのですか?



これは著名な温暖化懐疑
論者の著書に書かれている
以下の記述に端を発して
いるようです。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

南極大陸は平均してマイナス
50度
という非常に低い温度
なので、平均
気温が1度ぐらい
上がっても零度
以下の場所
が南極大陸全体に
広がって
いる。

南極大陸の周りの気温が
上がり、
海水温が上がれば
水蒸気の量が
増える。

もし風が海から大陸の方に
吹いて
いたら、この増えた
水蒸気は雪や
氷となって
南極大陸につもるだろう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



上の文章では、

「南極の温度はマイナス
50度なので少々気温が
上がっても(雨にならずに
雪になるので)大陸の
雪氷は増える」

というふうに誤解する
可能性があります。

この文章はある意味で、
人間が囚われている
常識を上手く活用した
洗脳方法といえるの
かも知れません。


前置きはこのくらいに
して、私の見解に進み
ましょう。


まずは南極の構造を
見てみましょう。

 

南極は平均2450mの氷で
覆われていて、南極点は
標高2800mの地点
にあり
ます。

上の文章で

南極大陸は平均してマイナス
50度


とありますが、
これは真っ赤なウソです。

実は、マイナス50度という
のは大陸全体の平均気温
ではなく、


南極点の平均気温

なのです。

繰り返しますが、

南極点の位置は標高
2800m

です。

日本で言うと、あの寒い寒い
日本アルプスの山々の頂上に
近い位置
です。


「南極の気温はマイナス50度」
というのは、富士山の平均気温
(マイナス6.4℃)を取り上げて
「日本の気温はマイナス6.4℃」
と言っているようなものなのです。

実際、下のグラフのように
南極の気温は場所によって
大幅に異なります。

 

グラフから明らかなように、
昭和基地やパーマー基地
では夏の気温が0℃前後
になっています。

しかもこの値は平均気温
ですから、0℃を上回る日も
かなりあるのです。



なので、
わずかな気温上昇が雪を
雨に変えてしまう可能性
があり、氷床(分厚い氷の
固まり)の不安定さが増す
ことが考えられます。


もともと南極大陸の上に
乗っている氷の底は、氷床
それ自体の重さによって
溶けています。

つまり岩盤に固定されて
いるのではなく、滑って
いるのです。

それが氷河となって大陸
から海に向かって行くわけ
ですが、最近その氷河の
流れが速くなっていると
いう報告があります。

その大きな理由が、大陸
周辺部での海水温の上昇
といわれています。

現在、南極で最も氷床の
状態が不安定なのは南極
半島付近(西南極)といわ
れていますが、その先端部
にあるパーマー基地の
気温がかなり高いことが
気になる
ところです。


また南極を語る場合は、
大陸の面積が日本36倍も
あることと、場所によっては
富士山よりも厚い氷に
覆われている(4000m)
ことを意識しておく必要

あります。

 

以前、講師を務めたある
セミナーで

「みずほ基地と昭和基地は
凄く近いのに気温が違い
すぎる。グラフがおかしい
のでは?」

という質問がありました。


が、大陸の右上部にある
「みずほ基地」と「昭和基地」
は、かなり近くにあるように
見えますが、実は270㎞
くらい離れています。


東京と富士山でも100㎞
くらい、270㎞だと北アル
プスを越えてしまうような
距離です。

しかも、
昭和基地とみずほ基地の
標高は、それぞれ29.18m、
2230mであって2200m
も違う
のです。

これだけ立地が異なると、
気温が大きく違っても不思議
ではありませんよね。

何も地理学者になる必要は
まったくありませんが、縮尺
の違いくらいは頭に置いて
いてくださいね。


次に後半部分に突っ込みを
入れたいと思います。

次の文章に対するツッコミ
です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
南極大陸の周りの気温が
上がり、海水温が上がれば
水蒸気の量が増える。

もし風が海から大陸の方に
吹いていたら、この増えた
水蒸気は雪や氷となって
南極大陸につもるだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私からの素朴な疑問です。

風が海から大陸に吹く
ことはあるのだろうか

ということです。

海陸周辺の海水温が
上がればそこで上昇気流
が生じ、海側が低気圧に
なるはずです。

一方、大陸側は氷で冷えて
いるので高気圧となります。

すると、大陸から海に
向かっての風が吹くはず
です。

つまり「陸風」ですね。


そして忘れてはならない
のが「カタバ風」という
南極特有の強風
の存在
です。

南極大陸では、雪氷面の
温度が極めて低いので
その付近の空気が冷や
されて重くなります。

南極大陸を覆う氷床は
内陸部が厚く、周辺が
薄いので、標高の高い
内陸から海岸に向かって
冷たくて重たい空気が
滑り降りてきます。

この下降してくる空気の
流れを

カタバ風

と言います。

そのために、
南極大陸の風向きは
ほとんど変わらない
のです。


これについては、
佐藤薫氏が「南極昭和基地
の気象」という論文で次の
ように説明しています。

~2004日本気象学会~

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

地上風の風向がほとんど
変わらないというのは、
昭和基地に限らず、南極
内陸部、沿岸部で共通
する特徴。

内陸部観測 点である
南極点での方向一定性は
79%、ボストーク基地では
81%、みずほ基地では
96%、沿岸部のモーソン
基地では93 %、ハレー
基地では59%である
(King and Turner,1997)。

これは、南極のカタバ風が
大陸規模の現象だからで
ある。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

このことを考えると、確かに
海水温が上がると水蒸気が
増え降雪が増えるでしょうが、
それは大陸というよりも周辺
の海上部にではないでしょうか。

そして雪が比重の大きい
海水(塩水)の上に淡水層を
作り、それが氷結する可能
性があります(淡水は塩水
よりも凍りやすい)。

だとしたら、南氷洋で氷の
面積が増えたように見える
のは当然です。

しかし、周辺の水温が上昇
していくと、氷結しなくなる
可能性があるように思い
ます。


以上のことから少なくとも
私には、南極周辺の海水
温が上がって大陸内部の
雪(氷)を増やすとは思え
ないのです。

この部分は、以前のブログ
に書いたことがあります。


もし、懐疑論者の見解が
正しいのなら、現在でも
南極の春から夏までの
間に雪(氷)が増えるはず
です。

しかし例えば昭和基地は、
そうなっているようには
見えません。

 
【立待岬(昭和基地)でしらせを
見送る48次越冬隊員】(国立
極地研究所制作:昭和基地
NOW! より)


ただし、南極半島西部では
ここ数十年、降雪量が増えて
いるそうです。

パーマー基地の周辺でも
降雪量が増えているという
報告もあります。

パーマー基地は下図から
も分かるように西南極の
端の方にあります。

 

しかも、カタバ風の直接
影響を受けにくく、温度
上昇によって低圧域(低気
圧)になりやすい場所に
あるので、降雪量が増える
のはむしろ当然でしょう。

そしてこの周辺の夏には、
大雪ではなくて豪雨が
降っているという報告も
あります。


以上のことから、「温暖化
すると南極の大陸部で
氷が増えると結論づける
ことはできない
」と私は
思います。



 ◆IPCCの見解は?

このことについて、IPCCは
「地球温暖化第四次レポート」
の中で次のように予測して
います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

現在の全球モデルを
用いた研究によれば、
南極の氷床は十分に
低温で、広範囲にわたる
表面の融解は起こらず、
むしろ降雪が増加する
ためその質量は増加
すると予測される。

しかしながら、力学的な
氷の流出が氷の質量
収支において支配的
であるならば、氷床質量
が純減する可能性がある。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

もしこの見解が正しければ、
私の心配は杞憂と言えます。

ただこの文章だけでは
「氷床のどの部分で降雪
が増えるのか」が不明です。

もし、氷床の端の方、つまり
棚氷(たなごおり)で降雪が
増えるとすると、氷床の
バランスが崩れる可能性が
あります。

文の後半にある

「しかしながら・・・・」

というのは、その可能性も
示唆していると思うのです
が、果たしてどうなので
しょうか。



◆ただの邪推だといいのですが・・・・

ここからはまったくの推測
(邪推)です。

素人判断は危険だとは
思いますが、むしろ誤りを
指摘していただくために、
あえて私見を述べさせて
いただきます。


再びカタバ風に戻ります。

吹き降りてくるカタバ風を
補充する大気の流れ
(補償流といいます)が
起こりますが、この空気に
含まれている水蒸気は
海上に降る雪に使われ、
かなり減少している

思われます。

その結果、ただでさえ
湿度の低い大陸中央部
の乾燥化が進みます。


この乾燥した空気が
カタバ風となって海上に
まで吹き降りてくると、
断熱圧縮によって気温
が上がることはない
のでしょうか。


そうなれば、
ますます南極周辺部の
気温や海水温が上昇し、
悪循環に入っていくこと
が懸念されます。
 

かなり長く、理屈っぽい
ブログになってしまい
ました。

もし研究者の方がおられ
ましたら、私の疑問を解決
していただけませんか。

心からお持ちしています。


実は、この部分は6年ほど
前に出版した

「目からウロコなエコの
授業」

という本に書いたことです
が、今のところ疑問を解決
してくれた方はおられません。

本書は一応増刷され、今の
ところ完売で出版社にも
在庫が残っていません。

なので、まったく読んだ人が
いないと言うことは、考え
にくいのですが・・・・。


なお同書はアマゾンの中古
で購入できますが、お読み
になりたい方には、追加
情報や誤植を修正した
第2刷をオススメします。

ということで、大変長くなり
ましたが、ご質問に対する
私なりのお返事とさせて
いただきます。