術後10日後。
順調に回復してこの時には、ゆっくりだが点滴棒をもたずに歩けるようになっていた。(ただしフラつきがあり、二回ほど転びそうになった。)

N医師が回診で頭のキズの抜針をしてくれた。退院できそうか確認すると、N医師は血液検査や歩行を確認。明日退院との許可がでた。

「術後1ヶ月は無理せずに。でも歩く練習はして下さいね。」入院中最後ののアドバイスをしてくれた。

明けて術後11日後の12月30日。朝から、家族、ICU看護師、一般病棟看護師、救命病棟看護師に向け、感謝の思いを込めて手紙を書いた。
少しでも気持ちが伝わればいいな。

最後の昼食をとって午後。妻が着替えを持って迎えに来てくれた。
私服に着替えるのが久しぶりなのと麻痺のために、着替える手がぎこちない。

フラつきがあるため、妻の肩を借りてその1歩を踏み出した。ナースセンターに挨拶をすると看護師がみな笑顔で見送ってくれた。

病院の玄関を出ると、初冬の心地よい風だったはずが、厳しく冷たい空気にすっかり変わっていた。この冷えた空気でさえも、生きている実感に結びつけていた。

その建物に向かって心を込めてお辞儀をし、妻の運転で帰途についた。