ここしばらくは新天地を求めて農地と住居を探して、各地を視察していました。なかなか条件の整った場所は見つからないのが現状です。飯舘村の自宅を放置したままにしていることも気になっていましたが、車のタイヤ交換の必要もあり、この週末、久々に帰宅してきました。

 初夏の陽気の中で、緑が濃くなってきていました。家の周囲も草に覆われ始めており、草刈りもしなければいけないなと思って家に入ると、なんと停電していました。おそらく落雷などによってブレーカーが落ちたのでしょう。そこからが悲劇の始まりでした。なんとか停電を解消できたものの、冷蔵庫は全滅状態でした。特に冷凍室内は悲惨の極みで、丸洗いを余儀なくされました。凍結による前回のシャワーの破損といい立て続けのトラブルにげんなりしてしまいました。

 ますます村での生活を非常事態対応に切り替える必要性を感じてしまいました。基本的には住まない前提で、自宅は納屋と考える必要性が出てきました。こんな状況の村で帰村を前提に最低でもあと2年間放置されれば、将来がないばかりでなく、帰村直後から多くのトラブルに見舞われることになるでしょう。だからこそ、直ちに土地建物を含む財物の完全な賠償を求めておく必要があるのです。このことは帰村、移住に関わりなく、飯舘村の住民にとっては絶対に必要な要件であります。

 現在の村の対応はどうでしょうか。賠償問題にはノータッチであるばかりか、村民の損害でもある村の損害を東電に請求することもなく、経産省に寄り添って村民と国民の税金ですべてをまかなっているのです。世論の中には住民は村と対峙することが問題で、村人同士が分裂する事が良くないという論調が良く見られます。しかし、村の現状は村に帰れないと思っている人がかなりいることも確かであり、少なくともその調査を村が拒み続けているのも事実です。今月20日にはアンケートを取ると村長が公言しましたが、これも村人とマスコミの圧力によりようやく動き出したにすぎません。しかも、一部有志によるアンケートはすでに取られており、その内容を凌駕するような住民のためになるものでなければ税金の無駄遣いにすぎません。

 もちろん村人の中には帰村を考えている人もいますし、それは十分尊重されるべきだと思います。ただそれらの人たちが、純粋に村への愛郷心からそう思っているのか政治的、経済的背景によって主張しているのかは考慮する必要があります。経済的にはしかたなく、その選択をしている可能性があり、賠償条件によっては考えが変わる可能性もあります。政治的にはしがらみや利権を背景に帰村を訴えている可能性もあります。この場合は周囲で巻き込まれる住民は搾取の対象者であり、被害の上塗りを余儀なくされます。

 移住と帰村で対立することに問題があるという世論も見受けられます。これについては大きな問題ではないと思います。最も重要なのは現在の仮設住宅での避難状況を早急に解消することです。除染して帰村するには最低であと2年、最近の村長の発言では5年はかかると公言しています。お年寄りはもとより若い世代もそれに耐えうるのか、またそのような苦痛を与えることが許されるのか、考えるまでもないことです。移住、帰村は個人の考え方や将来の希望、何を生業にするかなどによって自由に選べばいいことです。しかし、十分な賠償が無ければ、仮設住宅での避難生活が永遠に続くか、さもなくば仮設住宅さえも撤去されて路頭に迷うか、自宅に戻って被曝することを受け入れることを強要させられることになってしまいます。こんな仕打ちを原発事故被害者に与えていいものでしょうか?