ふと、鴻上尚史 さんという劇作家・演出家の方がテレビで語っておられることを思い出した。演劇をやっていて、それまで演劇について熱く能弁に語る人がいざ演技をしてみると、いかにもつまらないものになってしまう。一方でそれまでおとなしく、黙って静かにしていた人が演技をするととんでもなく素晴らしい演技をすることがある。演劇というのは、その人がその人さえ知らぬ隠れた何ものかをを引き出す力があると驚き感心したものだという話しである。
 私はその話に感心した。人というものは自分でこうだと思ってもみない何者かなのだろう。自分決めつけてしまってはもったいない。積極的に出会いを求め身体を動かしてみるのが面白いだろう。
 とは言いつつ私については今更自分は何かをしてみようと思わない。堅い殻に覆われてしまったぼんやり静かに過ごしたい小人閑居して不善をなす老人である。だが、どっこい自然というやつはそうは問屋がおろすまい。ネガティブなオチが私は好きなのだなぁ。ああ。