……ガシャ、ガシャ、ガシャ……

 

かすかに聞こえていた金属音が、螺旋階段を伝って少しずつ大きくなる。

 

ガシャ、ガシャ、ガシャ、ガシャ……

 

音は途切れることなく、一定のリズムを保ちながら、徐々に大きくなっていく。

 

長い螺旋階段を、複数の兵士が降りてきているようだ。

 

やがて、その足音は牢屋の前で止まった。

 

扉の向こうに兵士たちの気配がある。

 

ガチャリ。

 

重い扉が開くと、そこには鎧に身を包んだ兵士たちが立っていた。

 

薄暗い牢屋の中を見下ろす兵士たち。

 

その姿からは、何の感情も読み取れない。

 

「ヌイーグッド様が貴様らに聞きたいことがあるそうだ」

 

「大人しく出るんだ」

 

「抵抗したら……わかるよなぁ?」

 

兵士たちの圧に、牢屋の中の空気が張り詰める。

 

そして、数日前に囚われた者たちは、後ろ手に縄をかけられた。

 

一人につき一人の兵士が付き、逃げ道を塞ぐようにして牢屋から連れ出されていった。

 

兵士に付き添われ、囚人たちは螺旋階段を上り始めた。

 

一歩、また一歩。足を踏み出すたびに、硬い靴音が石造りの階段に響く。

 

後ろ手に縛られた両手は自由にならず、すぐそばには兵士の気配がある。

 

振り返ることさえままならない。

 

階段はどこまでも続いているように思えた。

 

その中の一人は、進んでは立ち止まり、後ろを気にしてはまた足を踏み出す。

 

まるで前に進むべきか、引き返すべきか迷っているかのようだった。

 

「おい、さっさと歩け!」

 

兵士の怒声が階段に響く。

 

その声の圧に囚人はびくりと肩を震わせ、慌てて足を速めた。

 

他の者たちも兵士に歩調を合わせながら、一歩ずつ階段を上っていく。

 

誰も口を開かない。

 

聞こえるのは、兵士たちの足音と鎧の擦れる音だけだった。

 

やがて、一行は螺旋階段の途中にある横道へと差しかかった。

 

そこには、普段は誰も寄りつかないであろう、ひっそりと佇む扉があった。

 

その扉の向こうにあるのは、秘密の間。ヌイーグッドが彼らを待ち受けている場所だった。

 

秘密の間に連れてこられた五人は、兵士たちに促され、カーテンの前に立たされた。

 

キラッキラした目をした囚人は、目の前の光景に興味津々といった様子で、カーテンの向こうにいるヌイーグッドのことが気になっているようだ。

 

がたいのいい囚人は、兵士たちに囲まれても動じることなく、右足を前に出してどっしりと構えていた。

 

楽しげな表情を浮かべた囚人は、こんな状況でも何かワクワクしているように見える。

 

メガネをかけた囚人は、時折、何か考え事をしているようだ。

 

そして、おどおどした様子の囚人は、落ち着かない様子で周囲を見回している。

 

秘密の間は地下にあるためか、どこか湿っぽく、ひんやりとしていた。

 

室内を照らしているのは、壁際に置かれた数本のろうそくだけ。

 

揺れる炎が、薄暗い部屋にぼんやりとした明かりを落としている。

 

囚人たちとカーテンの間には、一台の机が置かれていた。

 

その机の左右には、兵士が一人ずつ立っている。

 

机の上には、古代兵器の設計図ではないかと騒がれた、あのノートが置かれていた。

 

そして、そのカーテンの向こう側では、ヌイーグッドがソファーに横になっている。

 

「例のノートについて、この者たちから何としてでも聞き出せ」

 

ヌイーグッドの声がカーテン越しに響く。

 

「はっ!」

 

兵士たちは一斉に返事をすると、囚人たちに向き直った。

 

「お前たち、あのノートを知っているだろ?」

 

兵士の問いかけに、五人は誰一人として答えようとしなかった。

 

「お前たち! あのノートについて知っていることを話せ! あれは世界の均衡を揺るがしかねない代物なんだぞ!」

 

「誰のノートだ? 誰があれを持っていた? 答えろ!」

 

それでも、返事はない。

 

兵士たちは互いに顔を見合わせた。

 

「どうやら、口を割らせる必要がありそうだな」

 

その言葉を合図に、兵士たちは五人への拷問を始めた。

 

しかし、どれだけ問い詰めても、誰一人として言葉を発しない。

 

その間、メガネをかけた囚人が時折ごそごそと動いていた。

 

だが、兵士たちは目の前のことに気を取られ、その様子には気づかなかった。

 

やがて、カーテンの向こうからヌイーグッドが立ち上がる気配がした。

 

「……あとは任せる」

 

そう言い残し、ヌイーグッドは部屋を後にした。

 

「さて、もう一度聞くぞ。あのノートはどこにある?」

 

兵士の一人が問いかける。しかし、囚人たちは誰一人として答えない。

 

「黙っていても無駄だ。素直に話せば、痛い目に遭わずに済むんだぞ」

 

それでも返事はなかった。

 

兵士たちは囚人たちを問い詰め、何度も手を上げた。

 

だが、どれだけ痛めつけても、返ってくるのは沈黙ばかりだった。

 

そんな中、メガネの囚人は何かを試すかのように、後ろ手に縛られた両手を時折動かしていた。

 

しかし、兵士たちはノートについて問い詰めることに気を取られ、その小さな動きには気づかなかった。

 

やがて、その囚人は兵士をじっと睨みつけると、唾を吐きかけた。

 

「この野郎!」

 

激昂した兵士が詰め寄る。その拍子に、メガネが床へと飛んでいった。

 

「おい、メガネが落ちたぞ!」

 

兵士の一人が拾おうとした、そのときだった。

 

がたいのいい囚人が、床に落ちたメガネを蹴り飛ばした。

 

「何をやっている、貴様!」

 

兵士たちの注意が一斉に、がたいのいい囚人とメガネへ向く。

 

「ふざけやがって! 大人しくしていろ!」

 

兵士たちはがたいのいい囚人を取り押さえようとし、別の兵士たちもメガネを拾おうと床を探す。

 

机の左右に立っていた兵士たちも、メガネを探そうとその場を離れた。

 

その隙に、メガネの囚人は机の方へと移動した。

 

後ろ手に縛られたまま机に寄りかかり、何やらごそごそと手を動かしている。

 

やがて、何事もなかったかのように元の位置へ戻った。

 

兵士たちは誰も気づかない。

 

それからも兵士たちは約一時間にわたって囚人たちを問い詰めたが、結局、何の情報も得られなかった。

 

「おい、メガネが見つかったぞ!」

 

その時だった。

 

重い扉が開き、先ほどの鎧とは違う兵士が入ってきた。

 

「ヌイーグッド様からの伝言だ。囚人たちを牢屋へ戻せとのことだ」

 

兵士たちは顔を見合わせた。

 

「わかった。お前たち、囚人を連れていけ!」

 

こうして、囚人たちは再び牢屋へと連れ戻されることになった。