このフレーズを聞くのは一体何度目になるだろうか。
真夏のうだるような暑さの中、俺、如月シンタローは自宅のリビングでテレビを見ていた。
今見ているバラエティ番組もそうだが、最近アイドルであり妹の如月モモをよくテレビ番組で見かけるようになった。
あいつが言うには「また少し忙しくなってきたけど、前よりずっと楽しく仕事が出来ている」とのことらしい。
まあなんだかんだ言って家族が有名人だっていうのはオレとしても嬉しいし、何よりあいつが楽しめているんなら全く問題はないのだろうが、
『どうしたんですか?ご主人』
携帯の中からの問いかけを、オレは「なんでもねえよ」とはぐらかす。
『ならいいんですけど。それより、妹さんってやっぱり大人気ですよねー!どこかのヒキニートとは大違いです!』
「う・・・うるせえお前オレは関係ないだろ」
『あれあれ?誰もご主人とは言ってませんけど・・・・もしかして自覚してるんですかー?ぷぷぷ』
・・・・こいつ・・・!!
オレが怒りと悔しさとその他もろもろで小刻みに震えている間も、携帯の画面の中にいる少女、エネの口撃は続いていく。
(・・・・ダメだ。こいつには脅しとかそういうの効かねえし・・・怒るだけ無駄)
頭ではわかっているのだが、こいつは何というか、その・・・本人がとても気にしていることを絶妙にえぐってくる。
興が削がれた気分のオレは、ため息をついて立ち上がる。
『お出かけですか?』
「ああ、どうせ暇だしアジトにでも行くわ」
*
簡単に身支度を整え、オレはもはや第2の実家感覚となってしまっている107号室のドアを開ける。
中に入ると、オレが所属していることになっているらしいメカクシ団団長のキドがオレに気づいてこちらを向く。
「・・・ん、シンタローか」
「よう。今日はお前だけか?」
キドは今まで居眠りをしていたようで、眠たそうに眼をこすりながら首を横に振る。
「マリーがあっちの部屋で内職中だ」
「そっか」
オレは返事を返しながら空いているソファに座る。
セトは例の如くバイトだろうし、カノがどこかへ行っているのはいつもの事だ。
コノハとヒビヤは・・・よくわからん。
ということは今ここにはオレとキドとマリーだけってことか。
・・・・あ、エネもいたな、忘れてた。
『むっ、ご主人今なんか失礼なこと考えてませんでした?』
「いや別に」
『いやいや絶対考えてましたよご主人変な顔してましたし!!!』と騒ぐエネを放っておいてオレはテーブルの上に置いてあった雑誌を手に取る。
・・・変な顔ってなんだ変な顔ってせめてもうちょっとマシな言い方をしろよ。
「それにしても暇だなー・・・・」
雑誌のページをぱらぱらとめくりながらオレが呟くと、キッチンでお茶を淹れていたキドが何かを思い出したようにオレのところへとやってきた。
「そうだ、これお前にやるよ」
「ん?何だこれ・・・遊園地のチケット?」
キドがオレに差し出したのは、以前メカクシ団の連中といったところよりも少し遠いところにある遊園地のチケット2枚だった。
「昨日カノが持ってきたんだが、生憎この日はみんな予定が入っててな。キサラギでも誘って行ってくるといい」
「・・・・お前・・・・」
そういえばこの遊園地、宣伝CMを見たモモが行きたがっていた。
しかもこのチケットに書いてある日は、モモの久しぶりの休日。
『よかったですね、ご主人!』
エネの様子から察するに、どうやらオレがここ最近仕事で忙しいモモを心配していたのがバレてしまっていたらしい。
・・・まったく、本当におせっかいな連中だな。
*
その日の深夜。
「ただいまー・・・ってあれ?お兄ちゃん起きてたんだ」
「ん、ちょっとな。ほら、今度一緒に行こうぜ」
仕事を終えて帰ってきたモモに、俺は遊園地のチケットを差し出す。
「え?あっ、ここってこないだ私が行きたいって言ってた・・・・」
驚いた様子のモモに、オレは苦笑しながら、
「礼ならオレじゃなくてカノに言ってくれ。・・・最近お前疲れてるっぽいからさ、たまには仕事を忘れて遊ぶのも悪くねえんじゃねえか?」
「じゃ、オレ寝るわ」とモモに言って、オレは自室に戻るために階段を登っていく。
「・・・・ありがと、お兄ちゃん」
そのモモの呟きは、オレの足音に紛れて散っていった。
*
そして、遊園地に出かける当日。
バス停に向かって歩きながら、オレはモモが着ている服をまじまじと見つめる。
「お前・・・相変わらず変な服だなあ」
今日のモモの服装は大きく「真珠」と書かれた水色のパーカーの下にデフォルメされた豚の絵が描かれた白いシャツという組み合わせ。
なんなんだ豚に真珠って。
何か深い意味でも・・・いやないかこいつバカだし。
と、オレにファッションセンスについて言われたのが頭に来たのか、今度はモモがオレの服装を見て反論してくる。
「はあ!?そう言うお兄ちゃんこそいつもと同じジャージじゃん、服それしか持ってないの?」
「んなわけあるか」
それにこれと同じ赤ジャージは他に4つあるからな、全部一緒だと思って貰っちゃ困る。
そうこうしているうちにバス停に到着。
近くのベンチに座ってバスを待ちながら、オレは空を見上げる。
雲一つない晴天、まさに行楽日和といったところか。
(・・・・そういえば、モモと2人きりで出かけるなんていつぶりだろうな)
楽しみだな、という期待と、またオレ吐くんじゃねえかという不安の中で。
オレとモモの遊園地デートは、こうして幕を開けたのだった。
*続く*
こんばんは!
という訳でシンモモ小説ですね。
遊園地デートです。
前編である今回はあんまり2人がイチャイチャするシーンはありませんでしたけど、後編では存分にイチャイチャする予定ですのでお楽しみに。
ていうかカゲプロ関連の小説ってすげえ久しぶり。
では、次回お楽しみに!