彼の一貫した姿勢は、「何が善いことか」という、いわば企業の絶対的存在価値の追求である。企業とはどのようにあるべきか、それを製品にどのように具体化して反映させるのかを意識し、開発に携わる技術者と徹底して議論を繰り返していた。口癖のように言っていたのは、「お客さんのために」「世の中のために」であって、ひたすら経営効率と利益追求以外に語る言葉を持たない経営者とは一線を画していたのである。
本田宗一郎氏について
日本経済新聞1/27付け朝刊 文:一橋大学教授 野中郁次郎
昨今のライブドア事件や耐震強度偽装問題など、利益追求のためには法に触れることまでしてしまう自己中心的経営者であったのではないでしょうか。経営者にあってはならない正常感覚を失っていたのかもしれません。企業において利益をあげることはもちろん重要なことですが、それが最大の目的になってはその企業の価値は失われているように感じます。起業当初の理念や信念をトップは持ち続け、社員へ伝播していかなければならない。そうでないと、社員は一番わかりやすい利益追求型の会社であるとの理解が蔓延し改善しにくい問題になるのではないでしょうか。